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桃青

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15.I miss you

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「あのオーラが見えるとかいう女性、これからどうなるんでしょうね」
 雄大君がぼやくので、私は答えた。
「私は調和師って名乗っているし、それで仕事もしているけれど、特別な人間というわけではないの」
「ああ、それは俺もそうです」
「見えなかったり、感じなかったりする人、つまり一般的な感覚の人が無意識に行っていることを、意識して行っているだけなのよ」
「俺の場合は、そうだな、感じるキャパが世界とズブズブって感じかな」
「ただ私の場合は、雄大君と少し違って、操作もできるわけだから、影響力がとても強いと言えば強いんだけど」
「水希さんはそうですよね。俺にはない力だな。俺にできるのは、招喚と浄化。まあぶっちゃけて言えば、感じることがスピリチュアリティなんですよね。俺はなんとなくそう思っています。つまり誰だってできる」
「あのオーラが云々の女性も、その一人。はい、次の予約はどうなっていますか? 」
「十分後ですね。彼は事前に連絡を頂いていて、名前を白井タクヤと言い、うまく言えないのだけれど、相談したいことがあると」
「ここのサロンで真っ先に名を名乗る人って、めずらしいわね。相談内容も、私達向きな感じだし」
「確かにいきなり来て、名も名乗らず、言いたいことだけ言って帰る人が多いですもんね」
「後、女性の相談者が多いのに、男性って所も気になる」
 私がそう言った時、ドアが音もたてず、ゆっくりと開き始めた。私と雄大君が見守っていると、若い男の人が俯いたまま、古典的な日本の幽霊のように静かに入ってきて、その場で固まってじっとしている。雄大君は窺うように言った。
「白井、タクヤさん? 」
「―はい」
 彼は小さな声で返事をする。私は立ち上がり、できるだけソフトに言った。
「ソファーにお掛けください。お話をお聞きしたいと思いますので」
「はい」
 彼はそう言い、小さく頷くと、ソファーに座り、私達を見上げた。かなり若く見える。大学生か、社会人一年目? 清潔な印象の男の人だ。内気な雰囲気だが、その気になればズバズバ物を言うこともできそうな感じ。私と雄大君はガタガタと椅子を彼の近くへ移動させ、軽くアイコンタクトを取ってから、私が訊ねた。
「どんな相談内容でしょうか? 」
「そう、ですね。具合が悪いです」
「どんな風に? 」
「運が悪いというか、物事が……、うまく流れていかない感じ」
「具体的にどんなことがありましたか? 」
「息が上がったりとか、胸が苦しくなったりすることがあります。お医者さんに診てもらいましたけれど、体は悪くないって」
「肉体的不調を感じていらっしゃるということですね。他には何か? 」
「人間関係がうまくいきません。始めはわりかし仲良くなれますけど、長く続かなくて。恋愛もいつもそんな感じだし」
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