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桃青

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16.邂逅

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「では、白井さんはどうなりたいと思いますか? 」
「もっと、何ていうのか、普通になりたいというか……。体の不調もなくなってほしいし、恋人だって欲しいし。あの、あなたのお名前を教えていただけませんか? 」
「あ、はい。私は吉野水希で、こちらの彼が、竹田雄大と言います」
「吉野さんは恋人とかいらっしゃる……? 」
「恋人はいないですけれど、男女とも友達なら、少しはいますよ」
「僕の気持ち、分かりますか」
「分かると思います。なぜなら私も、白井さんと似たような体験をしていますから。普通になりたくても、普通になれない、みたいなね」
「辛いです。考えても、答えには辿り着けない。僕なりにベストを尽くしていますが、どうにもならないままです」
「分かります」
「ずっと僕、このままなのかな……」
「ちょっとあなたを見させていただきますね」
 私はそう言ってから、雄大君に訊ねた。
「白井さんって、どんな感じに見えているのかしら」
「そうですね、オーラのメインカラーは白。非常に健全な印象ですよ。白って周囲に染まるカラーなので、他者とズブズブになりやすいから、それが苦しみの原因じゃないですかね」
「ズブズブって表現を気に入っているの? でもオーラのカラーを簡単には変えられないし、どうしたらいいんだろうね。オーラの強さは? 」
「やや強め。今の段階では」
 私は気を取り直して言った。
「白井さん、私があなたをちょっと探ってみますね」
「はい」
 彼の承諾を得てから、気配を探り出してみた。
(ハーモニーのズレはない。ちゃんと調和が取れていて、音色もいい音。爽やかで気持ちのいい気配がする。特に問題はなさそう。……あれ? 読もうとするとブロックされて、弾かれるな。これは何? )
(自然のようでいて、深く探ろうとすると、越えられない壁のようなものが存在している。白井さんの心の壁? 他者を拒絶しているの? 他人に振り回される気質故に、自分を守るためにこんな強力な壁を作り出したのか)
(自然……。何かが引っかかる。自然なのに、自然じゃない。不自然という名の自然。どういうことだろう)
(もしかすると、このハーモニーや壁は、全て彼の操作の上で作り出された、仮想の世界? そんな人っている? 全知全能のような調和師でもない限り、そんなことは―)
(調和師でもない限り……)
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