23 / 38
22.
しおりを挟む
「ほう。それは何かな」
「占いの答えを導き出すときに、迷いが入り込むことがあるんです。この迷いの本質は―、三条さん、分かりますか?」
「三条ではなく、はじめさんと呼んでくれ。そうだな、私は文章を書くにあたって、一つ決めていることがある。それは感じたことを、そのまま書くということだ。多少の脚色はあっても、そこは嘘をつかない。サエさん、もし占い師と作家が、似たものだとするなら、あなたも占いで感じたことを、素直に伝えればいいのではないか」
「初心だ」
「ん?」
「初心ですね。それって、占いの基本なんです。私はそのことを忘れかけていました。最近吸収した様々な理論に、押され気味になって」
「論理は思考を助けるが、人を導くのは感性だ。名言だろう」
「ええ、とっても。きっとその通りですね」
そう言い、私は心からの笑顔になって、はじめさんを見つめました。彼は嬉しそうにして、私を見ていたけれど、突然目が泳ぎだし、挙動不審になり、また私を見つめ、それから不思議な表情を浮かべている私に、ぼそぼそと言いました。
「サ、サ、サエさん、また会おう」
「は。占いで、ですか?」
「いや、そうじゃなくって。これは、ええと、何だ、うまく言えないが……。
二人で」
「二人で?」
「……デートをしようということだ。僕はもっと、君と会いたい。話をしたいんだ」
「あ、ああ、ぶっちゃけて言えば、お付き合い―」
「そう、そうだ、その通りだ。君の言葉は核心を突いている」
「そういうことなら、―私でよければ。私って、デブでブスだけれど」
「そんなことを言ってはいけない。君は、何というか、面白い存在だ」
「あの、褒めていますか?」
「もちろんそのつもりだが」
私とはじめさんは顔を見合わせ、思わず笑い合いました。
「占いの答えを導き出すときに、迷いが入り込むことがあるんです。この迷いの本質は―、三条さん、分かりますか?」
「三条ではなく、はじめさんと呼んでくれ。そうだな、私は文章を書くにあたって、一つ決めていることがある。それは感じたことを、そのまま書くということだ。多少の脚色はあっても、そこは嘘をつかない。サエさん、もし占い師と作家が、似たものだとするなら、あなたも占いで感じたことを、素直に伝えればいいのではないか」
「初心だ」
「ん?」
「初心ですね。それって、占いの基本なんです。私はそのことを忘れかけていました。最近吸収した様々な理論に、押され気味になって」
「論理は思考を助けるが、人を導くのは感性だ。名言だろう」
「ええ、とっても。きっとその通りですね」
そう言い、私は心からの笑顔になって、はじめさんを見つめました。彼は嬉しそうにして、私を見ていたけれど、突然目が泳ぎだし、挙動不審になり、また私を見つめ、それから不思議な表情を浮かべている私に、ぼそぼそと言いました。
「サ、サ、サエさん、また会おう」
「は。占いで、ですか?」
「いや、そうじゃなくって。これは、ええと、何だ、うまく言えないが……。
二人で」
「二人で?」
「……デートをしようということだ。僕はもっと、君と会いたい。話をしたいんだ」
「あ、ああ、ぶっちゃけて言えば、お付き合い―」
「そう、そうだ、その通りだ。君の言葉は核心を突いている」
「そういうことなら、―私でよければ。私って、デブでブスだけれど」
「そんなことを言ってはいけない。君は、何というか、面白い存在だ」
「あの、褒めていますか?」
「もちろんそのつもりだが」
私とはじめさんは顔を見合わせ、思わず笑い合いました。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
ぼくたちのたぬきち物語
アポロ
ライト文芸
一章にエピソード①〜⑩をまとめました。大人のための童話風ライト文芸として書きましたが、小学生でも読めます。
どの章から読みはじめても大丈夫です。
挿絵はアポロの友人・絵描きのひろ生さん提供。
アポロとたぬきちの見守り隊長、いつもありがとう。
初稿はnoteにて2021年夏〜22年冬、「こたぬきたぬきち、町へゆく」のタイトルで連載していました。
この思い入れのある作品を、全編加筆修正してアルファポリスに投稿します。
🍀一章│①〜⑩のあらすじ🍀
たぬきちは、化け狸の子です。
生まれてはじめて変化の術に成功し、ちょっとおしゃれなかわいい少年にうまく化けました。やったね。
たぬきちは、人生ではじめて山から町へ行くのです。(はい、人生です)
現在行方不明の父さんたぬき・ぽんたから教えてもらった記憶を頼りに、憧れの町の「映画館」を目指します。
さて無事にたどり着けるかどうか。
旅にハプニングはつきものです。
少年たぬきちの小さな冒険を、ぜひ見守ってあげてください。
届けたいのは、ささやかな感動です。
心を込め込め書きました。
あなたにも、届け。
青い死神に似合う服
fig
ライト文芸
テーラー・ヨネに縫えないものはない。
どんな洋服も思いのまま。
だから、いつか必ず縫ってみせる。
愛しい、青い死神に似合う服を。
寺田ヨネは洋館を改装し仕立て屋を営んでいた。テーラー・ヨネの仕立てる服は特別製。どんな願いも叶える力を持つ。
少女のような外見ながら、その腕前は老舗のテーラーと比べても遜色ない。
アシスタントのマチとチャコ、客を紹介してくれるパイロット・ノアの協力を得ながら、ヨネは日々忙しく働いていた。
ある日、ノアの紹介でやってきたのは、若くして命を落としたバレエ・ダンサーの萌衣だった。
彼女の望みは婚約者への復讐。それを叶えるためのロマンチック・チュチュがご所望だった。
依頼の真意がわからずにいたが、次第に彼女が受けた傷、悲しみ、愛を理解していく。
そしてヨネ自身も、過去の愛と向き合うことになる。
ヨネにもかつて、愛した人がいた。遠い遠い昔のことだ。
いつか、その人のために服を縫いたいと夢を見ていた。
まだ、その夢は捨ててはいない。
さよならまでの7日間、ただ君を見ていた
東 里胡
ライト文芸
旧題:君といた夏
第6回ほっこり・じんわり大賞 大賞受賞作品です。皆様、本当にありがとうございました!
