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桃青

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54.切断

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 私は気配に探りを入れつつ、下を向いてとぼとぼと歩いている少年に近づいていき、話し掛けた。
「ちょっと聞いていい? 」
 すると彼は驚いて顔を上げ、真っ直ぐに私を見つめる。自分が話し掛けられるなんて、考えたこともなかったみたいだ。私は言った。
「ここら辺にスーパー、ないかな。道に迷って困っているんだけれど」
 まず少年の瞳が気になった。人生を見失ったような、何かを諦めた目をしている。子供がする表情じゃない。何かが切れている。私はそう感じた。少年はおどおどと遠くを指さして言う。
「あっちに、あります」
「もう少し詳しく、行き方を教えてくれる? 」
「この道をずっと行って、そうしたら大きな通りに出るから、そこからスーパーが見える」
「そう、ありがとう。学校は楽しい? 」
 私の問い掛けに、彼は無反応だった。また停止だ。途切れているのだ。私はさらに訊ねた。
「そういう話は、あまりしたくない? 」
 彼は私の存在を無視するように、下を向く。そっけないというか、見方によっては感じが悪い。でもこの子は、ただ対応が分からずにいるだけだ。繋がりが切れて、さ迷っている。少し心の病の気配がする。私は気の流れに探りを入れてから、言った。
「余計なことを聞いてごめんね。さよなら」
「さよなら」
 そう言うと、彼は走って私達の元から去っていく。後ろから様子を見ていた雄大君が、近づいて来て言った。
「なんか、元気のない子供ですねえ。彼の持つオーラは、明るさの象徴である黄色なのに、全く生かされていなかったですよ」
「切断」
「え、何すか、水希さん」
「何となく分かってきた。色々なものが切れているんだ。人と人の繋がり、自然との繋がり、心の繋がり、とにかく繋がりが、ぶつぶつと切られている。いや、切れたと言うべきか」
「その上に君臨する、新しい世界って感じ? 白井の作りたもうた」
「雄大君、この街を歩き回ろう。それで、もしオーラの変化やなんかで、感じることがあったら教えて? 」
「分かりました。行きましょう」
 私達は道を横切って、木の生い茂る小道を歩き、その先にある広い遊歩道のような道を歩き出した。雑草から木々まで花が咲き乱れているのに、何故か歪んだ空気感が支配している。植物たちまで曲がってしまった感じ。雄大君が呟いた。
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