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桃青

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1.インディゴ

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 私はフッと夢想から覚めた。二つの机と二つの椅子。蛍光灯のライトに、大きめなソファー。そう、ここは私が働く、いわゆる相談所のようなもの。一応都市部にあるものの、極力家賃が安い所を選んだ。ふと窓に目をやれば、でかでかと貼られたこの相談所の案内ポスターが透けて見える。
『あなたの不調、あなたの不幸、あなたの不和、もしかしたら目に見えない力のせいかも。
 相談に乗ります。私達がその問題を直します。

 ×××‐×××‐××××
 あなたをヒーリングする、サロン・インディゴ』
 
 問題を直しますとは言ったものの、不思議な主張をする人たちの聞き役が、メインの仕事のようになっている。まあ、私はいつもそっと静かに、彼ら、彼女らの不具合を、調和させて直していた。結果として、相談者は物事がうまく回りだすようになり、リピーターもそれなりにいるのだ。
 私は調和師です。そう名乗ることにしている。調和師って何ですか? と問われたならば、悪い流れを正しい流れに正します、と答えることにしていた。
 悪い気、と呼ばれるものがある。発生源は様々だが、多くの影響を及ぼしている力は、人の力であり、影響を受けるのは、本人自身の力の向け方のせいだ。私はその力の流れを断ち切ったり、方向を変えたりして、自然に流れるようにし、調和を作り出すようにする。
 調和は人のベースの一つである。それを作ることができるのが、私の力。よって私は自分を、『調和師』と呼ぶ。

 その時、ドアがガタリと音を立てて開いた。青年と呼ぶべき若い男が、のしのしと入ってきて、
「どんな感じっすか? 」
 と気が置けない感じで言う。私は頬杖をついて言った。
「どうって、まあ、ぼちぼちね。今日の予約はいくつだっけ」
「今の所三つっすね。まあ今日中にいくつか増えると思うけれど」
「雄大君の霊視師としての力を駆使して、今日はどんな日になるか当ててくれる? 」
「俺は占い師じゃないですよ。でも面白い仕事が入るといいな」
「それは私も望む所」
 私の仕事の相方、竹田雄大が来た所で、私の今日という一日は、ピリリとスタートしたのだった。
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