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桃青

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4.出会いとは

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 彼と初めて出会った時のことを思い出した。街中でいきなり雄大君に、
「あなた、光っていますね」
 と声を掛けられたのだ。新手のナンパか、宗教の勧誘かと不審に思ったが、彼を見ると、至って無邪気な様子で、誰にでもなついてくる子犬みたいな様子だったことが、今でも忘れられない。私の警戒心はたちまち薄くなり、気も合ったのだろう、すぐさま二人で喫茶店へ直行することにした。そこで打ち明けられた彼の実体……。
「俺、見えるんですよね~」
 と軽く語りだした彼の話は、私じゃなかったならついていけないような、飛んでいる話だった。つまり、めちゃくちゃスピリチュアルだったのである。私にできることが彼にできなくて、彼にできることが私にできないのも、興味深かった。私は心の内で、ああ、仲間だ、と呟いた。私と彼は、共に分かってしまう人間。罪ではないのに、私は何故か影を背負っていた。それに反し、彼のこの明るさよ。彼はオーラが見えたり、霊が見えたりする力を持ち、それを心底楽しんでしまっている。

 その日から私達は、パートナーになった。恋人という意味合いはなく、友達でもなく、ビジネスパートナーという立ち位置でもない。
 互いにとって、カチリと嵌るべきものが嵌る。そんな存在になったのだ。

 それから時は流れた。私はハートの無法地帯でのカウンセラーにでもなったような日々を、雄大君と協力しながら過ごし、気が付けば土曜日。雄大君の運転する車に乗りながら、私達は鈴木のぶ子さんの自宅へと向かっていた。
「仕事が早めに片付いたら、帰りにちょっと古着屋へ寄ってもいいですか? 俺、春服買いそびれちゃっていて」
 雄大君の言葉に、私は眉間にしわを寄せながら言った。
「また、パーカー探し? 」
「はい」
「はい、じゃないでしょ。趣味のパーカー集めを仕事の時間に持ち込まないでよ。自由すぎる。普通の会社だったら、即クビになるんじゃないの、そんなことをしたら」
「だから俺、水希さんのサロンで働いているんですよ。さっきなんか、面白そうな店を見つけたんで」
「なら、ゼリアも寄って」
「それって、シール探しですか? 」
「うん。最近時間がなくて、百均に寄れていないから」
「ちょっと、シール集めも水希さんの趣味じゃないですか。何ですか、一緒に渡れば怖くない? 」
「二人で罪を犯したならば、罪がチャラになる説」
「それか一緒に牢屋入りです。ま、とにかく。鈴木さんの彼氏次第ですね~、俺たちの運命は」
「……。私、彼氏さんは悪くないって気がするのよね、まだ会っていないけれども」
「それは、勘みたいなもので? 」
「勘じゃなくて。のぶ子さん、自分のせいかもって発言をしていたじゃない」
「言っていましたね」
「彼のせい、みたいな発想をしていないの。ふつう彼が悪かったら、彼に問題が~、みたいな言葉が先に出てくると思うのよ。それがなかった」
「じゃ、彼のせい、つまり彼の力でなく、他に何かの力が働いているってことですか」
「何かは分からないけれどね。ちょっと不気味だわ」
「確かにのぶ子さんも、正体が分からなくて不安げな様子でした。解決できればいいけどね」
「解決しなくちゃね、プロとして」
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