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第2章 魔導の塔。
猫の本能。
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うん、楽勝。
ミントに似た香りのする薬草を、小型ナイフで切り取る。
一応、依頼品なので丁寧に。
向こうでは、古いけど庭付きの一軒家に住んでいたので、夏になると草刈りが大変だった。
室内飼いとはいえ、猫がいるので除草剤は使いたくなかったし。
やっぱり草刈り鎌の方がよかったかな……。
「こんなもんかな」
かごいっぱいの薬草が取れたので、依頼は達成できたと思う。
よし、お弁当にしよう。
「みんなも出たい?」
子供でも問題なく歩ける森だと言われたので、肩乗りサイズのりゅうたろうだけキャットハウスから出していたのだ。
刃物使っている時は危ないしな。
よつば達もふもふが勢揃いしているのを見て、思わず笑顔になってしまった。
みんな、無事でよかった。
「いい? 近くにいるんだよ」
猫に言ってもムダな事は分かっているが、それでも注意してしまう。
一番心配だったのは〈空間転移〉スキルを持っているキングだったが、前回よほど怖い目にあったのか、私の近くでうろうろしているだけだ。
ビニールシートの上にふかふかのラグを敷き、お弁当の用意をする。
美味しいパン屋を見つけたので、レッドバードのゆで卵と、ワイルドボアのハムを挟んだサンドイッチにした。
テントを出してもよかったが、猫達もずっとキャットハウスの中なので、外に出してやりたかったのだ。
チャビ達は草の匂いを嗅いだり、近くの木で爪を研いだりしている。
おこん、登るのはいいけど、降りれるんだろうな?
「なんか、やっとゆっくり出来たな……」
ん?
視界の隅に、何かが動くのが見えた。
「なんだ、あれ?」
緑色の、小さくて丸いものがころころと転がって草むらに消えた。
鑑定スキルを使って見てみると、マーウという小型の魔物だった。
……弱いな。
私でも倒せそうだが、別に害はなさそうだし放置でいいか。
あ、まずい。
マーウの動きに、猫達が興味津々だ。
早くキャットハウスに戻さないと……。
って、遅かった!
「りゅうたろう、戻って! よつば、それはダメだ! それは!!」
猫達はマーウを追いかけて草むらに駆けていってしまった。
「福助、落ち着いて! ああ、チャビまで!?」
「せり……は、いいよ、走っておいで。おこん、どこ行くんだ、そっちにはいないだろ!」
あ、やばい。
キングとくぅは、本気の狩りモードだ……。
「遅かったですね。何かありましたか?」
薬草採取の簡単な依頼だったはずなのに、日が暮れてから帰ってきた私達に、ギルドのお姉さんは首をかしげた。
ええ、まぁ、ちょっとね……。
「これ、薬草」
「はい、確かに」
依頼書にサインをし、銅貨二枚を受け取った。
「あと、買い取りもお願いできます?」
「はい、どうぞ」
無限収納から出したマーウに、お姉さんは「あら」という表情になった。
「マーウなんて珍しいですね。しかも、こんなにたくさん」
「え?」
でも、これ弱いよ?
「弱すぎるんですよ」
……どういうこと?
「弱いので、人間の気配がするとすぐに逃げたり隠れたりするんです。おまけに、小さくてすばしっこいから、なかなか捕まらなくて……」
そこまで言って、お姉さんの目が肩に乗っているりゅうたろうを見た。
「そうか、猫……」
「うん、猫……」
ミントに似た香りのする薬草を、小型ナイフで切り取る。
一応、依頼品なので丁寧に。
向こうでは、古いけど庭付きの一軒家に住んでいたので、夏になると草刈りが大変だった。
室内飼いとはいえ、猫がいるので除草剤は使いたくなかったし。
やっぱり草刈り鎌の方がよかったかな……。
「こんなもんかな」
かごいっぱいの薬草が取れたので、依頼は達成できたと思う。
よし、お弁当にしよう。
「みんなも出たい?」
子供でも問題なく歩ける森だと言われたので、肩乗りサイズのりゅうたろうだけキャットハウスから出していたのだ。
刃物使っている時は危ないしな。
よつば達もふもふが勢揃いしているのを見て、思わず笑顔になってしまった。
みんな、無事でよかった。
「いい? 近くにいるんだよ」
猫に言ってもムダな事は分かっているが、それでも注意してしまう。
一番心配だったのは〈空間転移〉スキルを持っているキングだったが、前回よほど怖い目にあったのか、私の近くでうろうろしているだけだ。
ビニールシートの上にふかふかのラグを敷き、お弁当の用意をする。
美味しいパン屋を見つけたので、レッドバードのゆで卵と、ワイルドボアのハムを挟んだサンドイッチにした。
テントを出してもよかったが、猫達もずっとキャットハウスの中なので、外に出してやりたかったのだ。
チャビ達は草の匂いを嗅いだり、近くの木で爪を研いだりしている。
おこん、登るのはいいけど、降りれるんだろうな?
「なんか、やっとゆっくり出来たな……」
ん?
視界の隅に、何かが動くのが見えた。
「なんだ、あれ?」
緑色の、小さくて丸いものがころころと転がって草むらに消えた。
鑑定スキルを使って見てみると、マーウという小型の魔物だった。
……弱いな。
私でも倒せそうだが、別に害はなさそうだし放置でいいか。
あ、まずい。
マーウの動きに、猫達が興味津々だ。
早くキャットハウスに戻さないと……。
って、遅かった!
「りゅうたろう、戻って! よつば、それはダメだ! それは!!」
猫達はマーウを追いかけて草むらに駆けていってしまった。
「福助、落ち着いて! ああ、チャビまで!?」
「せり……は、いいよ、走っておいで。おこん、どこ行くんだ、そっちにはいないだろ!」
あ、やばい。
キングとくぅは、本気の狩りモードだ……。
「遅かったですね。何かありましたか?」
薬草採取の簡単な依頼だったはずなのに、日が暮れてから帰ってきた私達に、ギルドのお姉さんは首をかしげた。
ええ、まぁ、ちょっとね……。
「これ、薬草」
「はい、確かに」
依頼書にサインをし、銅貨二枚を受け取った。
「あと、買い取りもお願いできます?」
「はい、どうぞ」
無限収納から出したマーウに、お姉さんは「あら」という表情になった。
「マーウなんて珍しいですね。しかも、こんなにたくさん」
「え?」
でも、これ弱いよ?
「弱すぎるんですよ」
……どういうこと?
「弱いので、人間の気配がするとすぐに逃げたり隠れたりするんです。おまけに、小さくてすばしっこいから、なかなか捕まらなくて……」
そこまで言って、お姉さんの目が肩に乗っているりゅうたろうを見た。
「そうか、猫……」
「うん、猫……」
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