女執事、頑張る

桃青

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 ひろみは執事らしくなく、落ち着かなげにキョロキョロと辺りを見回しながら、自分の身の置き場所を模索していたが、とりあえず正道のすぐ側に立って、正道からいつ指示が出されてもいいようにと、そこで待機する事にした。すると正道が仲間に入っているグループから、こんな会話が聞こえてきた…。
「この間僕が経営を管理した会社の経常利益が、200億出てね。それで…、」
 ひろみはその言葉を聞き、顔ではポーカーフェイスを装いながらも、心の中で叫んだ。
(何とか利益が…、200億円?!)
 すると今度は別の男が喋り出した。
「そういえば俺、この間遺産相続の関係で、…いくらだったかなあ、とにかく数億円、お金が僕の懐に転がり込んできてさ。」
 ひろみはその言葉にぎょっとして、再び心の中で叫んだ。
(相続で転がり込んできたお金が…、数億円?しかもその大金を貰った事を、特に気に留める様子もなく…。)
 すると別の誰かがコロッと話題を変えて、楽し気に話し出した。
「そういえば弘樹の奴、結婚したよね。」
「そうそう。」
「オレ、年賀状でその事を知ったよ。嫁さんとケーキカットしている写真が、でかでかと印刷されていてさ。」
「俺は披露宴に呼ばれたよ。なんていうか、成金趣味的な派手な結婚式だったよな。」
「うん、俺も行った。何しろゴンドラで2人が登場してきて…、」
「アハハハ。でもここだけの話だけれどさ、…あいつの嫁さん、ブサイクだよね。」
「ははは、そうそう。男の恥だよね。」
 するとそこでスッと正道が会話に加わった。
「みんな、もし良かったら、写真を撮らせてもらってもいい?」
 すると誰かが心底呆れた様子で言った。
「え、写真?何だ、正道は相変わらずだよなあ。学生の頃からずっと、写真、写真って、写真ばっかりでさ。」
「俺らなんか日々、社会の中で戦っているというのにね。」
「まあ、好きに撮ればいいんじゃない?どうせ気心の知れた仲間同士なんだし。な?」
「そうそう。そしてどうせならいい写真を撮ってくれよ。」
「分かった。じゃあ遠慮なく。」
 そう言って正道がカメラをいじくり出すと、グループにいる人達は、それぞれに面白いポーズをとり始めた。そんな悪乗りに正道は笑みを浮かべながら、何枚も写真をパシャパシャと、立て続けに撮っていった。その様子を見守っていたひろみは、どうやら自分が写真のアシスタントとして特に必要でない事を確認すると、一旦その場を離れて、船の甲板に出ていったのだった。

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