明かり

桃青

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 楽しくも緩やかな時間はあっという間に過ぎて、正紀との動物園デートを終えた私は、ハッピーな気分で自宅へと帰ってきました。
 玄関から家に上がって、クローゼットの前で部屋着に着替えを済ませた後、私はもうすっかり日の落ちた窓の外の景色を、しばらく眺めていました。そして次第に闇に閉ざされていく光景を見つめながら、
(この暗闇が迫ってくる感じは、何処か私の夢で見た景色と、似ている気がする・・・。)
 と、ふと思ったものです。そして何となく疲れを感じた私は、窓際から離れてカーテンを閉め、ベッドの中に潜り込みました。
(もし、このまま眠ったなら、・・・もしかしたらあの夢の続きが、もう一度見られるかもしれない。)
 私は横になりながらそう考えました。

 正紀とあの夢について詳しく話し合った事で、私の好奇心は高まり、夢の中での私達の行方が、私はより一層知りたくなっていたのです。

 私達は何処へ行くのだろう?

 私はそんな疑問を胸に抱いていました。そしてそんな事を考えつつ、静かに目を閉じると、私は何処か見知らぬ世界へと、深く深く、沈み込んでいったのでした・・・。
 ☆☆☆
 目を開けると、目の前には街灯の明かりで照らされた白い道が、どこまでも続いているのでした。そして空を見上げれば、休むことなく降り積もる牡丹雪が、舞い降りてきて・・・。
「寒い。」
 思わず私はそう呟きました。そして改めて自分の格好を確認してみると、厚手のダッフルコートに、皮で出来たブーツに、物凄く温かいマフラーといった出立ち。

 私は確信しました。
 間違いありません。これは確かに、あの夢の続きなのです。
 … … …
 私はふと自分の隣を見てみると、そこにはやはり正紀がすっと立っていて、手をかざしてどこか先の方を見ていました。
「正紀・・・。」
 思わず私が彼に声を掛けると、正紀は私に向かって頷いてみせて、私の手を取ってから、前に向かって道を歩き始めました。

 私はこの夢の中で、彼と話してみたい事が色々ありました。

 私達は何処へ向かっているの?
 何故、私はこんな夢を見続けているの?
 どうして正紀が、いつも私の側にいるの?

 その理由について、彼に問い質してみたかったのです。他にももっともっと、普段は聞けなかったようなことまで、聞いてみたい気がする。・・・この夢の中だったら、何だか何でも聞ける気がする。

 でも不思議です。
どんなにそれらの思いを言葉にしようとしてみても、何故かそれは形にならずに、どこか彼方へと消えていってしまいます。

私はもっと何か、正紀に伝えなくてはいけない大切な事がある気がする。なのに、どうしてもそれが上手く伝えられない。

―その時に沸き起こる、このもどかしい思い。

「おや、あれは何だろう?」
 正紀の声で、私は現に返りました。そして正紀が目を凝らしている前方を見てみると・・・。

なるほど、確かにそこに何かがいました。しかもそれは素性の知れない様々な生き物の集団で、どこか不気味な様子でウゴウゴと蠢いているのでした。
そして私達が段々とその集まりに近づいていくと・・・。

やっと正体が判明しました。
百鬼夜行とは正にこのこと。
それはなんと、様々な姿形をした妖怪たちの集まりだったのです!
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