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39.デートなのか
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(全く、休みの日まで雄大君と会うなんて、どうかしている)
私はスマホの画面を操りながら思った。今日は休日、サロン・インディゴが外界の影響をシャット・アウトする日。もちろん私自身も仕事をシャット・アウトして、ずっと気になっていたディズニーの映画を見に行くつもりだった、……一人で。でもその話を雄大君にしたら、無邪気に、俺も見に行きたいですと言われて、ずるずると二人で行くことに話がまとまってしまったのだ。
(まずデートでもないのに、訳もなく化粧をちゃんとした自分が、よく分からない。それに雄大君も待ち合わせの時間に遅れているし。〇△駅。西口。午前十時。こんな明確な約束に遅れる理由は、一体何なの)
楽しいのか、もしくは憂鬱なのか、よく分からない感情を抱きつつ音楽を聴いていると、ポン、と肩を叩かれた。私は振り向きざまに文句を言おうとして、その直後に何も言えなくなった。
そこには雄大君の代わりに、白井タクヤが立っていたからだ。
彼は言った。
「竹田君は来ないよ」
私は驚きと恐れを何とか丸め込んで、言葉を発した。
「彼に何かしたの? 」
「彼はまず、家を出て道を陽気に歩いている所に、自動車に泥をひっかけられ、汚れたパーカーを着替えるために、不満たらたらで家まで戻り、気を取り直して駅まで着いたものの、電車は信号の不具合で三十分遅れ。時間も迫っているし、と、電車を諦めてタクシーに乗ろうとするも、タクシーは何故か出払っていて、彼はここに来ることはできない。来たとしても、その時吉野さんはすでに、僕とどこかへ出かけている」
「―全部、あなたが仕組んだの? 」
「仕組んだというか、それが彼の運命というべきか。だから僕とデートをしよう」
「私、あなたと話したいことが死ぬほどあったのよ」
「それはお互い様。なら、街を歩きながら話をしよう。それともディズニーの映画が見たい? 」
「そこまで分かっているのね。どうやってそんな魔法のような能力を発達させたの」
私達は一瞬信号待ちで足を止めたが、青になると、人並みに紛れながら、目の前に広がる公園に向かって足を進めつつ、話し合った。白井は言う。
「元々ズレているものに敏感な子供だった。それで子供の頃から、そのズレを操って遊んでいたものだ。まあ、一種のオモチャだな。僕が操るだけで、簡単に人が幸せになったり、不幸になったりする。それが普通に面白かったんだ。しかも僕の行いに気付く人は誰もいないときている。それが不思議で、興味深くもあって。吉野さんもそんな感じだった? 」
白井は真っ直ぐな目で私を見た。こうやって見ると、ただのありきたりな好青年にしか見えない。ステンカラーのコートに、ダークカラーのジーンズという格好も、ひたすら真面目さを強調してくる。私は言った。
私はスマホの画面を操りながら思った。今日は休日、サロン・インディゴが外界の影響をシャット・アウトする日。もちろん私自身も仕事をシャット・アウトして、ずっと気になっていたディズニーの映画を見に行くつもりだった、……一人で。でもその話を雄大君にしたら、無邪気に、俺も見に行きたいですと言われて、ずるずると二人で行くことに話がまとまってしまったのだ。
(まずデートでもないのに、訳もなく化粧をちゃんとした自分が、よく分からない。それに雄大君も待ち合わせの時間に遅れているし。〇△駅。西口。午前十時。こんな明確な約束に遅れる理由は、一体何なの)
楽しいのか、もしくは憂鬱なのか、よく分からない感情を抱きつつ音楽を聴いていると、ポン、と肩を叩かれた。私は振り向きざまに文句を言おうとして、その直後に何も言えなくなった。
そこには雄大君の代わりに、白井タクヤが立っていたからだ。
彼は言った。
「竹田君は来ないよ」
私は驚きと恐れを何とか丸め込んで、言葉を発した。
「彼に何かしたの? 」
「彼はまず、家を出て道を陽気に歩いている所に、自動車に泥をひっかけられ、汚れたパーカーを着替えるために、不満たらたらで家まで戻り、気を取り直して駅まで着いたものの、電車は信号の不具合で三十分遅れ。時間も迫っているし、と、電車を諦めてタクシーに乗ろうとするも、タクシーは何故か出払っていて、彼はここに来ることはできない。来たとしても、その時吉野さんはすでに、僕とどこかへ出かけている」
「―全部、あなたが仕組んだの? 」
「仕組んだというか、それが彼の運命というべきか。だから僕とデートをしよう」
「私、あなたと話したいことが死ぬほどあったのよ」
「それはお互い様。なら、街を歩きながら話をしよう。それともディズニーの映画が見たい? 」
「そこまで分かっているのね。どうやってそんな魔法のような能力を発達させたの」
私達は一瞬信号待ちで足を止めたが、青になると、人並みに紛れながら、目の前に広がる公園に向かって足を進めつつ、話し合った。白井は言う。
「元々ズレているものに敏感な子供だった。それで子供の頃から、そのズレを操って遊んでいたものだ。まあ、一種のオモチャだな。僕が操るだけで、簡単に人が幸せになったり、不幸になったりする。それが普通に面白かったんだ。しかも僕の行いに気付く人は誰もいないときている。それが不思議で、興味深くもあって。吉野さんもそんな感じだった? 」
白井は真っ直ぐな目で私を見た。こうやって見ると、ただのありきたりな好青年にしか見えない。ステンカラーのコートに、ダークカラーのジーンズという格好も、ひたすら真面目さを強調してくる。私は言った。
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