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正道の唐突な爆弾発言から、時は流れ、数日が経って…。 ひろみと正道は正道の部屋で、引っ越しの荷造りを始めていた。正道の部屋の中をいざ開いてみれば、そこは魔の巣窟…、もとい、物の巣窟といった感じで、掘り起こせば掘り起こすほど、ザクザクと色々な物が出てくるのだった。ひろみが正道の部屋を整理していくうちに心に決めたこと、それは、このゴミ…、もとい、必要のない物を、最低でも半分は彼に捨てさせるという事だった。
ひろみは埃の被ったビニール袋を引っ張り出して、中身を確認してから正道に訊ねた。
「正道様、これは…、何でしょう?」
すると正道はひろみの手元を覗き込んで、まじまじとビニール袋の中を見つめると、少年のように目を輝かせて言った。
「ああ、これはフィギィアだよ!」
「ええ、見れば分かります。」
「大昔にチョコエッグっていうお菓子が流行った時があっただろう?その時に夢中になっておまけを集めた物で…、」
「―いりませんね。捨てましょう。」
「いや、ちょっと待ってくれ、それをズームで撮ると、なかなか格好のいい写真が撮れるものなんだ。だから、」
「では、正道様。きちんと冷静に判断して下さいね。今この部屋に散らかっているこれだけの物を…、今度新しく住む部屋へ置けるとお思いですか?」
そう言いながらひろみは、どちゃっとおもちゃ箱をひっくり返したような、この部屋の現状をまざまざと正道に見せつけた。するとさすがの正道も言葉に詰まって、うーむと唸ってから考え考え言った。
「そうだな、…さすがに全部は無理かもしれない。」
ひろみはやれやれといった様子だったが、それから彼に問い質した。
「今度新しく住むお住まいは、どんな所でしょう。もうお決めになられたのですか?」
「うん、不動産や巡りをして、大体の候補は絞り込んであるんだけれど。」
するとひろみはちょっと興味を惹かれた様子で言った。
「どんな建物で、そしてどんなお部屋なのでしょう?」
「ええっと、基本的にマンションタイプで…、で、日当たりのいい2LDKの部屋に住む予定。」
ひろみは首を振り振り言った。
「やっぱり正道様は、お坊ちゃまでいらっしゃいます。普通の若者だったら、大抵は予算の関係で、1Kとか、1LDKの部屋に住むものなんですよ?」
正道はまるで諭すようにそう言うひろみに、抗って言った。
「どうしても2部屋必要な理由があるんだよ、少し考える所があって。…それで。」
「でもこれから先は、そういう我が儘も言えなくなるはずです。どうかその事は覚えておいて下さい、正道様。」
「うん、一応覚悟はしている。」
そして2人は一旦会話を止めて、再び荷物の整理に舞い戻ろうとしたその時。
ノックも声掛けもなく、突然扉がギイイイイッ、と音を立てて開いた。そしてそこにはロマンスグレーで、背の高いダンディな男性が目の前に立ちはだかり、2人を見下ろしていた。
ひろみはしばし目が点になって、その男性をぽかんと見つめていたが、正道が呟いた言葉で、さらにぎょっとした。
「―父さん。」
「父さん?」
ひろみが正道の言葉を繰り返すと、その父さんらしき人物は、渋い声で呟いた。
「久し振りだな、正道。」
どうやら正道も、ひろみに劣らないくらい驚いたらしく、身を乗り出すと、その人に向かって訊ねた。
「仕事は…、どうしたんですか?」
「うむ、ちょっと休みを貰ってきた。ここに座っても構わないか?」
「はい、少し散らかっていますけれど―。」
すると正道の承諾を得たお父様は、辺りに構う事なく、どすん!と正道の広げたファイルの上に、無造作に座り込んだ。それを見て、どうやらあまり小さな事に拘らない人らしいとひろみは思ったが、どうしよう、私がこの場にいていいのだろうか、と考え、オロオロしていると、2人はそんな彼女に構う事なく、真向かいになって対話を始めた。
ひろみは埃の被ったビニール袋を引っ張り出して、中身を確認してから正道に訊ねた。
「正道様、これは…、何でしょう?」
すると正道はひろみの手元を覗き込んで、まじまじとビニール袋の中を見つめると、少年のように目を輝かせて言った。
「ああ、これはフィギィアだよ!」
「ええ、見れば分かります。」
「大昔にチョコエッグっていうお菓子が流行った時があっただろう?その時に夢中になっておまけを集めた物で…、」
「―いりませんね。捨てましょう。」
「いや、ちょっと待ってくれ、それをズームで撮ると、なかなか格好のいい写真が撮れるものなんだ。だから、」
「では、正道様。きちんと冷静に判断して下さいね。今この部屋に散らかっているこれだけの物を…、今度新しく住む部屋へ置けるとお思いですか?」
そう言いながらひろみは、どちゃっとおもちゃ箱をひっくり返したような、この部屋の現状をまざまざと正道に見せつけた。するとさすがの正道も言葉に詰まって、うーむと唸ってから考え考え言った。
「そうだな、…さすがに全部は無理かもしれない。」
ひろみはやれやれといった様子だったが、それから彼に問い質した。
「今度新しく住むお住まいは、どんな所でしょう。もうお決めになられたのですか?」
「うん、不動産や巡りをして、大体の候補は絞り込んであるんだけれど。」
するとひろみはちょっと興味を惹かれた様子で言った。
「どんな建物で、そしてどんなお部屋なのでしょう?」
「ええっと、基本的にマンションタイプで…、で、日当たりのいい2LDKの部屋に住む予定。」
ひろみは首を振り振り言った。
「やっぱり正道様は、お坊ちゃまでいらっしゃいます。普通の若者だったら、大抵は予算の関係で、1Kとか、1LDKの部屋に住むものなんですよ?」
正道はまるで諭すようにそう言うひろみに、抗って言った。
「どうしても2部屋必要な理由があるんだよ、少し考える所があって。…それで。」
「でもこれから先は、そういう我が儘も言えなくなるはずです。どうかその事は覚えておいて下さい、正道様。」
「うん、一応覚悟はしている。」
そして2人は一旦会話を止めて、再び荷物の整理に舞い戻ろうとしたその時。
ノックも声掛けもなく、突然扉がギイイイイッ、と音を立てて開いた。そしてそこにはロマンスグレーで、背の高いダンディな男性が目の前に立ちはだかり、2人を見下ろしていた。
ひろみはしばし目が点になって、その男性をぽかんと見つめていたが、正道が呟いた言葉で、さらにぎょっとした。
「―父さん。」
「父さん?」
ひろみが正道の言葉を繰り返すと、その父さんらしき人物は、渋い声で呟いた。
「久し振りだな、正道。」
どうやら正道も、ひろみに劣らないくらい驚いたらしく、身を乗り出すと、その人に向かって訊ねた。
「仕事は…、どうしたんですか?」
「うむ、ちょっと休みを貰ってきた。ここに座っても構わないか?」
「はい、少し散らかっていますけれど―。」
すると正道の承諾を得たお父様は、辺りに構う事なく、どすん!と正道の広げたファイルの上に、無造作に座り込んだ。それを見て、どうやらあまり小さな事に拘らない人らしいとひろみは思ったが、どうしよう、私がこの場にいていいのだろうか、と考え、オロオロしていると、2人はそんな彼女に構う事なく、真向かいになって対話を始めた。
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