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自分がブログをやっている意味を、一瞬見失いそうになった。
SNSをお金に繋げることは、バーチャルな自分を売りつけることで、自分自身がリアルになることは決してできない。虚像と実像のなんとも悲しいすれ違いが、そこにはある。SNSというものを、金稼ぎ、もしくは承認欲求のツールとして利用すると、割り切れればいいだろうが、行いに現実感が伴わないことに変わりはない。その上で―。
各々がどうネットと付き合いますか。
そう考えるべきかもしれない。
ネット環境が世界中で整いつつある中で、誰もが自分自身に問わなければならないテーマではないだろうか。
しつこく公園内を練り歩き、写真をバシバシ撮り、心が満たされたと感じてから、家に帰ってきた私は、さっさと部屋着に着替えて、帰り道にカメラ屋でプリントした写真を、一枚ずつ、穴が開くほど丁寧に見ていった。鮮やかな色彩と、光と影。奇麗で、リアルにフェイクがほんのりと混ざった世界観。
「この感じが、好きなんだよなあ。ちょっと世俗から浮遊している感じが」
プロの写真家の写真展を、過去に何回も見に行ったことがあるが、私が好きになるタイプの写真は、シンプルなメッセージを送ってくる作品たちだった。ポン、とメッセージを投げかけられて、あっ、そっか、と自分が悟れる写真。それが私とベストな関係にある写真だと思っている。
自分の写真を見続けた後、無性にネットの世界に触れたくなって、今度はスマホでニュースを読み始めた。私はテレビのニュースより、ネットのニュースの方が面白いと感じるのだけれど、それはもしかしたら、ネットのニュースの怪しさに惹かれているだけかもしれない。本当かなあ、嘘かなあ、と疑いながら読むのが、楽しくもあり、時に私をうんざりさせる。どこまで行っても胡散臭い情報。それを面白いととるか、怪しいものとして却下するか。私は多分、面白いと受け取っているのだろう。胡散臭さはネットにつきものだけれど、果てがない、いや、果てがないように感じるのも、ネットの特徴であり、きっと私はそこを楽しいと思っている。
私は微かに迷い始めていた。ブログを続けるか、否か。ネットの外面を眺めている分には気楽なものだ。でも自分が発信者の側に立つと、訳の分からないものにぐるぐる巻きこまれてゆく。そんな気がして、怖い気すらしてくるようになっていた。私は巨大すぎるデーターバンクを前に、立ち位置を見失い始めている気がした。扱い方が、分からなくなりつつあったのだ。
SNSをお金に繋げることは、バーチャルな自分を売りつけることで、自分自身がリアルになることは決してできない。虚像と実像のなんとも悲しいすれ違いが、そこにはある。SNSというものを、金稼ぎ、もしくは承認欲求のツールとして利用すると、割り切れればいいだろうが、行いに現実感が伴わないことに変わりはない。その上で―。
各々がどうネットと付き合いますか。
そう考えるべきかもしれない。
ネット環境が世界中で整いつつある中で、誰もが自分自身に問わなければならないテーマではないだろうか。
しつこく公園内を練り歩き、写真をバシバシ撮り、心が満たされたと感じてから、家に帰ってきた私は、さっさと部屋着に着替えて、帰り道にカメラ屋でプリントした写真を、一枚ずつ、穴が開くほど丁寧に見ていった。鮮やかな色彩と、光と影。奇麗で、リアルにフェイクがほんのりと混ざった世界観。
「この感じが、好きなんだよなあ。ちょっと世俗から浮遊している感じが」
プロの写真家の写真展を、過去に何回も見に行ったことがあるが、私が好きになるタイプの写真は、シンプルなメッセージを送ってくる作品たちだった。ポン、とメッセージを投げかけられて、あっ、そっか、と自分が悟れる写真。それが私とベストな関係にある写真だと思っている。
自分の写真を見続けた後、無性にネットの世界に触れたくなって、今度はスマホでニュースを読み始めた。私はテレビのニュースより、ネットのニュースの方が面白いと感じるのだけれど、それはもしかしたら、ネットのニュースの怪しさに惹かれているだけかもしれない。本当かなあ、嘘かなあ、と疑いながら読むのが、楽しくもあり、時に私をうんざりさせる。どこまで行っても胡散臭い情報。それを面白いととるか、怪しいものとして却下するか。私は多分、面白いと受け取っているのだろう。胡散臭さはネットにつきものだけれど、果てがない、いや、果てがないように感じるのも、ネットの特徴であり、きっと私はそこを楽しいと思っている。
私は微かに迷い始めていた。ブログを続けるか、否か。ネットの外面を眺めている分には気楽なものだ。でも自分が発信者の側に立つと、訳の分からないものにぐるぐる巻きこまれてゆく。そんな気がして、怖い気すらしてくるようになっていた。私は巨大すぎるデーターバンクを前に、立ち位置を見失い始めている気がした。扱い方が、分からなくなりつつあったのだ。
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