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9.リフレイン
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遊歩道の曲がり角を曲がって、自分達の姿が隠れたところで、私は母から手を放し、また元のペースで歩き始めた。辺りの緑が目に優しく染み渡る。母は軽やかに歩きながら、嬉しそうに言った。
「高木さん、私のことをいい人だって言っていたわ」
「うん」
「私って、いい人だったのね」
「……お母さん」
「あら、何?」
「いい人って何?」
「うーん、性格が良い人ってことかしら」
「その性格の良い人に、どうして私はこんなに苦しめられたの」
「道子」
「お母さんが正義なら、私は悪で、消えるべき存在なの」
「そんなに気にしちゃだめよ。心によくないわ」
「お母さんと生きた二十五年が、私は本当に辛かった―」
そう言うと自然に涙が溢れてきそうになった。母はただ私を見ていた。悲しみも苦しみも迷いもない瞳で―。私は母から目を逸らし、黙って道を歩き続けた。
「高木さん、私のことをいい人だって言っていたわ」
「うん」
「私って、いい人だったのね」
「……お母さん」
「あら、何?」
「いい人って何?」
「うーん、性格が良い人ってことかしら」
「その性格の良い人に、どうして私はこんなに苦しめられたの」
「道子」
「お母さんが正義なら、私は悪で、消えるべき存在なの」
「そんなに気にしちゃだめよ。心によくないわ」
「お母さんと生きた二十五年が、私は本当に辛かった―」
そう言うと自然に涙が溢れてきそうになった。母はただ私を見ていた。悲しみも苦しみも迷いもない瞳で―。私は母から目を逸らし、黙って道を歩き続けた。
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