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第3章 黒のキャラバン。
蛇の道は蛇。
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ギルドで、盗賊がらみの資料を貸し出してもらった。
事務処理スキル、発動!
……。
…………。
「ふむ、なるほど」
やはり、御神体が盗まれたという二ヶ月前くらいから、盗賊に襲われる事が増えているようだ。
キャラバン以外も襲われているが、比率でいえばキャラバンが圧倒的に多い。
共通点は、真珠国と取り引きがあるという事くらいだが。
「……あまり、参考にならないな」
真珠国の特産品はよそでは手に入らないものが多いので、立ち寄るキャラバンは多いのだ。
これは、詰んだか……?
せりがキャットハウスから出てきた。
「キャラバンさん、来た?」
せりは尻尾をぴんと上げ、ゆったりと歩き出した。
「ちょっと待って!」
慌てて資料を片付け、せりのあとを追った。
真珠国の南門から、見覚えのあるキャラバンが入ってくるのが見えた。
「ん?」
サナ達の姿が見当たらない。
護衛の数は足りているようだから、馴染みの冒険者が復帰したのかもしれない。
「隊長さん!」
「つかささん?」
声をかけると、隊長さんは驚いたようだった。
「真珠国にいらしたのですか?」
「ちょっと、依頼がらみで……」
ついでに、食い倒れるつもりだったのは秘密にしておこう。
「すみませんが、大事な話があるので、時間がある時にお社まで来てほしいんです」
「……分かりました」
取り引きが終わったら顔を出す、と約束してくれた。
二日後。
「遅くなりまして……」
これでも細かい作業は息子達に任せたのですが、と申し訳なさそうに隊長さんはお社まで来てくれた。
「こちら、神使のお稲荷さんです」
「よろしくお願いします」
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
お稲荷さんに最初は驚いたようだったが、すぐに平静をよそおった。
隊長さん、さすがです。
「それで、私に何のお話でしょう?」
「実は……」
真珠国の御神体が盗まれた事、黒のキャラバンの事などを隊長さんに話した。
「それは、大変な事で……」
隊長さんは気の毒そうな表情を浮かべて、お稲荷さんを見た。
「隊長さんに聞きたいのは、黒のキャラバンについてです」
「……何故、私に?」
「黒のキャラバンは正体不明のはずなのに、盗賊は御神体が盗まれた事を知っていました」
おそらく、盗賊には独自の情報網があるのだ。
しかも盗賊同士で情報を共有している。
ならば。
「キャラバンの事は、キャラバンに聞くのが早い」
そう言うと、隊長さんはなるほどと頷いた。
「つかささんの言う通り、私達キャラバンにも、独自の情報網がございます」
そして、と隊長さんは言った。
「黒のキャラバンについても、いくつか情報が入ってきています」
事務処理スキル、発動!
……。
…………。
「ふむ、なるほど」
やはり、御神体が盗まれたという二ヶ月前くらいから、盗賊に襲われる事が増えているようだ。
キャラバン以外も襲われているが、比率でいえばキャラバンが圧倒的に多い。
共通点は、真珠国と取り引きがあるという事くらいだが。
「……あまり、参考にならないな」
真珠国の特産品はよそでは手に入らないものが多いので、立ち寄るキャラバンは多いのだ。
これは、詰んだか……?
せりがキャットハウスから出てきた。
「キャラバンさん、来た?」
せりは尻尾をぴんと上げ、ゆったりと歩き出した。
「ちょっと待って!」
慌てて資料を片付け、せりのあとを追った。
真珠国の南門から、見覚えのあるキャラバンが入ってくるのが見えた。
「ん?」
サナ達の姿が見当たらない。
護衛の数は足りているようだから、馴染みの冒険者が復帰したのかもしれない。
「隊長さん!」
「つかささん?」
声をかけると、隊長さんは驚いたようだった。
「真珠国にいらしたのですか?」
「ちょっと、依頼がらみで……」
ついでに、食い倒れるつもりだったのは秘密にしておこう。
「すみませんが、大事な話があるので、時間がある時にお社まで来てほしいんです」
「……分かりました」
取り引きが終わったら顔を出す、と約束してくれた。
二日後。
「遅くなりまして……」
これでも細かい作業は息子達に任せたのですが、と申し訳なさそうに隊長さんはお社まで来てくれた。
「こちら、神使のお稲荷さんです」
「よろしくお願いします」
「……こちらこそ、よろしくお願いします」
お稲荷さんに最初は驚いたようだったが、すぐに平静をよそおった。
隊長さん、さすがです。
「それで、私に何のお話でしょう?」
「実は……」
真珠国の御神体が盗まれた事、黒のキャラバンの事などを隊長さんに話した。
「それは、大変な事で……」
隊長さんは気の毒そうな表情を浮かべて、お稲荷さんを見た。
「隊長さんに聞きたいのは、黒のキャラバンについてです」
「……何故、私に?」
「黒のキャラバンは正体不明のはずなのに、盗賊は御神体が盗まれた事を知っていました」
おそらく、盗賊には独自の情報網があるのだ。
しかも盗賊同士で情報を共有している。
ならば。
「キャラバンの事は、キャラバンに聞くのが早い」
そう言うと、隊長さんはなるほどと頷いた。
「つかささんの言う通り、私達キャラバンにも、独自の情報網がございます」
そして、と隊長さんは言った。
「黒のキャラバンについても、いくつか情報が入ってきています」
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