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6.調和
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「は。僕が、話していればいいんですか? 」
「ええ、それだけでいいんです。お願いします」
のぶ子さんと見つめ合い、私の頼みを聞いて雑談を始めた二人をよそに、私は調和をし始めた。
(何これ。彼の健全な流れを、何かが断ち切っている。この流れを元に戻して)
私は細かく両手を動かしながら、作業を進めていった。
(自然なものを押し込めて、不自然にしている。これを解放して)
(弱い印象を、元通りに。強くして)
さっきまでばらついていた言葉たちが整いだしたことを、二人の会話を聞きつつ確認してから、私は雄大君に頼んだ。
「雄大君、彼を保護してくれる? 守護の力をつけてほしいの」
「分かりました。じゃ、守護の存在を呼んで……」
「できた? 」
「……彼のオーラって独特ですね。ええ、外側のシールドを強くして、下等ではあるけれど、守護する存在にも守ってもらっています。多少の妙な力なら、はねのけるはずですよ、これなら」
「応急処置は終了ね。私はもう少し、歪みを直しておく」
そう言ってさらに歪みを探りながら、思った。
(このおかしな事態は、彼氏さんの力で生まれたものじゃない。まだ変な力が働いているな。これを抑え込んで、無効にして。……外側から変えられたんだ。でもどうやって? )
ふと、私は鈴木さんたちの会話を再び見守った。のぶ子さんの瞳がキラキラしている。彼氏も固くなっていたものが、融解し、流れ出していた。後は彼自身の自然な力に任せればいい。
調和はし終えたが、雄大君とのぶ子さんと彼氏さんとで、もう少し雑談をしていくことにした。のぶ子さんが饅頭とお茶を出してくれ、この家についての話や、二人のなれそめの話を聞く。こういう時雄大君の明るい性格は、有能だ。私は相槌を打ちつつも、聞き役に回る。のぶ子さんは変わらずまともなままだし、彼氏もいい流れに乗っていた。それに無口どころか、よく喋るようになっていた。ハーモニーも彼自身の治癒力みたいなもので、どんどん整いだしている。雄大君は訊ねた。
「彼氏さんは今、どんな気分ですか? 」
「うん、何か……。何だか分からないけれど、元気です。久し振りにのぶ子とちゃんと話した気がする。何故だろう……」
のぶ子さんが嬉しそうに言う。
「理由は分からないけれど、以前の感じが戻ってきているわ。嬉しい。本当にありがとうございます」
「いえいえ。多分のぶ子さんも、元々敏感な人なんですね。こんな彼の目に見えない変化に気付ける人って、実はそう多くないんですよ」
「え、そうなんですか? 」
「うん。あと僕、オーラが見える人なのだけれど、まあ、ちょっと怪しい能力がある人なんです。で。彼氏さんのオーラを今見ているんですが、変わっているっちゃあ変わっていますね、あなたは」
「えっ、僕が変わっているんですか? 」
「そう。オーラがレインボーなの」
「それは、どういう意味なのか、僕にはよく分からないですが」
「まあ、色々な要素がある人ってことですか、単純に言えば。多様な感覚を持ち合わせている分、心の窓があちこちに開いていて、色んな影響も受けやすい人なんですよ。それが悪い方向へ働いた場合、今回みたいなこと、いわゆる調和が狂うみたいなことが起きたのではないかと」
「ええ、それだけでいいんです。お願いします」
のぶ子さんと見つめ合い、私の頼みを聞いて雑談を始めた二人をよそに、私は調和をし始めた。
(何これ。彼の健全な流れを、何かが断ち切っている。この流れを元に戻して)
私は細かく両手を動かしながら、作業を進めていった。
(自然なものを押し込めて、不自然にしている。これを解放して)
(弱い印象を、元通りに。強くして)
さっきまでばらついていた言葉たちが整いだしたことを、二人の会話を聞きつつ確認してから、私は雄大君に頼んだ。
「雄大君、彼を保護してくれる? 守護の力をつけてほしいの」
「分かりました。じゃ、守護の存在を呼んで……」
「できた? 」
「……彼のオーラって独特ですね。ええ、外側のシールドを強くして、下等ではあるけれど、守護する存在にも守ってもらっています。多少の妙な力なら、はねのけるはずですよ、これなら」
「応急処置は終了ね。私はもう少し、歪みを直しておく」
そう言ってさらに歪みを探りながら、思った。
(このおかしな事態は、彼氏さんの力で生まれたものじゃない。まだ変な力が働いているな。これを抑え込んで、無効にして。……外側から変えられたんだ。でもどうやって? )
ふと、私は鈴木さんたちの会話を再び見守った。のぶ子さんの瞳がキラキラしている。彼氏も固くなっていたものが、融解し、流れ出していた。後は彼自身の自然な力に任せればいい。
調和はし終えたが、雄大君とのぶ子さんと彼氏さんとで、もう少し雑談をしていくことにした。のぶ子さんが饅頭とお茶を出してくれ、この家についての話や、二人のなれそめの話を聞く。こういう時雄大君の明るい性格は、有能だ。私は相槌を打ちつつも、聞き役に回る。のぶ子さんは変わらずまともなままだし、彼氏もいい流れに乗っていた。それに無口どころか、よく喋るようになっていた。ハーモニーも彼自身の治癒力みたいなもので、どんどん整いだしている。雄大君は訊ねた。
「彼氏さんは今、どんな気分ですか? 」
「うん、何か……。何だか分からないけれど、元気です。久し振りにのぶ子とちゃんと話した気がする。何故だろう……」
のぶ子さんが嬉しそうに言う。
「理由は分からないけれど、以前の感じが戻ってきているわ。嬉しい。本当にありがとうございます」
「いえいえ。多分のぶ子さんも、元々敏感な人なんですね。こんな彼の目に見えない変化に気付ける人って、実はそう多くないんですよ」
「え、そうなんですか? 」
「うん。あと僕、オーラが見える人なのだけれど、まあ、ちょっと怪しい能力がある人なんです。で。彼氏さんのオーラを今見ているんですが、変わっているっちゃあ変わっていますね、あなたは」
「えっ、僕が変わっているんですか? 」
「そう。オーラがレインボーなの」
「それは、どういう意味なのか、僕にはよく分からないですが」
「まあ、色々な要素がある人ってことですか、単純に言えば。多様な感覚を持ち合わせている分、心の窓があちこちに開いていて、色んな影響も受けやすい人なんですよ。それが悪い方向へ働いた場合、今回みたいなこと、いわゆる調和が狂うみたいなことが起きたのではないかと」
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