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62.凡人とは
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私はそう言って溜め息をつく。この必要以上の情報が、全く入ってこない感じ。前の私と違って、実に正常な感覚だ。でも正直、見えていた方が、刺激的と言えば刺激的だった。今はどこかのっぺりとした日常感覚が、私を包んでいる。
(これが普通ということか。つまらないと言えば、つまらないとも言える)
(今までは誰かの相談に乗るのが私の仕事だったけれど、今は誰かに相談に乗ってほしい。私がどうしたらいいか、道を教えてほしいな。……普通のカウンセラーにはできないことだと思うけどね)
(以前の私が自由だったのか、それとも今の私が、リアルな自由なのか)
(ただこれだけは身に染みて分かる。本当に楽なの)
(スピ的な能力を持つことで、目に見えないものまで色々背負い込んでいたらしい。それが無くなって、この軽さが誕生したわけだ)
(しばらくは普通のことをしようか。スピリチュアルな相談所の経営なんかじゃなく、私が雇われる方、つまりアルバイトとか、なんか特別じゃない、凡々とした何かをしたい)
(普通に染まりたい)
よく考えてみると、血も繋がっていないのに、クレイジーな力を持つ私を、恐れずにここまで育て上げた私の父は、偉大な気がしてならない。私なんかより父の方が、数倍凄い気がする。
(日本女性の、ステレオタイプな人生といえば、結婚して子供を持ち、パートなんかをして家計を支え……)
(いや、違う。それは今の私が望む生き方じゃない。だって結婚したいと思えないんだもの、現状では)
(これまで、スピリチュアルに生きることで、いつも真っ当から外れた道を歩んできたし。結婚なんて、いつも遥か遠くの出来事のように感じていた)
(で、今の私にできることは何だ)
庭で伸び放題になっている雑草を眺めても、元気だということはよく分かるが、だから何だといった感じ。興味を感じる物や事が、微妙にズレ始めているようだ。
「水希」
背後から声を掛けられて振り返ると、父が腕を組んですくっと立ち、軽いノリでこう提案した。
「外に行かないか? ご飯を食べに行こう」
「何で。家で食べないの? 」
「ま、色々な意味でのお別れ会をしたくてな。だからちょっと贅沢をしよう。父さんの力量では、うまくて豪勢な料理なんて作れないという理由もある」
「私は別にいいよ」
「じゃ、近所にできた新しい店まで行くか」
「うん、行こう。楽しみ」
そう言って、私は簡単に身なりを整えてから、父と連れ立って家を出た。
☆☆☆
(これが普通ということか。つまらないと言えば、つまらないとも言える)
(今までは誰かの相談に乗るのが私の仕事だったけれど、今は誰かに相談に乗ってほしい。私がどうしたらいいか、道を教えてほしいな。……普通のカウンセラーにはできないことだと思うけどね)
(以前の私が自由だったのか、それとも今の私が、リアルな自由なのか)
(ただこれだけは身に染みて分かる。本当に楽なの)
(スピ的な能力を持つことで、目に見えないものまで色々背負い込んでいたらしい。それが無くなって、この軽さが誕生したわけだ)
(しばらくは普通のことをしようか。スピリチュアルな相談所の経営なんかじゃなく、私が雇われる方、つまりアルバイトとか、なんか特別じゃない、凡々とした何かをしたい)
(普通に染まりたい)
よく考えてみると、血も繋がっていないのに、クレイジーな力を持つ私を、恐れずにここまで育て上げた私の父は、偉大な気がしてならない。私なんかより父の方が、数倍凄い気がする。
(日本女性の、ステレオタイプな人生といえば、結婚して子供を持ち、パートなんかをして家計を支え……)
(いや、違う。それは今の私が望む生き方じゃない。だって結婚したいと思えないんだもの、現状では)
(これまで、スピリチュアルに生きることで、いつも真っ当から外れた道を歩んできたし。結婚なんて、いつも遥か遠くの出来事のように感じていた)
(で、今の私にできることは何だ)
庭で伸び放題になっている雑草を眺めても、元気だということはよく分かるが、だから何だといった感じ。興味を感じる物や事が、微妙にズレ始めているようだ。
「水希」
背後から声を掛けられて振り返ると、父が腕を組んですくっと立ち、軽いノリでこう提案した。
「外に行かないか? ご飯を食べに行こう」
「何で。家で食べないの? 」
「ま、色々な意味でのお別れ会をしたくてな。だからちょっと贅沢をしよう。父さんの力量では、うまくて豪勢な料理なんて作れないという理由もある」
「私は別にいいよ」
「じゃ、近所にできた新しい店まで行くか」
「うん、行こう。楽しみ」
そう言って、私は簡単に身なりを整えてから、父と連れ立って家を出た。
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