buroguのセカイ

桃青

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はじめよう

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 ではブログで何を発信したいのか、というと、ざっくり言えば、『ウケる』を探そうというのが、私の掲げたテーマだった。今の世はどこもかしこもマーケティングで成り立っている。商売もマーケティング、エンターティメントもマーケティング、売れたもん勝ちの世界である。金、金、金、ペイ、ペイ、ペイ、の世界。良心の裏にだって、いつでもベッタリと広告が貼りついているものだ。

 善意だろうと、悪意であろうと、お金に換金できるなら、それは『正しさ』になる。そのことが私達を苦しくさせ、本来の自由を奪っていく。どうしてこんなことになったのか。何がこんな世界にしたのか。
 せめてもの叛意の表れとして、私は敢えて、『ウケる』をコケにしてやろうと思った。ウケることが、世界の覇者になれるチケットにもなる、この時代。だからこそアイロニックに、その揚げ足取りをしようというのが私の考えだ。

 というわけで、始めた動機はブラック、真っ黒なユーモアだったけれど、やってみたら、案外楽しいものだった。毎日『ウケる』探しをやることも、苦痛なぞではなく、十分に面白いことだったし、私は人々の反応をあまり気にすることなく、自分を極めていくことに夢中になった。まるで職人が芸を磨いていくように、自分が『ウケる』について、どんどんセンシティブになっていくのくのが分かった。

 その日、私は開花が始まったソメイヨシノの写真をアップした。誰もがやりそうな普通のことだが、私の黒い心は、この一文を添えることで満足した。
『開花日、三月十日。早すぎるね、異常気象じゃない?』
 私の頭の中では、四月の入学式に、桜がすっかり散った校門の前で、記念写真を撮る新入生の絵が浮かび上がった。きっと残念な写真になってしまうことだろう。

 ブログのアップロードを済ませると、さっさとパソコンの電源を切って、気持ちを切り替え、明日の準備をすることにした。いつもブログを書き終えると、正体のはっきりしない満足感で満たされる。でも本当はー。
 私は泣きたいのかもしれない。
 
 リアルな充足など、何もしていない。だからこれはきっと、本当の幸せではないはずだ。
 フェイクは時に、人を悲しくさせる。

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