おんなのこ

４５．最終形態（おんなのこの）

呼吸を整えて、オキヨの隣に横になった俊は言った。
「ごめん」
「ひっ……く、何がよ」
「何か、俺が悪くて泣いているんじゃないの？　」
「な、何が悪いのか言ってみなさいよ」
「あの、ごめん。オキヨの言う通りなんだ。俺、浮気してた」
「わあああああああああん」
「この間会社に入ってきた、若くて可愛い女の子と、」
「そんな話、聞きたくないわよ！　」
「俺のことを、もちろん怒って構わない。でも、言い訳に聞こえると思うんだけれど、オキヨのことは好きなんだ」
「嘘よ」
「本当だって。ただ、オキヨとやる機会はあまり訪れないし、標準体型の女の子とやってみたくなって……。俺も色々溜まっちゃっていて」
「うあああああああああん。私がっ、女じゃなくて、人間にも、見えていないんでしょう！　」
「そんなことはないって」
「そんなことあるわよ！　きれいじゃないわよ。自分でもホルスタインみたいだって思うわよ。でも、でも、俊と付き合って五年、あなたと、あなたと、結婚したいの！　俊が好きなの！　私は巨大でも女の人よ！　そう俊に認められたいの！　でもっ、私には、その資格が！　」
「なら、結婚しようか」
「……ヘッ？　」
「俺、オキヨとならしてもいいよ」
「うわあああん、嘘つき！　」
「こんな嘘を言う男っている？　一応プロポーズなんだけど」
「百二十キロ女が、浮気されて、自己肯定が、爆下がって。セックスで、ホルスタインになった後に、プロポーズ？　……殆どギャグだわ。
　海や夜景の見えるレストランじゃなくて？　ワインをチンチン鳴らしながらじゃなくて？　」
「オキヨ、プロポーズに夢見すぎ」
「本気なの？　」
「うん。五年も付き合ったし。今、その答えを出したんだ」
「なら、あの」
「うん」
「俊？　」
「ウン」
「結婚しよう」
「……。それ、今俺が言ったことでしょ。逆プロポーズか？　」
「私、俊となら行けそうな気がするの」
「どこへ？　」
「未来へ」
　そう言ってから、オキヨは俊に裸のまま抱きついた。彼が己の贅肉で窒息しないよう、気を配りながら。