ABC

桃青

文字の大きさ
上 下
36 / 67

35.バトル

しおりを挟む
 その瞬間、真黒な画面に巨大な文字が現れた。
『手出しをするな』
 私達三人が、驚きと恐怖に駆られて固まり、呆然としていると、次々と文字が打ち込まれて、流れてゆく。
『邪魔だ』
『消え失せろ』
『マタアンタナンダロウ、ヨシノミズキ』
『マジで迷惑なんだよ』
 私は言った。
「小川さん、今から私が言う言葉を、チャットして打ち込んでいってくれませんか」
「あっ、はい」
「私はあなたの内的なアクセスを、完全に止めることができる。私がチャットルームの流れを操作するのではなく、あなた自身を止めれば、あなたは二度とこのサイトを操ることはできないだろう。これは警告だ」
 雄大君は思わず呟いた。
「白井タクヤ自身を止める? 」
 私は答えた。
「コンピューターが行うブロックのようなものを、気の流れの上で行うの。つまり、彼の型を通さないようにするのよ」
「でも水希さんにそれができるってことは、あいつも水希さんに対して同じことができるんでしょ? そうなのなら、水希さんはこのサイトに影響を与えることができなくなる……」
「そう。後は時間の問題。だから今必死にそれをやっているの」
 真っ黒な画面に、再び文字が流れ出した。何故かフォントは、さっきよりも小さくなっている。
『何故、邪魔をする? 』
『ある意味において、俺はお前を殺せる』
『おまえも俺を殺すつもりなのか……』
『世界で、俺とおまえは存在し、変容を促している……』
『でも神になるのは俺なんだ』
『必要なのは俺で、おまえはいらない』
『本当に目障りだな』
 私はその間も必死に流れを辿っていた。
(流れてくる根源がある。今は全てをそれに支配されているけれど、根源から生じている消えない気配、その形をブロックすれば……。扉を閉じて、鍵を掛ける、私しか知らない暗号を使って。パスワードは私のもの、彼に知られることはない。急いで! 全てを完成させて……)
『消してやる』
『おまえをいつか、消してやる……』
『待っていろ』
『おまえをブロッ』
 そこでピタッと書き込みが止まった。私は荒い息を吐きながら言った。
「鍵を掛けました」
 小川さんはキーボードから手を離し、私に問うた。
「それって、どういうことですか? 」
「彼が出入りしていた扉に、パスワードが必要な鍵を掛けて、閉じ込めたということです。つまり、彼はもう、このサイトにアクセスできません」
「そんなことができるんですか。本当に? 」
「ごめんなさい、言い方を間違えました。サイトに入ることは可能だと思います。ただ今までしてきたような、気の流れの操作はできないはず」
「それってつまり……。最大の問題だったブラックアウトは、無くなるってこと? 」
「そうです」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪女の代役ステラの逃走。〜逃げたいのに逃げられない!〜

朝比奈未涼
ファンタジー
リタ・ルードヴィング伯爵令嬢(18)の代役を務めるステラ(19)は契約満了の条件である、皇太子ロイ(20)との婚約式の夜、契約相手であるルードヴィング伯爵に裏切られ、命を狙われてしまう。助かる為に最終手段として用意していた〝時間を戻す魔法薬〟の試作品を飲んだステラ。しかし時間は戻らず、ステラは何故か12歳の姿になってしまう。 そんなステラを保護したのはリタと同じ学院に通い、リタと犬猿の仲でもある次期公爵ユリウス(18)だった。 命を狙われているステラは今すぐ帝国から逃げたいのだが、周りの人々に気に入られてしまい、逃げられない。 一方、ロイは婚約して以来どこか様子のおかしいリタを見て、自分が婚約したのは今目の前にいるリタではないと勘づく。 ユリウスもまたロイと同じように今のリタは自分の知っているリタではないと勘づき、2人は本物のリタ(ステラ)を探し始める。 逃げ出したいステラと、見つけ出したい、逃したくないユリウスとロイ。 悪女の代役ステラは無事に逃げ切り、生き延びることはできるのか? ***** 趣味全開好き勝手に書いております! ヤンデレ、執着、溺愛要素ありです! よろしくお願いします!

ドリンクカフェと僕

桃青
ライト文芸
主人公の友達が開く店、ドリンクcafe。そこをめぐり、様々な内省が渦巻き、主人公は最後に、ひとつの結論に辿り着きます。小説家を目指す主人公の小さな心の旅。

【短編小説】様々な人間模様

遠藤良二
現代文学
 僕には友人、親族がたくさんいる。友人は先輩、同級生、後輩がいる。親族は父の兄妹が八人、母の兄妹は七人いる。 僕の名前は|板垣譲二《いたがきじょうじ》、二十五歳。職業は実家が農家なのでその手伝いをしている。ミニトマト、米を作り農協で買い取って貰っている。彼女はいるが最近会っていない。会ってくれない、と言った方が的確か。なぜかは僕が後輩の女の子と仲良くしていたからだと思う、多分。嫉妬というやつだろう。てことは、彼女は僕のことがまだ好きでいてくれている証拠だ。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

処理中です...