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桃青

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45.叫び

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「え? 」
「駅も見えてきたし、ここで別れることにするよ。デートはおしまい。服を選んでくれてありがとう」
「あ……、こんにゃくもありがとう」
「竹田君にごめんと言っておいて。それと、僕らが対立する限り、またあなたと会うことになると思うけれど」
「今日会った時は、正直殺されでもするのかと思ったわ」
「殺しはしない。まだあなたで試したいことがある。ただ今日話して決めたこともある。僕は追わずにはいられないんだ」
「あなたの、夢を? 」
「夢でなくて、理想さ。君と仲間になって、二人で目的に向かって進むのも悪くないと思っていたけれど、それは無理のようだ。たとえ僕の力が異常でも、神に近しいことに変わりはない。その力を試したい気持ちに、歯止めをかけるつもりもないさ」
「幸せになれないと思う」
「やってみなくては分からないだろう。吉野さんが諦めた道を、僕は進む。ではまた」
 そう言うと、白井は私から離れ、高架下の商店街の中へ吸い込まれていった。彼の姿がすっかり消えて、改めて一人になった時、とても不思議な気持ちになった。何かを彼に操られたのかと思ったが、そうではない。私と彼の上で起きた悲劇とも呼べるものが、何故か温かい共感を呼び覚ましていく。

 普通になりたい。

 そう私の心が叫んでいる。どんなに願っても叶わなかった願い。それ故に、すっかり忘れていた願い。私と白井が本当に求めているものはそれなのだと、私は……、理解しているつもりだった。

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