ABC

桃青

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13.フロウ

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 ☆☆☆
「私と同じ力を持った人か……」
 私は声に出して言ってみた。会ってみたい。それから話をしてみたい。一人で生きてきたなんて、おこがましいことを言うつもりはない。それにどんな人間だって一人じゃない。でも誰だってパルスを発しつつ、理解者を求め、分かち合うことを夢見ている。
(理解者)
 言葉の重みを感じつつ、心で呟く。この社会的な見方で世界を捉えた時に、湧き上がってくる不安を、第二の? 調和師である存在に、ぶちまけたい。そして、どうしたらいいですかと訊ねてみたい。その人は何と言う?  解決策を私に見せてくれるかしら。
 でも今の所、どこで何をやっている人か謎のままだし、率先してハーモニーをぶち壊すような、反社会的かつ悪質な人でもある。
(私はどうやったら良くなるだろうってことだけを考えて、ハーモニーを整えようとばかりしてきたけれど、それを壊すなんて発想をする人だから、そもそも社会のことなんて考えていないのかも)
(それとも、何か壮大な思い、もしくは考えがあってのことだろうか)
 私は一旦思考を止めて、森を眺めた。何処かできれいな声の鳥が鳴いた。父ならすぐ、鳥の名前を教えてくれることだろう。
 すり抜けていく空気、広がる緑の気配、何かに溶けてゆく自分。この世界が見えるのなら。普通だったら守りたいという思いが真っ先に思い浮かぶ。どうにかしたいと思う。
 ただ今の時点でただ一つ、私にも分かることがある。
 これから私はその、もう一人の調和師と会うだろう。直感でも予言でもない。私の感じる流れがその方向へ向かって、流れ始めているのだ、私の手が届かない所で。

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