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桃青

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23.謎

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 私達は車を駐車して車から降り、木々の間に伸びる遊歩道を歩き出した。天気が味方してくれて、温かくて気持ちの良いお散歩日和だ。私は大股で歩く雄大君に近づいていって、問いかけた。
「植物の気配で一発解決できそう? 」
「今、感じている所なんですけど、森の木々も、元気っちゃあ元気なんです。でも、自由を感じないんだな。うわぁ~、フリーダムっていう気配が希薄なんです」
「それって、人が手入れしているから? 」
「そうなんすかね。そうかもしれないけれど。人間でも良い子っているじゃないですか」
「素直で従順って感じの? 」
「そう。でもそういう子は面白みがない。そういう感じの木々なんですよね、上からの力に抗わない」
「とりあえず藤田さんに話を聞こうか」
「そうですね」
 そんな会話をくだくだとしながら気付くと、多数のガラス張りの温室が立ち並ぶ、植物園の入口に着いていた。入場口の隣にある少女趣味な案内所で、藤田通さんにお会いしたいことを告げて、しばらく待っていると、彼が勢い込んで、入口から飛び込んできて言った。
「お待ちしていました! 遠い所をわざわざ、どうも」
 私は言う。
「いえいえ。その後どんな感じですか? 状況は相変わらず? 」
「変わらないですね。良くもならず、もやもやしたままです。良ければ植物園を案内しましょうか」
「いえ。まずは私達で自由に歩き回ってみます。分からないことがあったら、いつでも藤田さんをお呼びして構わないですか? 」
「はい、もちろん。私は案内所にいますので、声を掛けてくだされば」
 そこまで話を進めると、私達は藤田さんと別れて、園内を順路通りに歩いていくことにした。雄大君は子供のように好奇心いっぱいで、キョロキョロしながら言った。
「これ、なんて花ですか、水希さん」
「ストックだよ。花言葉は永遠の美しさ」
「あ、これは知っています。フリージアですよね。花屋で見たことがあるな」
「それにしてもまぁ、奇麗に手入れされているよね」
「確かに名所と呼ぶにふさわしいかもしれないです、隠れているにしても。水希さんは何か分かりましたか? 」
「今、探りを入れているとこ。本当に人がまばらだね。本来ならば、もっとみっしりと人がいるはずなんでしょ」
「でしょうね。こんなに奇麗なのに、どうして人が来ないのかなあ」
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