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桃青

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53.つくりもの

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「ね、ここまでで何か見ているかな、雄大君には」
「この街に入ってから、特に見えたものはないですね。逆にこれだけのことが起きているのに、何も見えない方が不自然です。凄くおかしい、と言って間違いないと思います」
「ハーモニーも正しい。これも凄くおかしいよね」
「あいつの得意技は作り物、じゃなかったですか? 」
「白井タクヤね。私もそれを少し考えている。彼の目的は、『新しい流れ』の創造。この街でその新しい流れが広がっているとしたら……」
「黒ってやつですかね。桂さん、ちょっとこの町内を散歩してきて構わないですか? 時間は、どれくらいかかるとは言えないのですが」
「ええ、構いません。というか、むしろお願いします。私は何時間でも待っていますので。もし何かあった時には、ケータイの方に連絡を入れてもらえば」
「分っかりました。水希さん、探りを入れに行きましょう」
「分かった」
 私と雄大君は頷き合うと、ひとまず町内会の建物を後にすることにした。

「都市部からそう遠くない所ですけれど、畑も点々とあって、のどかな空気ですね」
 雄大君は首を右に左にと動かしながら言った。私も言う。
「自然の気、街の気、人の気のバランスがいい場所だよね。変なものは特に感じない……。でも一番問題のある子供達に、話を聞きたいな」
「じゃ、まずは小学校を探してみますか。かなり長期的に影響を及ぼしているみたいですから、白井のせいだとしたら、あいつがここら辺に住んでいる可能性が高くないですか? 」
「自分の居場所を変えようとするのが、確かに一番自然な流れだと思う。雄大君の言う通りだと思うよ」
「奴の住まいを探し出して、吊るし上げましょうか。変なことを直ちにヤメロ! って」
「そんな手口が通用する相手じゃないことは、よく分かっているでしょ。あ、この道が通学路だって。看板が出ているわ」
「ならば、この先に小学校があるはず……。向こうから黄色い帽子をかぶった男の子が、一人で歩いてきますね」
「よし、あの子に話し掛けてみよう」
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