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桃青

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43.停止の意味

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「一方的にいいことをされるのは、気持ちが悪いから、僕もあなたに何かしたい。どうすればいい? 」
「えっと、じゃあおみやげを買ってもらおうかな」
「うん。いいよ。何がいいの? 」
「食べ物のおみやげを、あなたに選んでほしい」
「僕を試すのか。とりあえず、この商店街を出るまで歩いていって、途中で良い物を見つけたら、買う。それでいい? 」
「うん、いい」
 私は白井と並んで、無言で歩き出した。何となく分かってきた。この白井という男は、実はくそがつくほど真面目な人だ。常に人を操れるわけだから、下手に人を動かすと、回り回ってとばっちりが自分に返ってくる。だから慎重かつ真面目に世の中と接触しないと、痛い目に合うのは自分自身なのである。それが真面目な理由だと思うが、彼はいつも面倒な事態に人を巻き込んできた。何故だろう。その目的は何なのか? 私は言った。
「もう、やめた方がいいよ」
「……何を? 」
「人を操ってハーモニーを壊したり、場所の調和を壊したり、雰囲気を破壊したりすることを。誰も幸せにしていないじゃない」
「言っただろ」
「え」
「僕に罪悪感は存在しない。何故なら僕は、神だから」
「神、じゃないでしょ」
「今の時代の、この世界の、神のようなものだよ。さすがに世界を作りたもうた神だと、主張するつもりはないけど、僕でもね」
「なら、その神の意図は何」
「人の流れを止めることだな」
「どういうこと? 」
「つまるところ、世界の流れを止める」
「世界を、停止させるの? 」
「その波動の源になるつもり、僕は」
「じゃあ、どうやったら波動を止められるか調べるために、あんなことをしたのね? 」
「僕自身は破壊をしたつもりはない。ただ、止めてみたんだ。そこの店の玉こんにゃく、おみやげにするのはどう? 」
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