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666.ネクストステージ
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『……というわけで、新生水希は、まだ自分で自分を掴みかねています。誰かにこうすれば道が開けると、答えを教えてもらえたらいいのに。幸福につながる正しい道をね。でも、人に相談することに慣れていない私は、どうしたらいいのか戸惑ってしまいます。
雄大君なら、私の道について何か分かるでしょうか。そう遠くない内に動き出さなくては。でも、どうやって。
そんなことをあなたと話せたらと、ぼんやり夢見ています。では、唐突なお手紙、失礼いたしました。
吉野 水希 』
雄大君は言った。
「久し振りっすねえ、水希さん」
「うん。一か月ぶりだね」
私は答えた。凸凹コンビ再集結、と心で呟く。雄大君と待ち合わせた駅近のマックは、かなり混んでいたが、できるだけ静かに話せそうな隅っこの席を選んで、コーヒー片手に私達は陣取っていた。私は訊ねた。
「ところで、何? 私を呼び出して。何か話があるの? 」
「そうっすね、手紙、読みました」
「ああ、ほんと? ありがとう。雄大君は新しい職に就いたの? 」
「長時間ではないけれど、バイトならやっていますよ。それと貯金で暮らしています。水希さんは……」
「無職です」
「そうでしょうね、あの手紙の感じでは」
「愚痴るけれど、本当に、本っ当に、マジでどうしたらいいのか分からないの。グダグダ言っていないで仕事しろとか、世間の人から言われそうだけど、できたら自分が生かせる仕事に就きたくて」
「どんな仕事なら、生かせると思うんですか? 」
「それが全く分からない」
「そうっすか。実は、今日は水希さんにプレゼントがあります」
「え、プレゼント? 」
「アマゾンで買いました。これとこれです」
そう言って、雄大君は二つの小さな箱を、ポンポンと私の目の前に置いた。私はひとつずつ手に取り、中身を見てから言った。
「タロットカードと、オラクルカード? 」
「そうです。このカード達が、迷う水希さんの道標になってくれるかもしれません。使ってみてください。
―で。俺、バイトをしてみて思ったんですよね」
「ほう、何を? 」
「普通の、一般的な仕事は俺に向いていないです。水希さんと同じで、自分を生かせる仕事に就きたいじゃないですか」
「そこは共通意見なのね、私達って」
「まあ、別の言い方をすれば、プーの言い分ってやつですか。で、俺は、俺と水希さんの力で、何かできないかなって考えました」
「……私にはもう、力なんてない」
「力がなくとも、良く見えるようになるための手段、それがこのカード達です」
「……。私に占い師になれって勧めているの? 」
「占い師というよりは、カウンセラーに近いですね。今までの仕事では常に水希さんが、俺をリードしていました。能力的にその方が合っていたからですが、今度は俺がリードしたいんです」
「見えてきた。私にその補佐役をしろ、って言うのね」
「命令はしていません。あくまでも水希さん次第で、仕事の形態は変わると思ってもらいたい。でも、俺達が組めば、何か新しいことができる気がしませんか? 」
「サロン・インディゴは、もう跡形もなく消え失せているの。借家も手放したし、後始末もやったし。だからどこを拠点にするの? 」
「あの、俺、偉そうに語りましたけれど、実は明確なビジョンは、何も定まっていないんですよねえ」
「雄大君らしいや」
「だから、今日はとりあえず確認をしたくて。俺の話、乗ってみる気持ちはありますか? 」
「う~ん。う~ん。……雄大君、スピリチュアルの世界から、足を洗うとか言っていたのに」
「でも、俺自身はスピリチュアルとズブズブです。見えちゃう事実は否定できないなと、改めて思って」
「雄大君」
「はい? 」
「とりあえず、じっくり話し合おう。そうすれば形が定まるかもしれないから」
「いいっすね」
