buroguのセカイ

桃青

文字の大きさ
上 下
37 / 48

35.

しおりを挟む
 自分がブログをやっている意味を、一瞬見失いそうになった。
 SNSをお金に繋げることは、バーチャルな自分を売りつけることで、自分自身がリアルになることは決してできない。虚像と実像のなんとも悲しいすれ違いが、そこにはある。SNSというものを、金稼ぎ、もしくは承認欲求のツールとして利用すると、割り切れればいいだろうが、行いに現実感が伴わないことに変わりはない。その上で―。
 各々がどうネットと付き合いますか。
 そう考えるべきかもしれない。
 ネット環境が世界中で整いつつある中で、誰もが自分自身に問わなければならないテーマではないだろうか。

 しつこく公園内を練り歩き、写真をバシバシ撮り、心が満たされたと感じてから、家に帰ってきた私は、さっさと部屋着に着替えて、帰り道にカメラ屋でプリントした写真を、一枚ずつ、穴が開くほど丁寧に見ていった。鮮やかな色彩と、光と影。奇麗で、リアルにフェイクがほんのりと混ざった世界観。
「この感じが、好きなんだよなあ。ちょっと世俗から浮遊している感じが」
 プロの写真家の写真展を、過去に何回も見に行ったことがあるが、私が好きになるタイプの写真は、シンプルなメッセージを送ってくる作品たちだった。ポン、とメッセージを投げかけられて、あっ、そっか、と自分が悟れる写真。それが私とベストな関係にある写真だと思っている。
 自分の写真を見続けた後、無性にネットの世界に触れたくなって、今度はスマホでニュースを読み始めた。私はテレビのニュースより、ネットのニュースの方が面白いと感じるのだけれど、それはもしかしたら、ネットのニュースの怪しさに惹かれているだけかもしれない。本当かなあ、嘘かなあ、と疑いながら読むのが、楽しくもあり、時に私をうんざりさせる。どこまで行っても胡散臭い情報。それを面白いととるか、怪しいものとして却下するか。私は多分、面白いと受け取っているのだろう。胡散臭さはネットにつきものだけれど、果てがない、いや、果てがないように感じるのも、ネットの特徴であり、きっと私はそこを楽しいと思っている。

 私は微かに迷い始めていた。ブログを続けるか、否か。ネットの外面を眺めている分には気楽なものだ。でも自分が発信者の側に立つと、訳の分からないものにぐるぐる巻きこまれてゆく。そんな気がして、怖い気すらしてくるようになっていた。私は巨大すぎるデーターバンクを前に、立ち位置を見失い始めている気がした。扱い方が、分からなくなりつつあったのだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ぼくはヒューマノイド

桃青
現代文学
自分は人間だと思っていたのに、実はロボットだった……。人間になれないロボットの心の葛藤が、固めに、やや哲学的に語られていきます。SF色は強くなく、純粋で真摯な話です。ほぼ朝にアップします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

六華 snow crystal 5

なごみ
現代文学
雪の街、札幌を舞台にした医療系純愛小説。part 5 沖縄で娘を産んだ有紀が札幌に戻ってきた。娘の名前は美冬。 雪のかけらみたいに綺麗な子。 修二さんにひと目でいいから見せてあげたいな。だけどそれは、許されないことだよね。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

遅れてきた先生

kitamitio
現代文学
中学校の卒業が義務教育を終えるということにはどんな意味があるのだろう。 大学を卒業したが教員採用試験に合格できないまま、何年もの間臨時採用教師として中学校に勤務する北田道生。「正規」の先生たち以上にいろんな学校のいろんな先生達や、いろんな生徒達に接することで見えてきた「中学校のあるべき姿」に思いを深めていく主人公の生き方を描いています。

泥に咲く花

臣桜
現代文学
裕福な環境に生まれ何不自由なく育った時坂忠臣(ときさかただおみ)。が、彼は致命的な味覚障碍を患っていた。そんな彼の前に現れたのは、小さな少女二人を連れた春の化身のような女性、佐咲桜(ささきさくら)。 何にも執着できずモノクロの世界に暮らしていた忠臣に、桜の存在は色と光、そして恋を教えてくれた。何者にも汚されていない綺麗な存在に思える桜に忠臣は恋をし、そして彼女の中に眠っているかもしれないドロドロとした人としての泥を求め始めた。 美しく完璧であるように見える二人の美男美女の心の底にある、人の泥とは。 ※ 表紙はニジジャーニーで生成しました

処理中です...