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8.可能性
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車に乗り込んで、私達の巣、サロン・インディゴまでの道を走り始めると、雄大君は時計を見て言った。
「結構時間を食いましたね。ま、次の予約までの時間は多めにとってありますけれど。古着屋に寄るくらいの時間なら、あるんじゃないかなあ」
「いいよ、いいよ。次の仕事に遅れないなら、好きにしていい」
「水希さん、疲れています? 」
「そうね。スピリチュアルな能力を発動させると、やっぱり疲れるわ。何でこの仕事をやっているのか、時々自分でも不思議に思う。こんなにヘトヘトになるのにね」
「俺は疲れませんよ、それほど。相手に巻き込まれているんじゃあないですか?きっと、 自分の守り方が下手なんですよ」
「分かっている。でもそれって、さあ、うまくなりましょうと思ったら、そうなれるものでもないし、相手と波動を合わせないと相手のことが読めなかったり、調和させられなかったりするので、……ま、仕方ないね。雄大君が物凄い守護の存在を、私につけてくれたりしたら、何かが変わるのかしら」
「あ、水希さんにはすでにドラゴン系の、かなり立派な守護するものがついていますよ。今もがんばれーって、そう言っています」
「がんばれ? 何だか泣きそう、私十分に頑張っているよ」
「じゃ、頑張ったご褒美として、ゼリアに寄っていきましょうか。俺も古着屋でざっくりとパーカー探しをしますから」
「うん。そうね。そうしよう。シールを見るの」
「今回の問題の彼って、どうでした? 水希さんから見て、どんな感じだったんですか? 」
「最初に会った時はびっくりしたわ。正直めちゃくちゃだったの、ハーモニーが。どうしてあんなことになったんだろう」
「誰かに影響を受けたんじゃ、」
「そんなものじゃない。それにあんな自虐的なこと、自分でするはずはないし……」
「まさか」
「雄大君もその可能性を考えている? そうなの、誰かがやったんじゃないかって思っている」
「水希さんと似た能力を持つ人が、調和する力を操って、逆に調和を壊した」
「ま、今はまだ推論の域を出ないけれどね」
「だとしたら何が目的なんですか、その人。愉快犯ですかね」
「かもしれない。そうならば、かなりやっかいだわ。調和の能力も、私以上に高い可能性があるの。そんな人が『遊び』で人を壊し始めるのよ」
「段々怖くなってきました」
「といっても、今の私達にできることは何もない。あ、ギャンドウの看板見っけ。寄っていって、雄大君」
「切り替え早いですねえ。って、ゼリアじゃなくてギャンドウでいいの? 」
「あ、ギャンドウを馬鹿にしたな」
「していないです。ゼリアと言っていたのは、水希さんです」
「もうどこでもいい。私は癒しが欲しいの。シールを買いたいの。あのミニマムな世界に浸るの」
「そうですね、怖い妄想は一旦忘れましょう」
「切り離していこう。今は考えなくていい」
車は左折して、店の集合体であるモールの中へ入っていった。そう、今は考えなくていい。だが、もし被害者が続出しているのなら、どうにかして、謎の人である調和師の悪行を止めなくてはならなかった。
―でも、どうやって? ―
考えると頭痛がしそうだったが、車が止まると、私は財布を片手に車から降りた。私までその人の影響を受けてはならない。今は楽しい気分を思い出し、味わわなければ。私はキャンドウに向かって歩き出した、大袈裟な表現かもしれないけれど、自分の人生を取り戻すために。
「結構時間を食いましたね。ま、次の予約までの時間は多めにとってありますけれど。古着屋に寄るくらいの時間なら、あるんじゃないかなあ」
「いいよ、いいよ。次の仕事に遅れないなら、好きにしていい」
「水希さん、疲れています? 」
「そうね。スピリチュアルな能力を発動させると、やっぱり疲れるわ。何でこの仕事をやっているのか、時々自分でも不思議に思う。こんなにヘトヘトになるのにね」
「俺は疲れませんよ、それほど。相手に巻き込まれているんじゃあないですか?きっと、 自分の守り方が下手なんですよ」
「分かっている。でもそれって、さあ、うまくなりましょうと思ったら、そうなれるものでもないし、相手と波動を合わせないと相手のことが読めなかったり、調和させられなかったりするので、……ま、仕方ないね。雄大君が物凄い守護の存在を、私につけてくれたりしたら、何かが変わるのかしら」
「あ、水希さんにはすでにドラゴン系の、かなり立派な守護するものがついていますよ。今もがんばれーって、そう言っています」
「がんばれ? 何だか泣きそう、私十分に頑張っているよ」
「じゃ、頑張ったご褒美として、ゼリアに寄っていきましょうか。俺も古着屋でざっくりとパーカー探しをしますから」
「うん。そうね。そうしよう。シールを見るの」
「今回の問題の彼って、どうでした? 水希さんから見て、どんな感じだったんですか? 」
「最初に会った時はびっくりしたわ。正直めちゃくちゃだったの、ハーモニーが。どうしてあんなことになったんだろう」
「誰かに影響を受けたんじゃ、」
「そんなものじゃない。それにあんな自虐的なこと、自分でするはずはないし……」
「まさか」
「雄大君もその可能性を考えている? そうなの、誰かがやったんじゃないかって思っている」
「水希さんと似た能力を持つ人が、調和する力を操って、逆に調和を壊した」
「ま、今はまだ推論の域を出ないけれどね」
「だとしたら何が目的なんですか、その人。愉快犯ですかね」
「かもしれない。そうならば、かなりやっかいだわ。調和の能力も、私以上に高い可能性があるの。そんな人が『遊び』で人を壊し始めるのよ」
「段々怖くなってきました」
「といっても、今の私達にできることは何もない。あ、ギャンドウの看板見っけ。寄っていって、雄大君」
「切り替え早いですねえ。って、ゼリアじゃなくてギャンドウでいいの? 」
「あ、ギャンドウを馬鹿にしたな」
「していないです。ゼリアと言っていたのは、水希さんです」
「もうどこでもいい。私は癒しが欲しいの。シールを買いたいの。あのミニマムな世界に浸るの」
「そうですね、怖い妄想は一旦忘れましょう」
「切り離していこう。今は考えなくていい」
車は左折して、店の集合体であるモールの中へ入っていった。そう、今は考えなくていい。だが、もし被害者が続出しているのなら、どうにかして、謎の人である調和師の悪行を止めなくてはならなかった。
―でも、どうやって? ―
考えると頭痛がしそうだったが、車が止まると、私は財布を片手に車から降りた。私までその人の影響を受けてはならない。今は楽しい気分を思い出し、味わわなければ。私はキャンドウに向かって歩き出した、大袈裟な表現かもしれないけれど、自分の人生を取り戻すために。
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