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☆夜と光
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二時間後。二人はよろめきながら、怪し気な光を放つホストクラブから出てきた。ナツはドロンとした目をして、隣で肝の据わっているマリアに対して言った。
「マリアさん」
「何? 」
「あのですね、私、全く楽しくなかったです。私が変なのでしょうか、お金は使うし、気も遣うし。ときめきも感動もなかったんですけれども」
「そう。でもいい経験にはなったでしょう? 」
「確かに。でも二度目はなさそう」
「ナツ」
「はいっ? 」
「私はホストじゃなくて、リアルな彼氏を探した方がいいのかしら」
「それはそうだと思いますが。彼氏が欲しいと思っているなら、ですけどね」
「どうしたらいいの。マッチングアプリとかを使って? 私、不細工は嫌よ」
「お金があるなら、結婚相談所とかもいいんじゃないでしょうか。その方が安心、安全な気がします。自分の好きな人も、選べると思いますし」
「三十才。パート。九十キロ。こんな私を、誰が好きになってくれるかしらあ? 」
「マリアさんはバックボーンに沢山お金があるので。色々チャレンジですよ」
「何だか」
「はい」
「こういうさり気ない話がしたくなったわね。ホストクラブでの、サービスぎっしりの会話ではなく」
「なら、マリアさん。これから二人で女子会、やっちゃいますか」
「いいじゃない。その方がお金も遣わないし」
「私、パスタが食べたーい」
「イタリア料理がいい? ここら辺は私の方が詳しいから、私が案内するわよ」
「はい、ついていきま……ハッ」
「何よ、どうしたの」
「オキヨさんが、結婚するらしいです」
「うん、知っているわよ」
「そういう話を、これからしますか」
「そうね。だって私達、オンナノコですもの」
マリアとナツはふふっと笑い合った。それから二人は光を放つ世界に紛れていく。ナツの頭の中で、フッとこんな考えがよぎっていった。
もしかしたら女の子って、最強なのかもしれない、と。
「マリアさん」
「何? 」
「あのですね、私、全く楽しくなかったです。私が変なのでしょうか、お金は使うし、気も遣うし。ときめきも感動もなかったんですけれども」
「そう。でもいい経験にはなったでしょう? 」
「確かに。でも二度目はなさそう」
「ナツ」
「はいっ? 」
「私はホストじゃなくて、リアルな彼氏を探した方がいいのかしら」
「それはそうだと思いますが。彼氏が欲しいと思っているなら、ですけどね」
「どうしたらいいの。マッチングアプリとかを使って? 私、不細工は嫌よ」
「お金があるなら、結婚相談所とかもいいんじゃないでしょうか。その方が安心、安全な気がします。自分の好きな人も、選べると思いますし」
「三十才。パート。九十キロ。こんな私を、誰が好きになってくれるかしらあ? 」
「マリアさんはバックボーンに沢山お金があるので。色々チャレンジですよ」
「何だか」
「はい」
「こういうさり気ない話がしたくなったわね。ホストクラブでの、サービスぎっしりの会話ではなく」
「なら、マリアさん。これから二人で女子会、やっちゃいますか」
「いいじゃない。その方がお金も遣わないし」
「私、パスタが食べたーい」
「イタリア料理がいい? ここら辺は私の方が詳しいから、私が案内するわよ」
「はい、ついていきま……ハッ」
「何よ、どうしたの」
「オキヨさんが、結婚するらしいです」
「うん、知っているわよ」
「そういう話を、これからしますか」
「そうね。だって私達、オンナノコですもの」
マリアとナツはふふっと笑い合った。それから二人は光を放つ世界に紛れていく。ナツの頭の中で、フッとこんな考えがよぎっていった。
もしかしたら女の子って、最強なのかもしれない、と。
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