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ひろみが奥様に伝えたように、自分探しの旅に出る事に決めた理由の1つは、実は正道の面影に別れを告げるためだった。色々な事を考えてから、ひろみはもしかすると本当に正道様は、私の事が好きなのかもしれないと思ったりもした。でもマーちゃんがそれとなく言ったように、執事である自分と、ご主人様の正道様が結ばれることはないだろうと、ひろみはそう考えていたのである。
ひろみの今の胸の内は苦しかった。特に正道と会った時にさり気ない振りをして、彼と会話を続けるのは辛かった。そして何かを求めるかのように正道の様子を窺ってみても、ひろみと接するときはいつもと変わらず淡々としているので、次第にひろみも正道様が自分の事を好きだなんて思うのは、私の勘違いに過ぎないんだと思うようになっていった。
この苦しい切なさも、正道との別離の悲しさも、彼と離れてしまえば全て、ただの美しい思い出になる。そう思いながらひろみは日々を頑張ってやり過ごしていた。そして時は流れ、正道が家を出ていく日は刻々と近づいてゆき―。
そんな最中、正道との別れの宴は、開かれる事になったのである。
… … …
別れの宴の当日。使用人達は朝から目まぐるしく、パーティの準備に追われていた。進一はパーティの参加者の確認、それから連絡といった事務作業に追われており、家の中を取り仕切る雑事については、ひろみに任せられる所は全て彼女に任せていた。だからひろみも進一の指示通りに家中を飛び回らなくてはならず、責任感と共に、次々に使用人達に命令を出していった。だがこの忙しさはひろみにとって救いであるとも言えた。何故ならそうしていれば正道について、深く悲しく考える暇がなかったからである。
この別れの宴は正道だけではなく、ひろみにとっても早坂家を出てゆく最後の別れの儀式だった。だから思い残すことのないように、ひろみはひとつひとつの思い出を確かめながら、丁寧に仕事をこなしていった。
そして時は流れで午後の7時。ついに宴は始まったのである。
ひろみの今の胸の内は苦しかった。特に正道と会った時にさり気ない振りをして、彼と会話を続けるのは辛かった。そして何かを求めるかのように正道の様子を窺ってみても、ひろみと接するときはいつもと変わらず淡々としているので、次第にひろみも正道様が自分の事を好きだなんて思うのは、私の勘違いに過ぎないんだと思うようになっていった。
この苦しい切なさも、正道との別離の悲しさも、彼と離れてしまえば全て、ただの美しい思い出になる。そう思いながらひろみは日々を頑張ってやり過ごしていた。そして時は流れ、正道が家を出ていく日は刻々と近づいてゆき―。
そんな最中、正道との別れの宴は、開かれる事になったのである。
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別れの宴の当日。使用人達は朝から目まぐるしく、パーティの準備に追われていた。進一はパーティの参加者の確認、それから連絡といった事務作業に追われており、家の中を取り仕切る雑事については、ひろみに任せられる所は全て彼女に任せていた。だからひろみも進一の指示通りに家中を飛び回らなくてはならず、責任感と共に、次々に使用人達に命令を出していった。だがこの忙しさはひろみにとって救いであるとも言えた。何故ならそうしていれば正道について、深く悲しく考える暇がなかったからである。
この別れの宴は正道だけではなく、ひろみにとっても早坂家を出てゆく最後の別れの儀式だった。だから思い残すことのないように、ひろみはひとつひとつの思い出を確かめながら、丁寧に仕事をこなしていった。
そして時は流れで午後の7時。ついに宴は始まったのである。
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