buroguのセカイ

桃青

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「もし、よければ」
「うん? 」
「また、お会いできませんか。また写真を撮ったり、お話したりしませんか? 」
「女性の方からのお誘いかい? 」
「そっ、そういうわけでもないのだけど。ブログについてお話しするのが、とても楽しかったんです」
「嬉しいね。なら、また会おうか。詳しいことは、メールでやりとりしよう。それでいいかな? 」
「分かりました」
「ここのコーヒー、うまいね。おかわりして、もうちょっと話していかないか? 」
「ぜひ。そうしましょう」

 それからきっきさんとシンシン、つまり私は、色々な話をした。自分自身について話すというより、ブログを通して、社会についての話をよくした。インテリと呼ばれる人々は、膨大なデータを元に、導き出した答えについて話すが、私たちは感性でビビッときたものについて話すので、内容がカラフルで、奇麗で、直接的だった。それが私にはたまらなく面白くもあった。

 コンピューターを操れるようになるためには、信じ難い量のデータと多大の知的な労力が必要だが、人間が何かを導き出すためには、『直感』という方法があり、やることはいたってシンプル、『感じる』だけである。それだけで時として人は、行動と答えを見つけ出すことができる。
 ITの技術は大きく世の中を動かし、助けてもいるが、多くの人にとってその力は、ツールの域で止まっている。人生を決めるのはまだ、人間の仕事だ。そのために大切なものは感性だと、私は思う。

 普通に考えてみてほしい。データで踊る人生と、感性で踊る人生、どちらが楽しいか? どちらが人間らしいといえるのかを。
 あなただったらどちらを選ぶだろう?
 その答えを見失っている人の、なんと多いことか。

 私ときっきさんは、二時間近く話し込んでから、駅まで戻り、お互いに笑顔で別れた。時刻は夜の一歩手前になっていて、駅のホームに立つと、灯りだした街の明かりが目に射し込んでくる。
 なんだか私は幸せだった。この日常はいつまで続くのだろう。私は自分の平凡な毎日を願った後、世界でも日常が続きますようにと、自然に願っていた。仮にデータで骨組みが作られつつあるこの世界が瓦解しても、誰の手元にも感性だけは残る。
 その真実―。
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