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第5章 神の息吹。
海神。
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「おぅ、わざわざ来てもらって悪かったな」
「いいえ……」
女神様が断れなかったものを、たかが人間の私が断れるはずもなく。
とぼとぼと指定された港町トルマリンへとやって来た。
海辺に建てられた小さな祠へ行くと、日に焼けた大男が待っていた。
大男といっても、そこはやはり神様なわけで。
雲をつくような大男って、本来はこういう感じなんだな……。
山のように大きな海神様を通して見上げて、私はなるほどと頷いた。
「すみません。話しにくいので、少し小さくなってもらえませんか?」
「ああ、そうか」
一瞬で海神様は人間サイズになってくれた。
まぁ、それでも、まだ大きいけどな。
「これで、いいか?」
「はい」
しかし、海神様ってなんというか、サーファーっぽい?
日焼けしていて、ちょっとチャラそうというか……。
「こっちから行けばよかったんだろうけど、俺は内陸には行けないんでな」
そう言って海神様は笑った。
確かに、海のない所には来れないだろう。
だが、海に面した町はどこでも海神様を信仰している。
私に馴染みがある場所がいいだろうという事で、トルマリンを指定してくれたらしい。
うーん、チャビの〈回復〉で、真新しくなっているな……。
ぴかぴかの建物が立ち並ぶトルマリンの町並みに私はため息をついた。
「早速で悪いんだが、クラーケンのやつを許してやってくれないか?」
「……は?」
「幸運の女神に結界を解いてくれって言ったら、倒したのはつかさだから許可がないと無理だって言われてな」
「……」
こっちに押しつけやがったな、アホ女神!
「あいつも反省しているし、許してやってくれないか?」
海神様は、上目遣いで両手を合わせた。
神様相手にアレだけど、大男の上目遣いってちょっと可愛いと思うのは私だけかな……。
って、違う!
「でも、町を襲おうとしていましたし……」
百年前にもトルマリンを襲ったらしいし、反省していると言われてもな……。
「今回は、クラーケンの意思じゃなかったんだよ」
「?」
「これを見てくれ」
海神様は、小さな杭のような物を取り出した。
刻まれていたのは古代神語による呪いの言葉。
「《滅びを運べ》……?」
海神様は、ぱっと顔を輝かせた。
「お前、古代神語が分かるのか?」
「はい。少しだけですけど」
なら、話は早いと海神様は嬉しそうに笑った。
「これが、クラーケンの体に突き刺さっていたんだ」
「!」
つまり、町を襲った時、クラーケンは何かに操られていた……?
「いいえ……」
女神様が断れなかったものを、たかが人間の私が断れるはずもなく。
とぼとぼと指定された港町トルマリンへとやって来た。
海辺に建てられた小さな祠へ行くと、日に焼けた大男が待っていた。
大男といっても、そこはやはり神様なわけで。
雲をつくような大男って、本来はこういう感じなんだな……。
山のように大きな海神様を通して見上げて、私はなるほどと頷いた。
「すみません。話しにくいので、少し小さくなってもらえませんか?」
「ああ、そうか」
一瞬で海神様は人間サイズになってくれた。
まぁ、それでも、まだ大きいけどな。
「これで、いいか?」
「はい」
しかし、海神様ってなんというか、サーファーっぽい?
日焼けしていて、ちょっとチャラそうというか……。
「こっちから行けばよかったんだろうけど、俺は内陸には行けないんでな」
そう言って海神様は笑った。
確かに、海のない所には来れないだろう。
だが、海に面した町はどこでも海神様を信仰している。
私に馴染みがある場所がいいだろうという事で、トルマリンを指定してくれたらしい。
うーん、チャビの〈回復〉で、真新しくなっているな……。
ぴかぴかの建物が立ち並ぶトルマリンの町並みに私はため息をついた。
「早速で悪いんだが、クラーケンのやつを許してやってくれないか?」
「……は?」
「幸運の女神に結界を解いてくれって言ったら、倒したのはつかさだから許可がないと無理だって言われてな」
「……」
こっちに押しつけやがったな、アホ女神!
「あいつも反省しているし、許してやってくれないか?」
海神様は、上目遣いで両手を合わせた。
神様相手にアレだけど、大男の上目遣いってちょっと可愛いと思うのは私だけかな……。
って、違う!
「でも、町を襲おうとしていましたし……」
百年前にもトルマリンを襲ったらしいし、反省していると言われてもな……。
「今回は、クラーケンの意思じゃなかったんだよ」
「?」
「これを見てくれ」
海神様は、小さな杭のような物を取り出した。
刻まれていたのは古代神語による呪いの言葉。
「《滅びを運べ》……?」
海神様は、ぱっと顔を輝かせた。
「お前、古代神語が分かるのか?」
「はい。少しだけですけど」
なら、話は早いと海神様は嬉しそうに笑った。
「これが、クラーケンの体に突き刺さっていたんだ」
「!」
つまり、町を襲った時、クラーケンは何かに操られていた……?
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