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エピローグの終わり
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「ただいま~」
そう言いながら、玄関のランプをつけて、部屋の中に入り、リビングの明かりをつけた。さっさと部屋着に着替え、冷蔵庫から冷えたペットボトルのドリンクを取り出し、椅子にどすっと座り、パソコンの電源を入れて、立ち上がるのを大人しく待った。
「私のブログ、私のブログ……」
そう言いながら、ネットで自分のページを開き、冷静に自分がアップしたものを、批評してみることにした。
「このブログに、どういう需要があるんだろう……」
最初の投稿は変な形の雲の写真で、サボテンに見えると自分では書いていたが、改めて見れば、そう言うにはかなりの無理があった。
「我ながら、むちゃくちゃだな……」
そう言いつつ、一枚ずつ丁寧に、次から次へと写真を見ていく。面白いもの、変なもの、たまにキレイなもの、詩的な写真の世界とでも言おうか、独特で、味のある私の世界が展開されていて、これはこれで悪くないんじゃ、と自分を褒めそうになったが、他人が見て楽しめるものかどうかは、最後まで疑問符のままだった。
(川村さん、この写真のどこを、面白いと思ったのだろう)
そう考えたが、他人の心なぞ、決して分かるものではない。周りを気にせず、自分の道を行くことに集中しろ。そう考えて生きてゆくのが正解、と、ある占い師が言っていたことを自然に思い出した。
(どのみち、今となっては彼の心を知る術もないし)
そう心でぼやきつつ、私は時間をかけて、最後まで写真を見てから、管理画面に飛んだ。ボタンを押すと、
『このブログを削除しますか? 』
というメッセージが画面に表示され、私は少しためらってから、
『はい』
のボタンを静かに押した。そして一瞬にして、私の存在はネット上から、消えてしまったのである。
(結局、ただの憂さ晴らしだったのかもしれない)
私は電源を落とした真っ黒のパソコン画面を眺めながら、思った。写真をアップしたのも、川村さんに会ったのも、もやもやした心のごみ箱として、利用しようとした―。そんな私の本心に気付いてしまった。
なんと不毛なんだろう。
しみじみとそう思った。
いつまでもこのままではいけない。不毛のままで、終わらせてしまってはいけない。
「写真を幸せにしよう」
そう言って立ち上がると、私はこの間、友ちんと楽しく整理した写真を見るために、アルバムを取りにいったのだった。
そう言いながら、玄関のランプをつけて、部屋の中に入り、リビングの明かりをつけた。さっさと部屋着に着替え、冷蔵庫から冷えたペットボトルのドリンクを取り出し、椅子にどすっと座り、パソコンの電源を入れて、立ち上がるのを大人しく待った。
「私のブログ、私のブログ……」
そう言いながら、ネットで自分のページを開き、冷静に自分がアップしたものを、批評してみることにした。
「このブログに、どういう需要があるんだろう……」
最初の投稿は変な形の雲の写真で、サボテンに見えると自分では書いていたが、改めて見れば、そう言うにはかなりの無理があった。
「我ながら、むちゃくちゃだな……」
そう言いつつ、一枚ずつ丁寧に、次から次へと写真を見ていく。面白いもの、変なもの、たまにキレイなもの、詩的な写真の世界とでも言おうか、独特で、味のある私の世界が展開されていて、これはこれで悪くないんじゃ、と自分を褒めそうになったが、他人が見て楽しめるものかどうかは、最後まで疑問符のままだった。
(川村さん、この写真のどこを、面白いと思ったのだろう)
そう考えたが、他人の心なぞ、決して分かるものではない。周りを気にせず、自分の道を行くことに集中しろ。そう考えて生きてゆくのが正解、と、ある占い師が言っていたことを自然に思い出した。
(どのみち、今となっては彼の心を知る術もないし)
そう心でぼやきつつ、私は時間をかけて、最後まで写真を見てから、管理画面に飛んだ。ボタンを押すと、
『このブログを削除しますか? 』
というメッセージが画面に表示され、私は少しためらってから、
『はい』
のボタンを静かに押した。そして一瞬にして、私の存在はネット上から、消えてしまったのである。
(結局、ただの憂さ晴らしだったのかもしれない)
私は電源を落とした真っ黒のパソコン画面を眺めながら、思った。写真をアップしたのも、川村さんに会ったのも、もやもやした心のごみ箱として、利用しようとした―。そんな私の本心に気付いてしまった。
なんと不毛なんだろう。
しみじみとそう思った。
いつまでもこのままではいけない。不毛のままで、終わらせてしまってはいけない。
「写真を幸せにしよう」
そう言って立ち上がると、私はこの間、友ちんと楽しく整理した写真を見るために、アルバムを取りにいったのだった。
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