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川村さんから電話があったのは、突然の告白から二週間が経った日のことだった。その間、私は彼について落ち着いて考えることができたので、ブランクがあったことがありがたかった。夜中に電話に出て、彼の声を聞いたとき、意外にも私はほっとした。
「川村さん? 」
「うん、そう。美里さんはどう? 相変わらず? 」
「ええ、元気です。どうかされました? 」
「デートのお誘い……」
「はい」
「ではなくて。ちょっと話してみたくなった」
「思春期の女の子みたいですね」
「はは。明日から少しだけ休みをもらったんだ。といっても一日だけどね」
「でも今日が木曜日で、金、土、日、と続きますから、三連休になりますよ」
「そう。俺、旅に出るんだ」
「旅? 一人で? 」
「うん。ふら~っと、自由に写真を撮ってみたくなって」
「それをブログに載せるわけですか? 」
「いや、載せない。載せたくないんだ。近頃ブログに、ちょっと疲れているの」
「ブログでは、そんな気配はなかったけれど―」
「ブログをやっているとさ、常に写真を撮るとき、これはブログに使えるか、使えないかという考えが、よぎったりしない? 」
「まあ、そうですね」
「それが邪魔だと感じるようになってさ。趣味の写真が、自分のためのものと思えなくなってきてしまって」
「ブログのため、では楽しくないと? 」
「楽しかったよ。始めはね。でも人の目を気にしない、自分のやりたいようにやる写真を、今は撮りたい。そのためにはブログの存在を切り離さないと」
「それは……、自由になりたいってことなのかな」
「他人の評価からね。対して人気のあるブログでもないけれど、それでも多くの人に見てもらえればという願望はあるから、常に自分の写真を他人の目でジャッジしている。そのことに少し疲れたということだと思うな」
「本当に写真が好きだからこその悩みかもしれないですね」
「それから、純粋に旅もしたくてさ。俺、一人で知らない街を歩くのが大好きなんだよ。今回の旅はそれが第一目的で、写真はサブ。と言っても、結局は写真を沢山撮ってしまうんだろうなあ」
「どちらへ行かれるんですか? 」
「北海道。の、小樽と函館」
「写真的にバエそうな所ですね~。私は川村さんの撮った写真を見たいけれど。でもネットでは見られないんですよね」
「見せようか? 」
「えっ」
「川村さん? 」
「うん、そう。美里さんはどう? 相変わらず? 」
「ええ、元気です。どうかされました? 」
「デートのお誘い……」
「はい」
「ではなくて。ちょっと話してみたくなった」
「思春期の女の子みたいですね」
「はは。明日から少しだけ休みをもらったんだ。といっても一日だけどね」
「でも今日が木曜日で、金、土、日、と続きますから、三連休になりますよ」
「そう。俺、旅に出るんだ」
「旅? 一人で? 」
「うん。ふら~っと、自由に写真を撮ってみたくなって」
「それをブログに載せるわけですか? 」
「いや、載せない。載せたくないんだ。近頃ブログに、ちょっと疲れているの」
「ブログでは、そんな気配はなかったけれど―」
「ブログをやっているとさ、常に写真を撮るとき、これはブログに使えるか、使えないかという考えが、よぎったりしない? 」
「まあ、そうですね」
「それが邪魔だと感じるようになってさ。趣味の写真が、自分のためのものと思えなくなってきてしまって」
「ブログのため、では楽しくないと? 」
「楽しかったよ。始めはね。でも人の目を気にしない、自分のやりたいようにやる写真を、今は撮りたい。そのためにはブログの存在を切り離さないと」
「それは……、自由になりたいってことなのかな」
「他人の評価からね。対して人気のあるブログでもないけれど、それでも多くの人に見てもらえればという願望はあるから、常に自分の写真を他人の目でジャッジしている。そのことに少し疲れたということだと思うな」
「本当に写真が好きだからこその悩みかもしれないですね」
「それから、純粋に旅もしたくてさ。俺、一人で知らない街を歩くのが大好きなんだよ。今回の旅はそれが第一目的で、写真はサブ。と言っても、結局は写真を沢山撮ってしまうんだろうなあ」
「どちらへ行かれるんですか? 」
「北海道。の、小樽と函館」
「写真的にバエそうな所ですね~。私は川村さんの撮った写真を見たいけれど。でもネットでは見られないんですよね」
「見せようか? 」
「えっ」
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