斉藤結夏、高校三年生は、お寺の子。
真夏の昼下がり、渋谷の路地裏でナナシのイケメン幽霊に憑りつかれた。
記憶を無くしたイケメン幽霊は、結夏を運命の人だと言う。
彼の未練を探し、成仏させるために奔走する七日間。
幽霊とは思えないほど明るい彼の未練とは一体何?
マキノのカフェ開業奮闘記 ~Café Le Repos~
Repos
ライト文芸
カフェ開業を夢見たマキノが、田舎の古民家を改装して開業する物語。
おいしいご飯がたくさん出てきます。
いろんな人に出会って、気づきがあったり、迷ったり、泣いたり。
助けられたり、恋をしたり。
愛とやさしさののあふれるお話です。
なろうにも投降中
私の主治医さん - 二人と一匹物語 -
鏡野ゆう
ライト文芸
とある病院の救命救急で働いている東出先生の元に運び込まれた急患は何故か川で溺れていた一人と一匹でした。救命救急で働くお医者さんと患者さん、そして小さな子猫の二人と一匹の恋の小話。
【本編完結】【小話】
※小説家になろうでも公開中※
マキノのカフェで、ヒトヤスミ ~Café Le Repos~
Repos
ライト文芸
田舎の古民家を改装し、カフェを開いたマキノの奮闘記。
やさしい旦那様と綴る幸せな結婚生活。
試行錯誤しながら少しずつ充実していくお店。
カフェスタッフ達の喜怒哀楽の出来事。
自分自身も迷ったり戸惑ったりいろんなことがあるけれど、
ごはんをおいしく食べることが幸せの原点だとマキノは信じています。
お店の名前は 『Cafe Le Repos』
“Repos”るぽ とは フランス語で『ひとやすみ』という意味。
ここに訪れた人が、ホッと一息ついて、小さな元気の芽が出るように。
それがマキノの願いなのです。
- - - - - - - - - - - -
このお話は、『Café Le Repos ~マキノのカフェ開業奮闘記~』の続きのお話です。
<なろうに投稿したものを、こちらでリライトしています。>
ハナサクカフェ
あまくに みか
ライト文芸
第2回ライト文芸大賞 家族愛賞いただきました。
カクヨムの方に若干修正したものを載せています
https://kakuyomu.jp/works/16818093077419700039
ハナサクカフェは、赤ちゃん&乳児専用のカフェ。
おばあちゃん店長の櫻子さん、微笑みのハナさん、ちょっと口の悪い田辺のおばちゃんが、お迎えします。
目次
ノイローゼの女
イクメンの男
SNSの女
シングルの女
逃げた女
閑話:死ぬまでに、やりたいこと
月の女神と夜の女王
海獺屋ぼの
ライト文芸
北関東のとある地方都市に住む双子の姉妹の物語。
妹の月姫(ルナ)は父親が経営するコンビニでアルバイトしながら高校に通っていた。彼女は双子の姉に対する強いコンプレックスがあり、それを払拭することがどうしてもできなかった。あるとき、月姫(ルナ)はある兄妹と出会うのだが……。
姉の裏月(ヘカテー)は実家を飛び出してバンド活動に明け暮れていた。クセの強いバンドメンバー、クリスチャンの友人、退学した高校の悪友。そんな個性が強すぎる面々と絡んでいく。ある日彼女のバンド活動にも転機が訪れた……。
月姫(ルナ)と裏月(ヘカテー)の姉妹の物語が各章ごとに交錯し、ある結末へと向かう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる