buroguのセカイ

桃青

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 私のブログには、毎日五十人から二百五十人程度の人が来る。たま~に、コメントをしてくれる人がいるけれど、ほかのブロガーとの繋がりは皆無だった。自分がしたいことや繋がりたい人達がいて、その目的に沿ってブログを始めたなら、人と知り合っていけるのかもしれないが、私がやっていることは、『ウケる』のさらし首である。誰がそんな人と繋がりたいと思うだろうかと、自分でも思うし、繋がった所で、ダークな話をして、ニヒルに笑うくらいである……。そう思っていた。
 だが、ある日。私にメールでコンタクトをとってきた人がいた。私は心から驚いたが、その人が自分のブログを見てくださいと言うので、見てみたら、スナップ写真を中心にアップする、写真がメインのブログをやっている方だった。
 それをきっかけに、私たちは互いのブログにコメントしあうようになり、さらにメールをやり取りするようになり、さる日、こんなお誘いが来た。
『よかったら、一緒に街に写真を撮りに行きませんか』
 その時には、その人が男性であることも、年齢が三十五歳であることも、工場で働いていることなんかも知っていて、見知らぬ男性と会うのは多少の勇気がいったが、好奇心が勝ち、私はその人と会うことになった。
 場所と日程を調整して、生まれて初めてネットで知り合った人と、対面することになったのである。

 約束の日、駅前にある指定された店の前で待っていると、背後からいきなり、
「シンシンさん? 」
 と、ハンドルネームで呼ばれた。ハッとして振り返ると、すでに送られてきていた見覚えのある顔写真の人物が、そこにいた。私もハンドルネームで訊ねた。
「きっきさん? 」
「そう。自画像、盛っていないんだね。送られた写真のまんまだ」
「きっきさんも。顔を見てすぐ分かりました」
「今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ」
「で、これからどうする? 写真を撮りに行くか、どこかの店にでも入って、話をするか―」
「私達の目的は写真です。だから写真から始めましょう」
「よし、分かった。ならこの街をぶらぶら歩いていくか」
「ええ」
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