buroguのセカイ

桃青

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 友ちんは私の許可を貰いながら、自分が貰う写真の小山を作りつつ、いらなくなった写真の整理をしてくれた。私は、本当のお供とは何だと、哲学的に自分に問いつつ、心から必要と思える写真だけを抜き出して、どんどんまとめていった。友ちんと時々写真について話しながら、気付いた時にはすでに三時間の時が流れており、私は手に持っていたアルバムをどさっと、いらないアルバムの山の上に置いて、ふうと息を吐いて言った。
「これで最後です。断捨離終了」
「本当に? ひゃー。思った以上に疲れた」
「大した労働でもないのに、断捨離ってどうしてこう、疲れるんだろう」
「何かが、フル回転しているのだと思うよ。目には見えないけれど、必死な戦いが行われている気がする」
「あああ、もう自分の写真なんて見たくもない! 」
「美里、この写真を頂いていくね。家に帰って、写真を整理するのが楽しみだ」
「貰ってくれてありがとう。友ちんのおかげで、楽しく整理できたよ」
「……。写真の画像データも、取っておいてあるのでしょう? 」
「うん、USBの方に。全く整理していないし、見返すこともめったにないけれど」
「なのに、どうしてプリントするの? データだけの方が、全然場所を取らないじゃない」
「それはね、うまく言えないんだけどね、私が古い人間だからか、リアルに写真に触れたいという思いがある。思いというより、欲望というべきか」
「―欲望? 」
「例えば、美しい宝石の写真があったとするね。すんごく奇麗な、芸術品のようによく撮れている写真が」
「うん」
「でも、写真じゃなくて、人は本物の、写真に写っているリアルな宝石を求めるでしょう? そして、触って、飾って、楽しみたい。それと似た感じかな」
「つまり美里にとって、プリントした写真がリアルな宝石のようなものなのか」
「多分。時々思うよ、奇麗な色彩と素敵な思い出がギュッと詰まった写真は、まるで本当の宝石みたいだって。ま、嫌な思い出がこもった写真もそれなりにあるわけですが、それはそれで存在意義がある」
「美里。ブログをやっていて、楽しい? 」
「何を急に」
「美里がやっている写真主体のブログはさあ、どこかサブカルの匂いがするじゃない。写真も美しさより、面白さが大事だよね」
「ま、面白いというか、時に残酷」
「だからこうやって、奇麗なものをすくって集めた写真達を、大切にしている美里を見るとさ……。ブログの写真は大切に扱われていないなと、何となく思ったんだよね。写真が不幸というか」
「写真の幸、不幸まで考えろと? 」
「そういうわけでもないんだけど」
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