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第3章 黒のキャラバン。

宝珠。

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「ううぅ……」

 くぅが短くうなると、ドラゴンはあからさまにビクッとした。

 城塞都市オニキスでりゅうたろうとおこんにやられたドラゴンは「猫は自分より上」と認識しているのだ。
 特に、ほかの猫が逆らわないくぅの事は一番怖いと思っているようだった。

 ドラゴンさえうなり声一つで怯えさせるって、もはや完全に魔王だよな……。

 ちなみに私の事は、ご飯をくれる人=好き、というのがドラゴンの認識らしい。

 ドラゴンはちゃっかりお宝をゲットすると、私の後ろに移動してきた。

 隠れてないからな、それ……。

 ドラゴンのお土産は、黒のキャラバンから奪ったものだったらしい。
 どうりで、ギルドに確認しても「ドラゴンに襲われた」という情報が出てこないわけだ。

 まぁ、いい。
 今は、それよりも。

「御神体は」

「卵は」

「「どこ!?」」

 私とみうの声が重なった。

 みう達も、黒のキャラバンに何か盗まれたのか。
 よく見れば、フードの集団は皆エルフのようだった。

「さっさと吐け!」

 くぅが、ゆっくりと一歩踏み出した。
 足元から、炎が立ち上っている。
 くわっと牙をむき出しにして、黒のキャラバンの連中を威嚇する。

「御神体は、ありません!」

 怯えた男達は、あっさりと白状した。

「それは知ってる! どこに売った!?」

「売ってません!」

「そこのエルフに奪われました!」

「……は?」

 私がエルフ達を振り返ると、彼らはぎくりとしたようだった。

「ま、間違えたんだ!」

 エルフの一人が、慌てて叫んだ。
 視線はくぅに向いたままだ。

「私達の奪われた宝珠を取り返そうとしていたんだけど、箱に入ったままだったから、間違えたみたいなの」

 みうが必死な様子で言った。

「大丈夫。精霊樹の根元に、大事に保管してあるから」

「精霊樹の根元……」
 
 そこなら、きっと穢れはないだろう。

 よかった、これで神様になれる。
 お稲荷さんの事を思い、私はほっとした。

「私達の宝珠はどこ?」

「それなら、ドラゴンに奪われたよ!」

 ん?

 今度は、エルフ達が私の方を見た。

「みう、宝珠って?」

「虹雲の卵なの。数百年に一度、孵化して私達エルフの里である翡翠の森を守護してくれるの」

 んん?

 虹……。

 卵……。

 ドラゴン……。

 まさか。

「もしかして、これ……?」

 無限収納から、虹色の玉を取り出して見せた。

「なんで、つかさが……!?」

「ドラゴンが、お土産にくれた」

「……え?」

 みうの顔に?が浮かんでいる。

「みう、ダメだ!」

「もう日が落ちる!」

 エルフ達が悲鳴のように叫んだ。

「どうしたの?」

「今日の日没まで精霊樹の泉に卵を入れないと、孵化するまでにまた数百年かかるの」

 みうは、私の顔を見上げた。

「つかさ、お願い」

「了解」

 と、その前に黒のキャラバンをどうにかしないと。

「おこん、〈創成魔法〉。大きなペットケージ!」

 がしゃんっ、という音と共に、黒のキャラバンは巨大なペットケージの中に閉じ込められた。

 私の後ろで、ドラゴンがぷるぷると震えている。
 自分が閉じ込められた時の事を思い出したらしい。

「くぅ、〈土魔法〉!」

 ペットゲージの周囲を、くぅの〈土魔法〉で隆起させた地面で囲った。
 これで逃げられないだろう。

「キング、〈空間転移〉!」

 目的地は。

「エルフの里、翡翠の森!」







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