金サン!

桃青

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 ご飯とお味噌汁とチキンサラダの朝食を、二人分作り、テーブルに並べて、どこかに放置されていた椅子を持ってきて、二人分の席を作ると、私達はご飯を食べ始めました。私はまだ呆然としていて、目の前で当り前のように食事をしている男性に、目を奪われてばかりいましたが、よく見ると彼は、少し吊目なものの、愛くるしさを持ち合わせたハンサムな人でした。
「金サン」
「ん、なあに、サエ?」
「……ごはん、おいしい?」
「うん。特にチキンがね」
「私って、そんなに孤独に生きているように見えた?」
「一人きりで頑張っていた。健気だなって、僕は思っていたよ。だから力になりたかったんだ」
「ネコにそこまで心配されていたのね。何だかな」
「サエってさ、ずーっと恋人がいないでしょ」
「大きなお世話」
「だから恋人探しなよ。僕も手伝うから」
「どうやって?」
「占いに来たお客さんと、仲良くなればいい。その手助けを、僕がする」
「……。ということは、えっと、金サン、あなた私の仕事場に来るの?」
「もちろん。だって今までそうしていたでしょ」
「十分混乱した状態なのに、さらに難題が増加しているわ。金サン自身が人間になって、したいことってないの?」
「ある気もするけど、今は特に思い浮かばないよ。僕はサエのことだけを見ているからさ。ペットってそういうものだし」
「まさかずっと、このままの姿じゃないよね? ネコに戻る日が、遠からず来るよね?」
「さあ」
「私に同棲する日がやってくるなんて、思ってもみなかった。まさかこんな形で訪れるとは」
「僕は人間になれて楽しい気分」
「ふう、金サンに必要なものを買い揃えないと。若い男が女物のパンツをはいているなんて、変態以外の何物でもないわ」
「僕、パンツはきたくない。お尻がきゅうっとして、苦しいんだ」
「はきなさい。これから楽なのを買ってあげるから。今日は仕事を早仕舞して、金サンとショッピングね」
「うわあ、楽しそうだな」
「ああ、何でこんなことに。嬉しいのか悲しいのか、自分の心が全く掴めていないよ……」
「僕はハッピーだ。何だか自由で」
「とりあえず、仕事に行こう。はぁ、早く人間の金サンに慣れたい」
「そうしよう、サエ」
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