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29.幸せ
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車はとっくに高速に乗っていた。ライトが行き先を誘導する夜の世界に突入しており、単調なドライブが、瞑想的な思考を促す。ぼーっと流れてゆく明かりを眺めていると、雄大君は目線を前に据えたまま、話しだした。
「水希さん、ご飯っておいしいじゃないですか」
「うん。そうね」
「例えば、水希さんと美味しいご飯を食べたら、ちょっと幸せじゃないですか」
「あら、そう? でも人と一緒に何かすると、ほわりと楽しくなるよね」
「そういう流れを、あの白井って人は知らないんじゃないですかね。自然が生む幸せを知らないから、何か別のものを作り出そうとしている。ぶっちゃけ、本当に不幸な人なんだと思います」
「そのことに気付かない限り、彼の策略も終わらないでしょう。まだまだ戦いは続きそう」
「もうすぐサービスエリアですよ。水希さんは何を食べたいですか? 」
「絶対、温かい白いごはん。親子丼でもいいし、カツ丼でも、中華丼でもいいな。雄大君は? 」
「そのサービスエリアの名物が食いたいです」
「出たな、旅気分」
「ちょっと幸せになっても、バチは当たらないと思いますから」
「当たってたまるか、って感じかな。アフターファイブ、ちょっとパーッとしましょうか」
「俺、その水希さんの何でも乗る所、結構好きですよ」
「どうもありがとう」
車は安全運転で道を走ってゆく。雄大君との会話で、何かとても大事なものに触れた気がしながら、私は東京ばな奈を忘れず買わなければと、ぷかぷかと考えていたのだった。
「水希さん、ご飯っておいしいじゃないですか」
「うん。そうね」
「例えば、水希さんと美味しいご飯を食べたら、ちょっと幸せじゃないですか」
「あら、そう? でも人と一緒に何かすると、ほわりと楽しくなるよね」
「そういう流れを、あの白井って人は知らないんじゃないですかね。自然が生む幸せを知らないから、何か別のものを作り出そうとしている。ぶっちゃけ、本当に不幸な人なんだと思います」
「そのことに気付かない限り、彼の策略も終わらないでしょう。まだまだ戦いは続きそう」
「もうすぐサービスエリアですよ。水希さんは何を食べたいですか? 」
「絶対、温かい白いごはん。親子丼でもいいし、カツ丼でも、中華丼でもいいな。雄大君は? 」
「そのサービスエリアの名物が食いたいです」
「出たな、旅気分」
「ちょっと幸せになっても、バチは当たらないと思いますから」
「当たってたまるか、って感じかな。アフターファイブ、ちょっとパーッとしましょうか」
「俺、その水希さんの何でも乗る所、結構好きですよ」
「どうもありがとう」
車は安全運転で道を走ってゆく。雄大君との会話で、何かとても大事なものに触れた気がしながら、私は東京ばな奈を忘れず買わなければと、ぷかぷかと考えていたのだった。
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