95 / 212
第3章 黒のキャラバン。
誓い。
しおりを挟む
精霊樹の根元に、大きな真珠が大事そうに置かれていた。
「すまない。間違えて、やつらから奪ってしまった」
エルフ達の長だという人が、謝ってくれた。
「いえ、むしろ良かったと思います。穢れがあったら、神様にはなれなかったらしいですし」
自分達の信仰している神様ではなくても、エルフ達は大事に扱ってくれていたようだし、精霊樹の根元で御神体は安心しているように思えた。
「こちらこそ、うちのドラゴンが……」
「いや、元々やつらに奪われたのは三ヶ月も前なのだ」
奪った相手は、みうの「とおみ」の力ですぐに突き止めた。
しかし、移動し続けるキャラバンを追うためにまだ成人していないみうも追っ手として参加したのだが、その途中でみう自身が捕まってしまった。
エルフの長はそう言った。
なるほど。
そして、「とおみ」の力を知った魔導の塔の連中が、黒のキャラバンからみうを買ったという事か。
「みうの事でも、あなた達には大変世話になった」
「あれは、こっちも魔導の塔ともめていたというか……」
魔導の塔をぶっ潰さなければ、猫達に何をされていたか分からない。
まぁ、そうなったらそうなったで、うちの魔王様が世界を滅ぼしていただけの話か……。
「あと、木を倒してしまってすみませんでした」
「非常事態だったのだから仕方がない」
それに、そろそろ手を入れなければいけない時期だった、と本当かどうかは分からないけれどそう言ってくれた。
エルフの長は、両膝をつき片手を額に当てた。
「え、あの?」
「これは、我らエルフが大事な誓いをたてる時に行う仕草だ」
「はぁ……」
「今後、何があろうとも、我らエルフはあなたや猫達の味方であり、友である」
「あ、ありがとうございます」
私も慌ててぺこりと頭を下げた。
「つかさ!」
そこへ、みうが駆け寄ってきた。
「とう様、話は終わった? つかさ、連れていっていい?」
とう様……?
みう、長の娘だったの?
「ああ、大丈夫だ」
立ち上がり、長はみうを見て柔らかく笑った。
そして、私にもう一度礼を言った。
今度は、父親として。
「娘を救ってくれてありがとう」
「……はい」
「つかさ、今日、泊まっていく?」
きらきらした目で、みうが私を見た。
「明日の朝、虹雲の卵が孵るんだよ!」
数百年に一度の出来事なので、みうもまだ見た事はないらしい。
朝もやの中、虹色に輝きながら雲が空に昇っていく様は大層美しい光景なのだそうだ。
見たい、けれど。
「ごめん、御神体を届けなきゃ」
お稲荷さんも待っているだろうし。
「えー。皆にも、つかさや猫達を会わせたかったのに」
ふて腐れたように、みうが言う。
魔導の塔で会った時より、ずっと表情が豊かになった。
年相応……、いや、エルフだから、生きている年数はみうの方が私より上だったが。
ただし、エルフ年齢でいえば、まだまだ子供だという事だった。
そんなみうの子供らしい仕草に、つい笑ってしまう。
「また、来るよ」
まずは、御神体を届けなければ。
一つだけ問題があるとすれば。
私が触ったら、穢れたりしないかという事だ……。
「すまない。間違えて、やつらから奪ってしまった」
エルフ達の長だという人が、謝ってくれた。
「いえ、むしろ良かったと思います。穢れがあったら、神様にはなれなかったらしいですし」
自分達の信仰している神様ではなくても、エルフ達は大事に扱ってくれていたようだし、精霊樹の根元で御神体は安心しているように思えた。
「こちらこそ、うちのドラゴンが……」
「いや、元々やつらに奪われたのは三ヶ月も前なのだ」
奪った相手は、みうの「とおみ」の力ですぐに突き止めた。
しかし、移動し続けるキャラバンを追うためにまだ成人していないみうも追っ手として参加したのだが、その途中でみう自身が捕まってしまった。
エルフの長はそう言った。
なるほど。
そして、「とおみ」の力を知った魔導の塔の連中が、黒のキャラバンからみうを買ったという事か。
「みうの事でも、あなた達には大変世話になった」
「あれは、こっちも魔導の塔ともめていたというか……」
魔導の塔をぶっ潰さなければ、猫達に何をされていたか分からない。
まぁ、そうなったらそうなったで、うちの魔王様が世界を滅ぼしていただけの話か……。
「あと、木を倒してしまってすみませんでした」
「非常事態だったのだから仕方がない」
それに、そろそろ手を入れなければいけない時期だった、と本当かどうかは分からないけれどそう言ってくれた。
エルフの長は、両膝をつき片手を額に当てた。
「え、あの?」
「これは、我らエルフが大事な誓いをたてる時に行う仕草だ」
「はぁ……」
「今後、何があろうとも、我らエルフはあなたや猫達の味方であり、友である」
「あ、ありがとうございます」
私も慌ててぺこりと頭を下げた。
「つかさ!」
そこへ、みうが駆け寄ってきた。
「とう様、話は終わった? つかさ、連れていっていい?」
とう様……?
みう、長の娘だったの?
「ああ、大丈夫だ」
立ち上がり、長はみうを見て柔らかく笑った。
そして、私にもう一度礼を言った。
今度は、父親として。
「娘を救ってくれてありがとう」
「……はい」
「つかさ、今日、泊まっていく?」
きらきらした目で、みうが私を見た。
「明日の朝、虹雲の卵が孵るんだよ!」
数百年に一度の出来事なので、みうもまだ見た事はないらしい。
朝もやの中、虹色に輝きながら雲が空に昇っていく様は大層美しい光景なのだそうだ。
見たい、けれど。
「ごめん、御神体を届けなきゃ」
お稲荷さんも待っているだろうし。
「えー。皆にも、つかさや猫達を会わせたかったのに」
ふて腐れたように、みうが言う。
魔導の塔で会った時より、ずっと表情が豊かになった。
年相応……、いや、エルフだから、生きている年数はみうの方が私より上だったが。
ただし、エルフ年齢でいえば、まだまだ子供だという事だった。
そんなみうの子供らしい仕草に、つい笑ってしまう。
「また、来るよ」
まずは、御神体を届けなければ。
一つだけ問題があるとすれば。
私が触ったら、穢れたりしないかという事だ……。
160
お気に入りに追加
390
あなたにおすすめの小説
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる