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「何となく行きたい場所ってことで、函館と小樽を行き先に選んでしまったけれど、函館から小樽まで、俺、電車で行ったの。それが凄く時間がかかってしまって。ま、楽しかったからいいけどね。道民の方たちの雰囲気が伝わってくるし、窓の外で移り変わる景色も、明らかに本州と空気感が違うんだよな。ずっと見ていても、全然飽きなくてさ」
「なんか、いいな」
「ん? 」
「旅っていいものですよね。私も行きたい」
「今度、一緒に行こうか」
「そう……ですね」
「旅の写真を見る? ちゃんと持ってきたんだよ」
「あ、見たいです」
「良いのだけ選んできたんだ。……はい、これ」
「えーと。多分、これが函館でしょう? レンガ何とか……」
「レンガ倉庫ね。おみやげ屋さんがぎっしり入っていた」
「そうなんだ。こちらは西洋風の奇麗な建物ですが……」
「教会群ね。ずらーっと、教会が建つ通りがあるの」
そんな感じで、私と川村さんは時間をかけて、旅の話をした。コーヒーを飲みつつ、想像を巡らせ、川村さんが楽しげに話す横顔を、話を聞きながら眺めていた。面白いし、楽しい時間だったけれど、話の途中で、ある思いが頭を占めだして、しばらくして話が落ち着いたときに、私は突然こう言った。
「川村さん」
「うん、何? 」
「私、ブログをやめようと思っています」
「―え。本当に? 突然の告白でびっくりしたけれど」
「ごめんなさい、唐突で。でも今日お会いできたらその話をしようと、何となく思っていました」
「何か理由でもあるの? 変なコメントでも来たとか」
「変なコメントが来るほど、人気のブログでもないですよ。そうだな、……違和感を感じるようになったんです、ブログを書くことに。何か違うという思いが、どうにもならない程に育ってしまい……」
「違和感って、ブログが楽しくないとか、そういうことではないの? 」
「違うと思います。私のブログとの関わり方の問題かもしれません。自分がやっていることが、どこへ向かおうとしているのか、見失ってしまった。そういう感じ」
「なら、やり方を変えればいいんじゃない? 方向性を変えて、新たなブログを始めるとかさ」
「でも、今はやりたくないんです。理由はきっと、根が深い。そんな気がする」
「そうか。残念な気もするけれど、それが自分の意志なら、仕方がないね。今すぐやめるの? 」
「自分の中でけりがついた時点で。そう考えています」
「ま、ブログがなくなっても、俺らの関係は続くんだろう? 」
「そう、ですね。あの、川村さんは、私のことが好きですか? あけすけですけれど」
「うん。だから付き合っているんでしょう」
「なんか、いいな」
「ん? 」
「旅っていいものですよね。私も行きたい」
「今度、一緒に行こうか」
「そう……ですね」
「旅の写真を見る? ちゃんと持ってきたんだよ」
「あ、見たいです」
「良いのだけ選んできたんだ。……はい、これ」
「えーと。多分、これが函館でしょう? レンガ何とか……」
「レンガ倉庫ね。おみやげ屋さんがぎっしり入っていた」
「そうなんだ。こちらは西洋風の奇麗な建物ですが……」
「教会群ね。ずらーっと、教会が建つ通りがあるの」
そんな感じで、私と川村さんは時間をかけて、旅の話をした。コーヒーを飲みつつ、想像を巡らせ、川村さんが楽しげに話す横顔を、話を聞きながら眺めていた。面白いし、楽しい時間だったけれど、話の途中で、ある思いが頭を占めだして、しばらくして話が落ち着いたときに、私は突然こう言った。
「川村さん」
「うん、何? 」
「私、ブログをやめようと思っています」
「―え。本当に? 突然の告白でびっくりしたけれど」
「ごめんなさい、唐突で。でも今日お会いできたらその話をしようと、何となく思っていました」
「何か理由でもあるの? 変なコメントでも来たとか」
「変なコメントが来るほど、人気のブログでもないですよ。そうだな、……違和感を感じるようになったんです、ブログを書くことに。何か違うという思いが、どうにもならない程に育ってしまい……」
「違和感って、ブログが楽しくないとか、そういうことではないの? 」
「違うと思います。私のブログとの関わり方の問題かもしれません。自分がやっていることが、どこへ向かおうとしているのか、見失ってしまった。そういう感じ」
「なら、やり方を変えればいいんじゃない? 方向性を変えて、新たなブログを始めるとかさ」
「でも、今はやりたくないんです。理由はきっと、根が深い。そんな気がする」
「そうか。残念な気もするけれど、それが自分の意志なら、仕方がないね。今すぐやめるの? 」
「自分の中でけりがついた時点で。そう考えています」
「ま、ブログがなくなっても、俺らの関係は続くんだろう? 」
「そう、ですね。あの、川村さんは、私のことが好きですか? あけすけですけれど」
「うん。だから付き合っているんでしょう」
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