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25.シゼンノチカラ
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空を見上げると、どこまでも青い。植物達は気負いもなく、調和を生み出している。その上にガンとくる支配の気配。植物達は抗うことなく、その力を飲み込んでゆく。いや、植物だけじゃない。ここにいる人々も、支配されていた。ここにいる間だけだが、このパワーの影響から逃れることはできない。影響を受けないのは、私のようなこの力を、外側から見ることのできる人間だけだ。
(白い支配の気配に流れを。停止から解放へ向けて)
私は手を動かしながら、気の流れを流動させ始めた。ポン、ポン! と花達が輝いてゆく。あちこちに向きながら、植物の音楽を小さく奏でる。動きがもたらされた。周りで微かに漂っている人々のお喋りの声が、大きくなり、強く響くようになる。大きすぎる存在感を穿ち、穴を開けた。閉ざされていた気配が、滝のように流れ出す。流れてゆく。流れは止まらない。溜め込んでいた分、一時澱んでいたが、花が、植物が、澱みを補正してゆく。自然の力に敵うものなどないと、改めて感じる。
呼吸が落ち着いてゆく。流れが全てを満たし、空間が正当なもので満ちてゆく。植物の輝き。来場者のパワー。響き合う。影響し合う。色彩が強まり、まるで開放の歌を歌っているかのよう。
そう、私達は自由だ。
「白い霧のようなものが、かなり薄まりましたね。何をやりました? 水希さん」
腕を組んで、目を丸くしつつ言う雄大君に、私は答えた。
「ちょっと凝り固まった物を穿ってから、後は自然の力にお任せしただけ。少し手伝いはしたけどね」
私は辺りを見渡した。空、大気、生物、大地が発する、メッセージの流れが良くなっている。ここに来たお客さんは、様々な自然からのメッセージを受け取り、きっと楽しい気持ちになるはずだ。
「俺、ちょっと守りを固くしておきましょうか。白井タクヤのパワーをはねのけるために」
雄大君は真剣な眼差しをし、そう言うので、私は同意を込めて大きく頷くと、彼は両手で印を結び、沈黙した。何処か新鮮さを感じる周囲の空気に浸っていると、しばらくしてから雄大君は一つ溜め息をついて言った。
「妖精のような存在を、植物達にまき散らしました。その上で、どんてんフラワー植物園の明るい力を呼び覚ましてから、暖色系のオーラを強めて、さらにシールドをガツンと強くしています。まあ、分かりやすく言えば、金運の神様をつけたようなものですかね」
「ありがとう。このままなら来場者が増えていくはずなんだけれど―」
私の言葉に雄大君はかっくりと頷いて言った。
「白井タクヤなるものの存在があるなら、また逆戻りですね」
「藤田さんにちゃんと話さないと」
「なら、案内所へ戻りましょう」
私達は踵を返し、温室の中を再び歩き始めた。花達がハーモニーと明るさ、それと幸福感を醸し出している。花は命を繋ぐために咲く。つまり未来の象徴だ。明日へ向かって放つ輝きが、ここに来る人達にもささやかな希望をもたらすことだろう。支配の下で隠されていた光が解き放たれ始め、白いオーラを駆逐していく。
それにしてもあの男、白井タクヤのやりたいこととは……?
☆☆☆
(白い支配の気配に流れを。停止から解放へ向けて)
私は手を動かしながら、気の流れを流動させ始めた。ポン、ポン! と花達が輝いてゆく。あちこちに向きながら、植物の音楽を小さく奏でる。動きがもたらされた。周りで微かに漂っている人々のお喋りの声が、大きくなり、強く響くようになる。大きすぎる存在感を穿ち、穴を開けた。閉ざされていた気配が、滝のように流れ出す。流れてゆく。流れは止まらない。溜め込んでいた分、一時澱んでいたが、花が、植物が、澱みを補正してゆく。自然の力に敵うものなどないと、改めて感じる。
呼吸が落ち着いてゆく。流れが全てを満たし、空間が正当なもので満ちてゆく。植物の輝き。来場者のパワー。響き合う。影響し合う。色彩が強まり、まるで開放の歌を歌っているかのよう。
そう、私達は自由だ。
「白い霧のようなものが、かなり薄まりましたね。何をやりました? 水希さん」
腕を組んで、目を丸くしつつ言う雄大君に、私は答えた。
「ちょっと凝り固まった物を穿ってから、後は自然の力にお任せしただけ。少し手伝いはしたけどね」
私は辺りを見渡した。空、大気、生物、大地が発する、メッセージの流れが良くなっている。ここに来たお客さんは、様々な自然からのメッセージを受け取り、きっと楽しい気持ちになるはずだ。
「俺、ちょっと守りを固くしておきましょうか。白井タクヤのパワーをはねのけるために」
雄大君は真剣な眼差しをし、そう言うので、私は同意を込めて大きく頷くと、彼は両手で印を結び、沈黙した。何処か新鮮さを感じる周囲の空気に浸っていると、しばらくしてから雄大君は一つ溜め息をついて言った。
「妖精のような存在を、植物達にまき散らしました。その上で、どんてんフラワー植物園の明るい力を呼び覚ましてから、暖色系のオーラを強めて、さらにシールドをガツンと強くしています。まあ、分かりやすく言えば、金運の神様をつけたようなものですかね」
「ありがとう。このままなら来場者が増えていくはずなんだけれど―」
私の言葉に雄大君はかっくりと頷いて言った。
「白井タクヤなるものの存在があるなら、また逆戻りですね」
「藤田さんにちゃんと話さないと」
「なら、案内所へ戻りましょう」
私達は踵を返し、温室の中を再び歩き始めた。花達がハーモニーと明るさ、それと幸福感を醸し出している。花は命を繋ぐために咲く。つまり未来の象徴だ。明日へ向かって放つ輝きが、ここに来る人達にもささやかな希望をもたらすことだろう。支配の下で隠されていた光が解き放たれ始め、白いオーラを駆逐していく。
それにしてもあの男、白井タクヤのやりたいこととは……?
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