16 / 67
15.I miss you
しおりを挟む「あのオーラが見えるとかいう女性、これからどうなるんでしょうね」
雄大君がぼやくので、私は答えた。
「私は調和師って名乗っているし、それで仕事もしているけれど、特別な人間というわけではないの」
「ああ、それは俺もそうです」
「見えなかったり、感じなかったりする人、つまり一般的な感覚の人が無意識に行っていることを、意識して行っているだけなのよ」
「俺の場合は、そうだな、感じるキャパが世界とズブズブって感じかな」
「ただ私の場合は、雄大君と少し違って、操作もできるわけだから、影響力がとても強いと言えば強いんだけど」
「水希さんはそうですよね。俺にはない力だな。俺にできるのは、招喚と浄化。まあぶっちゃけて言えば、感じることがスピリチュアリティなんですよね。俺はなんとなくそう思っています。つまり誰だってできる」
「あのオーラが云々の女性も、その一人。はい、次の予約はどうなっていますか? 」
「十分後ですね。彼は事前に連絡を頂いていて、名前を白井タクヤと言い、うまく言えないのだけれど、相談したいことがあると」
「ここのサロンで真っ先に名を名乗る人って、めずらしいわね。相談内容も、私達向きな感じだし」
「確かにいきなり来て、名も名乗らず、言いたいことだけ言って帰る人が多いですもんね」
「後、女性の相談者が多いのに、男性って所も気になる」
私がそう言った時、ドアが音もたてず、ゆっくりと開き始めた。私と雄大君が見守っていると、若い男の人が俯いたまま、古典的な日本の幽霊のように静かに入ってきて、その場で固まってじっとしている。雄大君は窺うように言った。
「白井、タクヤさん? 」
「―はい」
彼は小さな声で返事をする。私は立ち上がり、できるだけソフトに言った。
「ソファーにお掛けください。お話をお聞きしたいと思いますので」
「はい」
彼はそう言い、小さく頷くと、ソファーに座り、私達を見上げた。かなり若く見える。大学生か、社会人一年目? 清潔な印象の男の人だ。内気な雰囲気だが、その気になればズバズバ物を言うこともできそうな感じ。私と雄大君はガタガタと椅子を彼の近くへ移動させ、軽くアイコンタクトを取ってから、私が訊ねた。
「どんな相談内容でしょうか? 」
「そう、ですね。具合が悪いです」
「どんな風に? 」
「運が悪いというか、物事が……、うまく流れていかない感じ」
「具体的にどんなことがありましたか? 」
「息が上がったりとか、胸が苦しくなったりすることがあります。お医者さんに診てもらいましたけれど、体は悪くないって」
「肉体的不調を感じていらっしゃるということですね。他には何か? 」
「人間関係がうまくいきません。始めはわりかし仲良くなれますけど、長く続かなくて。恋愛もいつもそんな感じだし」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる