金サン!

桃青

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16.新しい動き

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 金サンの人気は、さらに広まっていました。ファンは若い子からお年寄りまで幅広く、女性にも男性にも受けが良く、本当に様々な人が、多様な道しるべを求めて、私の占い部屋を訪れるようになっていました。そんな状況から、私は占いの答えを導き出すときに、度々迷いが生じるようになっていました。理由はもちろん、私の力不足なのですが、勉強すればどうにかなるというものでもなく、今はひたすら、経験を積んでいくしかないのです。
 あれだけ大好きだった占いのはずなのに、今では息苦しさを感じることがしばしばあり、どうするべきなのだろうと、日々闇の中を模索していました。

「ね、金サンは、どういった人がタイプなのかしら?」
 その時占いに訪れていた二人組のおばさま方は、占いが終わっても帰ろうとせず、金サンと楽しげに話しこんでいました。近頃時々起こるこの事態に、私も慣れてきて、時間が許す限り放っておくことにしていました。
「僕、お爺さんが好きです」
 金サンが素直に答え、彼女達は目を丸くして、さらに訊ねました。
「お、お爺さん……。じゃなくって、恋のお相手として、誰が好きなのか聞いているのよ。どんな女性が好みなの?」
「えっと、それは、いい匂いのする人」
「いい匂いって……、香水のこと?」
「そこのおむすび屋のお姉さんが好きです。魚の渋い匂いがするから」
「あらまあ」
「そうなの」
 終わりの見えない会話に、私は心を固めて割り込みました。
「あの、すみません。次のお客さんがお待ちなので、今日はこの辺で……」
「あら、私、もっと金サンと話をしたいわ」
「そうよねえ」
「それは、次回の占いのときにでも―」
「はっ。私、いいこと思いついちゃった!」
 一人のおばさまが歓喜に満ちて、いきなりこう叫び、私達を見渡して、こう言ったのです。
「金サンのファンクラブを作りましょうよ。それで、みんなで金サンを囲んで、お喋りするのよ」
「あら、それいいじゃない! ね、金サンはどう?」
 私は愕然とし、あんぐりと口を開けましたが、金サンは落ち着いたまま、ソフトに言いました。
「僕はいいよ。楽しそうだし」
「ですって、サエさん」
「は、はあ」
 おばさま方は一気に盛り上がり、次々にアイデアを話し出しました。
「ここにポスターを張らせてもらって、メンバーを集めるのよ!」
「それ、いいわね。ね、サエさん、いいでしょ?」
「え、ええ、別に悪くはない……」
「第一回目の場所はどうしようかしら」
「そうねえ、どこかの店とか……。じゃ、ごめんなさい、私達は行きますから」
「その、お疲れ様でした」
 彼女達はすっかり夢中になり、私達の存在を忘れて、占い部屋を出ていかれました。
騒々しさが収まり、その後の静けさの中で、私はぽつりと言いました。
「金サン。ファンクラブだって」
「うん」
「いいの、本当に?」
「ウン、いいよ。集いには、サエも一緒に来てよ」
「何で私がファンクラブの集いに?」
「僕、サエがいないと不安なの。元はネコで、人間じゃないし」
「ああ、すっかりそのことを、忘れかけていたわ。とりあえず今は、仕事に戻ろうか」
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