金サン!

桃青

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「ほう。それは何かな」
「占いの答えを導き出すときに、迷いが入り込むことがあるんです。この迷いの本質は―、三条さん、分かりますか?」
「三条ではなく、はじめさんと呼んでくれ。そうだな、私は文章を書くにあたって、一つ決めていることがある。それは感じたことを、そのまま書くということだ。多少の脚色はあっても、そこは嘘をつかない。サエさん、もし占い師と作家が、似たものだとするなら、あなたも占いで感じたことを、素直に伝えればいいのではないか」
「初心だ」
「ん?」
「初心ですね。それって、占いの基本なんです。私はそのことを忘れかけていました。最近吸収した様々な理論に、押され気味になって」
「論理は思考を助けるが、人を導くのは感性だ。名言だろう」
「ええ、とっても。きっとその通りですね」
 そう言い、私は心からの笑顔になって、はじめさんを見つめました。彼は嬉しそうにして、私を見ていたけれど、突然目が泳ぎだし、挙動不審になり、また私を見つめ、それから不思議な表情を浮かべている私に、ぼそぼそと言いました。
「サ、サ、サエさん、また会おう」
「は。占いで、ですか?」
「いや、そうじゃなくって。これは、ええと、何だ、うまく言えないが……。
 二人で」
「二人で?」
「……デートをしようということだ。僕はもっと、君と会いたい。話をしたいんだ」
「あ、ああ、ぶっちゃけて言えば、お付き合い―」
「そう、そうだ、その通りだ。君の言葉は核心を突いている」
「そういうことなら、―私でよければ。私って、デブでブスだけれど」
「そんなことを言ってはいけない。君は、何というか、面白い存在だ」
「あの、褒めていますか?」
「もちろんそのつもりだが」
 私とはじめさんは顔を見合わせ、思わず笑い合いました。
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