極悪人

桃青

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 話は変わって。
 今現在、俺はインターネットでブログを書き続けている。それは極悪人を目指す俺が、日々精進し、理想を追い求めていく有り様を赤裸々に綴った、そう、夢追い人の熱きブログなのである。
 だがしかし、世間の人達にとって、そんな俺の思いに興味がある人はあまりいないようで、ブログのアクセス数は惨めに地を這い続けているのだった・・・。
 まあ、その話はひとまず置いておいて。

 とにかくある日、心が彷徨っていた俺は、パソコンを起動して、俺にしては珍しく弱気な気持ちで、こんなブログを書き込み始めた。

『ヘイ、みんな調子はどうだい?
 思考はダークに、そしてダークであればあるほど良いと思っているKちゃん、ブログに見参だ。

 ただ、思考はどんなに不健全であってもいいが、体の方の健康はしっかりしなけりゃいけないぜ?

ここで、Kちゃんの熱い格言を1つ。
 ・・・健康こそ、全てにおいての基本なのだ。
 だから、まず健康第一。

 そうじゃないと何事も始められないぞ、覚えておけ、ベイビー。

 というわけでKちゃん、ただ今悪人街道まっしぐら、ダークヒーローを目指して日々邁進中だ。だが、それでも最近は悩み事がある。

 どんなにタフな奴だって、悩みの1つや2つくらいはあるよな?
 極悪人Kちゃんだってさ・・・、時に後ろを振り返って、反省する事だってあるんだぜ?

 人生を前に進もうとする時、常に道は一本というわけじゃないだろう?
 2本も3本もあったり、時に道が枝分かれしていたりすることもある。

 そんな時、どの道に進むべきか迷った時には、後ろを振り返ってみるんだ。
 小説の本のページを遡って読むと、後のページのストーリーがどう進んでいくのか、想像できる事があるだろう?
 僕・・・、じゃない、俺がやろうとしているのはまさに、それと同じ事なのさ。
 ―反省は決して、自分の弱さじゃないと思う。

 まぁ、とにかく今のKちゃんが反省・・・、というよりも悩んでいる事、それは、

『なりたい自分になれない』

 という事だ。
 どうしてだろう?リーズンは今でも、謎のままだぜ。

 俺は最近、時々自分の事が分からなくなってしまう。そしてそんな時に沸き起こる不安の正体を、俺は見極めてみたいんだ。』

 俺はこの文面を、特に見返りを期待する事もなく書いて、ネット上に載せた。非常に人気のないブログのことだ、もちろん何か反応があれば嬉しいが、でも期待するだけ野暮だと思って、しばらく遠くから事態を傍観していたのだが・・・。
 … … …
 すると後日、驚いたことに俺に、メッセージのメールを送ってきた人物がいたのである。
 俺が早速届いたメールを確認してみると、タイトルには、
『悩めるあなたへ』
 とかかれており、一瞬、
(これは、宗教かなんかの勧誘かな?)
 という疑惑が頭を掠めはしたけれども、それでも沸き起こる好奇心に根負けして、とりあえずメールを開いてみることにした。

『初めまして。あなたのブログ、大変面白く読ませて頂きました。

 ちょっとここで自己紹介させて頂きます。
 私は山伏です。今まで様々な問題に対処し、解決に至る実績を積んで参りました。ですからもしよろしかったら、私のブログを読んでみて下さい。アドレスはこちら。↓

 そしてもしあなたが望むのなら、私があなたの悩みに対してお手伝いを致します。
 ご連絡、お待ちしています。』

 メールはそんな具合に、簡潔な文章で書かれていた。俺は、
(山伏・・・?)
 と、胡散臭いものでも見るかのように心の中で呟いたが、まあとりあえず、その山伏のブログにアクセスしてみる事にした。そして彼のブログを読んでみると・・・。
 正直に感想を言おう。そのブログはかなり、面白いものだった。

 彼の視点は縦横無尽だった。真実を見通す目は、時に霊的であり、かと思うとその一方で、物凄く現実的になって、ありのままの現実を捉えるのだ。
 そして1つのブログの記事に、必ず一つの教訓が込められていて、それはまるで出来のいい啓蒙書のような趣さえ、秘められているのだった。

 次第に俺はそのブログにのめり込んでいった。そしていつしか、
(これはもう絶対に、今の俺の気持ちをこの人に相談するしかないだろう・・・!)
 という思いが高まっていったのである。
 気がつくと俺は、山伏のブログのメッセージフォームから、彼に向かってメールを送っていた。

 僕・・・ではない、俺と山伏のメールのやりとりは、それから順調に進んでいった。そしてまるでチャットのように、マメにやりとりをするうちに、俺達はまるで友達であるかのように、段々と色々な話をするようになっていった。
 今となっては、互いの好物や好きな色(何でそんなものまで・・・。)まで知るようになっており、その後俺は心をみっしりと固めた。
 そして決意を胸に、彼に、
『相談に乗って欲しいです。』
 と、大雑把に言えばそういった内容のメールを彼に送ると、彼から、
『多少お金は頂くが、喜んで相談に乗らせてもらいます。』
 といった内容のメールが届き、やっと俺は山伏と、実際に会って話をしてみる事になったのである・・・!
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