私と雄大君は見つめ合い、互いのゴーサインをじんじん感じ取ると、時を忘れて話し出した。初めて雄大君と出会った時のことを思い出す。あの原点に戻ったかのように、私はまた、胸が熱くなってくるのを感じる。
未来はこれからだ。その思いを再確認して、私は雄大君と話し続けた。
雄大君なら、私の道について何か分かるでしょうか。そう遠くない内に動き出さなくては。でも、どうやって。
そんなことをあなたと話せたらと、ぼんやり夢見ています。では、唐突なお手紙、失礼いたしました。
吉野 水希 』
雄大君は言った。
「久し振りっすねえ、水希さん」
「うん。一か月ぶりだね」
私は答えた。凸凹コンビ再集結、と心で呟く。雄大君と待ち合わせた駅近のマックは、かなり混んでいたが、できるだけ静かに話せそうな隅っこの席を選んで、コーヒー片手に私達は陣取っていた。私は訊ねた。
「ところで、何? 私を呼び出して。何か話があるの? 」
「そうっすね、手紙、読みました」
「ああ、ほんと? ありがとう。雄大君は新しい職に就いたの? 」
「長時間ではないけれど、バイトならやっていますよ。それと貯金で暮らしています。水希さんは……」
「無職です」
「そうでしょうね、あの手紙の感じでは」
「愚痴るけれど、本当に、本っ当に、マジでどうしたらいいのか分からないの。グダグダ言っていないで仕事しろとか、世間の人から言われそうだけど、できたら自分が生かせる仕事に就きたくて」
「どんな仕事なら、生かせると思うんですか? 」
「それが全く分からない」
「そうっすか。実は、今日は水希さんにプレゼントがあります」
「え、プレゼント? 」
「アマゾンで買いました。これとこれです」
そう言って、雄大君は二つの小さな箱を、ポンポンと私の目の前に置いた。私はひとつずつ手に取り、中身を見てから言った。
「タロットカードと、オラクルカード? 」
「そうです。このカード達が、迷う水希さんの道標になってくれるかもしれません。使ってみてください。
―で。俺、バイトをしてみて思ったんですよね」
「ほう、何を? 」
「普通の、一般的な仕事は俺に向いていないです。水希さんと同じで、自分を生かせる仕事に就きたいじゃないですか」
「そこは共通意見なのね、私達って」
「まあ、別の言い方をすれば、プーの言い分ってやつですか。で、俺は、俺と水希さんの力で、何かできないかなって考えました」
「……私にはもう、力なんてない」
「力がなくとも、良く見えるようになるための手段、それがこのカード達です」
「……。私に占い師になれって勧めているの? 」
「占い師というよりは、カウンセラーに近いですね。今までの仕事では常に水希さんが、俺をリードしていました。能力的にその方が合っていたからですが、今度は俺がリードしたいんです」
「見えてきた。私にその補佐役をしろ、って言うのね」
「命令はしていません。あくまでも水希さん次第で、仕事の形態は変わると思ってもらいたい。でも、俺達が組めば、何か新しいことができる気がしませんか? 」
「サロン・インディゴは、もう跡形もなく消え失せているの。借家も手放したし、後始末もやったし。だからどこを拠点にするの? 」
「あの、俺、偉そうに語りましたけれど、実は明確なビジョンは、何も定まっていないんですよねえ」
「雄大君らしいや」
「だから、今日はとりあえず確認をしたくて。俺の話、乗ってみる気持ちはありますか? 」
「う~ん。う~ん。……雄大君、スピリチュアルの世界から、足を洗うとか言っていたのに」
「でも、俺自身はスピリチュアルとズブズブです。見えちゃう事実は否定できないなと、改めて思って」
「雄大君」
「はい? 」
「とりあえず、じっくり話し合おう。そうすれば形が定まるかもしれないから」
「いいっすね」
私と雄大君は見つめ合い、互いのゴーサインをじんじん感じ取ると、時を忘れて話し出した。初めて雄大君と出会った時のことを思い出す。あの原点に戻ったかのように、私はまた、胸が熱くなってくるのを感じる。
未来はこれからだ。その思いを再確認して、私は雄大君と話し続けた。
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