buroguのセカイ

桃青

文字の大きさ
上 下
41 / 48

39.

しおりを挟む
「私の、何がいいのですか」
「一緒にいて、普通に楽しいし、話も合うしさ。だから気の合う所かな、一言でいえば」
「私、川村さんと最初に出会った時は、本当に楽しかったです。写真や、色々なことを、ディープに話せたし。そういうことを話せる友達って、案外いないものですよね? 」
「まあ、そうだね」
「でも、ぶっちゃけて言うと、付き合うのは気が重く……」
「エ、俺が重いの? 」
「いや、別の言い方をするなら。付き合うことに、乗り気になれない」
「言葉が心に刺さるけど、なら、俺も思ったことを言うよ。美里さんは男が怖い? 」
「え? 」
「初めて会ったときは、友達感覚な関係だったから、楽しかったのだろうけれど、俺が『男』を出した途端、急に逃げ腰になった気がしていた」
「そうかも……しれないですね」
「いつまでもそれだと、いけないんじゃないの。だから俺との付き合いで、男を受け入れる練習をすればいい。これってかなりジェントルな提案だと思うけれど」
「そんな、……そんな付き合い方をされてもいいんですか? まるで自分が利用されるみたいな……」
「別にいいさ。俺は今、他に好きな人もいないし、婚活でもしない限り、新たな恋人が現れる予定もないしさ」
「そう、ですね。ならば、お言葉に甘えるなら―」
「そろそろ場所を変えようか。話したいことは話したし、街をうろついてみたくなってきた」
「なら、行きましょうか。と言っても、どこへ? 」
「とりあえず駅へ向かおう」
 私達は腰を上げて、ふっと見つめ合ってから、公園の出口に向かい、再び林の中の小道をウロウロし始めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ぼくはヒューマノイド

桃青
現代文学
自分は人間だと思っていたのに、実はロボットだった……。人間になれないロボットの心の葛藤が、固めに、やや哲学的に語られていきます。SF色は強くなく、純粋で真摯な話です。ほぼ朝にアップします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

六華 snow crystal 5

なごみ
現代文学
雪の街、札幌を舞台にした医療系純愛小説。part 5 沖縄で娘を産んだ有紀が札幌に戻ってきた。娘の名前は美冬。 雪のかけらみたいに綺麗な子。 修二さんにひと目でいいから見せてあげたいな。だけどそれは、許されないことだよね。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

遅れてきた先生

kitamitio
現代文学
中学校の卒業が義務教育を終えるということにはどんな意味があるのだろう。 大学を卒業したが教員採用試験に合格できないまま、何年もの間臨時採用教師として中学校に勤務する北田道生。「正規」の先生たち以上にいろんな学校のいろんな先生達や、いろんな生徒達に接することで見えてきた「中学校のあるべき姿」に思いを深めていく主人公の生き方を描いています。

泥に咲く花

臣桜
現代文学
裕福な環境に生まれ何不自由なく育った時坂忠臣(ときさかただおみ)。が、彼は致命的な味覚障碍を患っていた。そんな彼の前に現れたのは、小さな少女二人を連れた春の化身のような女性、佐咲桜(ささきさくら)。 何にも執着できずモノクロの世界に暮らしていた忠臣に、桜の存在は色と光、そして恋を教えてくれた。何者にも汚されていない綺麗な存在に思える桜に忠臣は恋をし、そして彼女の中に眠っているかもしれないドロドロとした人としての泥を求め始めた。 美しく完璧であるように見える二人の美男美女の心の底にある、人の泥とは。 ※ 表紙はニジジャーニーで生成しました

処理中です...