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桃青

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36.小さい勝ち

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「信じ難いですが、本当ならマジで嬉しいんですけど」
 雄大君が、私達のやりとりに割って入った。
「ならせっかくなんで、もう少し気の流れを良くしておいたらどうですか? 俺も明るさのある守りをつけておくので」
「そうね。そうする」
 私は深い呼吸をしてから、今ある流れを整え始めた。
(湧き水のように湧き出ている流れを、流れやすくして小川のようにする。決壊を作れば、ほら、自然に流れだすわ。今までせき止められていた分、開放感で流れが強くなっている。雄大君の呼び寄せた守護の存在がつけば、さらに安心感が生まれてくる)
「チャットが流れ出しましたね」
 小川さんの囁き声で画面に目をやると、言葉の流れができていた。ああ、もう大丈夫だと私は思う。今、気の流れに柔らかな光を感じるのは、雄大君が呼んだ守護の存在のおかげで、温かいオーラが強まり、その温もりが明るさを感じさせるためだろう。ふと彼と目が合い、私達は互いに頷き合った。
 ☆☆☆
「マジで助かりました。どこに相談したらいいのか分からなくて、正直解決するとは思っていなかったですが、何とかなりそうですね」
 笑みを浮かべてそういう小川さんに、私は答えた。
「ええ。何か問題が起きた時は、また相談していただければ、お手伝いします」
「それにしてもお二人とも何者なんですか? エスパー? それとも神仏に近しい存在? 」
 雄大君はハハと笑って言う。
「そんなわけないじゃないですか。ちょっと変わってはいるけれど、普通の人間です」
「毎日必死にロジックと向き合っているので、お二人のフワッとした生き方が、とても新鮮でした。勉強になったっていうか」
 そう話しながら入口まで見送ってくれた小川さんに、小さく手を振って別れの挨拶をすると、私達は外界へ出ていった。
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