buroguのセカイ

桃青

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16.

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『こんばんは。今、何をしていますか。きっきさんの新しいブログの写真を見ました』
 メッセージを書き終えると、スマホを側に置いて、しばらくパソコンをいじくっていたが、十数分経った頃、着信音が鳴り響いた。スマホを確認すると、きっきさんからのメッセージがこう書き込まれていた。
『こんばんは。僕は風呂から上がって、髪を乾かしていた所。僕の写真はどうだった? 』
 私は嬉しくなって、返信した。
『良い写真でした。どの写真にも情緒があり、しんみりと伝わるものがあります』
 返信はすぐ来た。
『ありがとう。僕にとってかなりの誉め言葉だね』
 それからしばらく、きっきさんとのやりとりが続いた。
『私が今日アップした写真はどうですか。良ければ感想を聞かせてください』
『今、見たよ。僕のツボが押されて、少し笑ってしまった』
『きっきさんの写真はいつ撮ったのですか? 写真を撮りに行くのは、大変ではないですか? 』
『アップしたのは、かなり前に撮ったものだよ。五年くらい昔のものだと思う。写真は僕にとって趣味であり、楽しみたいものだから、心や体に無理をして、写真を撮りに行くようなことはしない』
『つまり、ブログは大変ではない……?』
『う……ん。大変ではないけれど、時々やめようかと思うことはあるな』
『それはなぜ』
『意味のないことをやっている気になることがあるんだ。虚しさというのか』
『虚しさ、ですか』
『自分の中にいつしか存在していた「穴」みたいなものを埋めるために、ブログを始めたという、一つの理由があるのだけれども、ブログのせいで、却って穴が際立ってきたような気がする』
『それは、人が沢山来るようになれば、虚しさがなくなり、満足できるようになる? 』
『どうだろう。有名なブロガーになったら、使命感は生まれてくるかもしれない。ただそれが、心の穴埋めに役立つかどうかは分からないな』
『良い写真や、面白い写真が撮れた時、自分だけで見ているのがつまらないと感じることがありますよね』
『あるね』
『だから、私も、きっきさんも、ブログにアップしているのだと思います。始まりはそんなシンプルな気持ちだったと思うのです』
『そうかもしれない』
『ブログにアップすれば、みんなとこの気持ちを共有できる! そう思って始めた。だけど結果は……、違うんですよね』
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