ABC

桃青

文字の大きさ
上 下
34 / 67

33.覗く

しおりを挟む
「とりあえずそのサイトを見てみましょう」
「そうですね。こちらがそうです、ここがメイン画面。ざっと最新の情報、チャット、書き込みが分かるページですね。で、一番分かりやすいのは、過去のチャットかな。こうやってスクロールすると、書き込まれたチャットを、最初から最後まで一気に見ることができますが……。ここですよ」
 雄大君は不思議そうに言った。
「随分空白の部分がボコボコありますね」
 小川さんは深く頷いて言う。
「そうです。見ている人達の書き込みが、意味もなくバタッ、バタッ、と止まっている。それもかなり長い時間」
 私はチャットを読みながら言った。
「文章の内容的には盛り上がっているし、どうして急に」
「そう、不自然なんですよ。しばらくの間の後にまた盛り上がりますが、それもバタッと途切れる。交流して盛り上がりを楽しむサイトなのに、それができないなんて、誰かのせいなら営業妨害もいい所です」
 私はちょっと考えてから質問した。
「過去にもこういうことはあったのですか? 」
「ないです。きっぱりないと言えます。ここ最近に起きたことで、近頃サイトのアクセス数も減り始めているし、マジで困っています」
「雄大君、何か分かったことある? 」
「そうだな、オーラってか、空気感がどこか静かですよねえ」
「悪霊でも取りついているんですか? 」
 小川さんの発言に、雄大君は首を振って答えた。
「そういう霊的な影響は全くないです。それよりも、パワーバランスがぶっ壊れている感じ。水希さんだったら、何か分かるんじゃないですか? 」
「そうね。小川さん、リアルタイムで活発にチャットが書き込まれているページを、見せてもらえませんか? 」
「分かりました。この雑談ルームのページなら、いつも人がいますよ。こんな感じ」
 雄大君は面白そうに言った。
「おー、どんどん言葉が流れていく。見ていて楽しいっすね」
 小川さんは何故か嬉しそうに言う。
「少しだけ、ニコニコ動画をパクっています」
 私は文章を目で追いながら言った。
「今の所何も問題はなさそう……、あ」
「出た。これだ」
 小川さんの言葉で三人とも沈黙した。賑やかだった画面が突然黒一色になり、書き込みが止まったのだ。すぐに私は流れの一時停止を感じた。大袈裟に言えば、それはこのサイトで展開される、世界の停止みたいなものだ。私は言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

シシルナ島物語 隻眼の牙狼族の少年 ノルドの成長譚

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

【完結済】ラーレの初恋

こゆき
恋愛
元気なアラサーだった私は、大好きな中世ヨーロッパ風乙女ゲームの世界に転生していた! 死因のせいで顔に大きな火傷跡のような痣があるけど、推しが愛してくれるから問題なし! けれど、待ちに待った誕生日のその日、なんだかみんなの様子がおかしくて──? 転生した少女、ラーレの初恋をめぐるストーリー。 他サイトにも掲載しております。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

グランディア様、読まないでくださいっ!〜仮死状態となった令嬢、婚約者の王子にすぐ隣で声に出して日記を読まれる〜

恋愛
第三王子、グランディアの婚約者であるティナ。 婚約式が終わってから、殿下との溝は深まるばかり。 そんな時、突然聖女が宮殿に住み始める。 不安になったティナは王妃様に相談するも、「私に任せなさい」とだけ言われなぜかお茶をすすめられる。 お茶を飲んだその日の夜、意識が戻ると仮死状態!? 死んだと思われたティナの日記を、横で読み始めたグランディア。 しかもわざわざ声に出して。 恥ずかしさのあまり、本当に死にそうなティナ。 けれど、グランディアの気持ちが少しずつ分かり……? ※この小説は他サイトでも公開しております。

【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜 王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。 彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。 自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。 アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──? どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。 イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。 *HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています! ※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)  話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。  雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。 ※完結しました。全41話。  お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚

クリスマスの夜、女の子を拾った。

true177
恋愛
恋愛などというものは、空虚でつまらないもの。人は損得で動くとばかり思っていた広海(ひろみ)。 しかし、それは大きな間違いだった。 あるホームレスの女の子、幸紀(さき)との奇跡的な出会いを期に、広海の感情は大きく揺れ動いていく。 彼女は、壮絶な人生を送ってきていた。一方の広海は、大した事件も起きずにのうのうと愚痴を垂れ流していただけだった。 次第に、彼はこう思うようになる。 『幸紀と、いつまでも一緒にいたい』と。 ※小説家になろう、pixiv、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。

冥土の土産に一杯どうだい?

谷内 朋
キャラ文芸
舞台はこの世とあの世の境にある街【デスタウン】 様々な事情で肉体と魂が離れ、当てもなく彷徨い歩く者たちを温かく迎え入れるビアホールが存在する。その名もまんま【境界線】 ここでは行き先を決めていない魂たちが飲んで食ってくだ巻いて、身(?)も心もスッキリさせたところで新たな世界(若しくは元の世界)へと旅立って行く……ってだけのお話。 Copyright(C)2019-谷内朋

オタクな母娘が異世界転生しちゃいました

yanako
ファンタジー
中学生のオタクな娘とアラフィフオタク母が異世界転生しちゃいました。 二人合わせて読んだ異世界転生小説は一体何冊なのか!転生しちゃった世界は一体どの話なのか! ごく普通の一般日本人が転生したら、どうなる?どうする?

処理中です...