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桃青

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35.バトル

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 その瞬間、真黒な画面に巨大な文字が現れた。
『手出しをするな』
 私達三人が、驚きと恐怖に駆られて固まり、呆然としていると、次々と文字が打ち込まれて、流れてゆく。
『邪魔だ』
『消え失せろ』
『マタアンタナンダロウ、ヨシノミズキ』
『マジで迷惑なんだよ』
 私は言った。
「小川さん、今から私が言う言葉を、チャットして打ち込んでいってくれませんか」
「あっ、はい」
「私はあなたの内的なアクセスを、完全に止めることができる。私がチャットルームの流れを操作するのではなく、あなた自身を止めれば、あなたは二度とこのサイトを操ることはできないだろう。これは警告だ」
 雄大君は思わず呟いた。
「白井タクヤ自身を止める? 」
 私は答えた。
「コンピューターが行うブロックのようなものを、気の流れの上で行うの。つまり、彼の型を通さないようにするのよ」
「でも水希さんにそれができるってことは、あいつも水希さんに対して同じことができるんでしょ? そうなのなら、水希さんはこのサイトに影響を与えることができなくなる……」
「そう。後は時間の問題。だから今必死にそれをやっているの」
 真っ黒な画面に、再び文字が流れ出した。何故かフォントは、さっきよりも小さくなっている。
『何故、邪魔をする? 』
『ある意味において、俺はお前を殺せる』
『おまえも俺を殺すつもりなのか……』
『世界で、俺とおまえは存在し、変容を促している……』
『でも神になるのは俺なんだ』
『必要なのは俺で、おまえはいらない』
『本当に目障りだな』
 私はその間も必死に流れを辿っていた。
(流れてくる根源がある。今は全てをそれに支配されているけれど、根源から生じている消えない気配、その形をブロックすれば……。扉を閉じて、鍵を掛ける、私しか知らない暗号を使って。パスワードは私のもの、彼に知られることはない。急いで! 全てを完成させて……)
『消してやる』
『おまえをいつか、消してやる……』
『待っていろ』
『おまえをブロッ』
 そこでピタッと書き込みが止まった。私は荒い息を吐きながら言った。
「鍵を掛けました」
 小川さんはキーボードから手を離し、私に問うた。
「それって、どういうことですか? 」
「彼が出入りしていた扉に、パスワードが必要な鍵を掛けて、閉じ込めたということです。つまり、彼はもう、このサイトにアクセスできません」
「そんなことができるんですか。本当に? 」
「ごめんなさい、言い方を間違えました。サイトに入ることは可能だと思います。ただ今までしてきたような、気の流れの操作はできないはず」
「それってつまり……。最大の問題だったブラックアウトは、無くなるってこと? 」
「そうです」
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