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42.本心
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もしかしたら俊は、浮気をしているのかもしれない。
―嘘? 本当?
「今日はあんまり食べないんだね」
俊が目の前で、フレッシュなバナナジュースを飲みながら言った。オキヨは冷静さを心掛けながら、答える。
「ダイエットをしているから。食べたいだけ食べるわけにはいかないわ」
二人はフルーツパーラーの店舗で、フレッシュなフルーツを頂いていた。いつも通りの食べ歩きデートではあるのだが、オキヨの選ぶ店が、依然とがらりと変わっていた。フルーツパーラーなんて店に、二人で来るのは初めてのことだ。俊は、どこか南国感溢れる店内を物珍しそうに眺めつつ、オキヨに話し掛けた。
「で、痩せたの? 」
「ええ、十キロほど」
「ふーん、凄いじゃない。でも、よく分からないや、正直な所」
「自分でも分からないくらいだから、俊が分からなくても当然よね。ああ、このアップルジュース、フレッシュで本当に美味しい」
「どうして今更、ダイエットなの? 」
「私は、自分に自信を無くしていて」
「それは太っている、という理由から? オキヨはずっと太っているじゃない。だけど以前はそんなことなさそうだったよね」
「百二十キロもある女を、俊は本当に好きになれる? 」
「……。何か俺に疑惑でもありそうな発言。俺、メロンジュースおかわりしちゃおっと」
「俊のことも、結婚のことについても、近頃真剣に考えてみたの。でも、何もかも。私ができるという自信がない。自信をつけるためには。痩せるしかないと思ったの」
「どういう理論よ。痩せても太っても、オキヨはオキヨでしょ」
「男の人は、ほっそりとした女の子を、可愛い、可愛い、って言うじゃない。私は笑われることはあっても、ナンパされたことなんて、一度もないわ。私のことを好きになってくれる異性なんて、この世界に誰も―」
「俺はどうなの? 」
「俊は惰性で私に付き合ってくれているだけ。きっとそうだわ。結婚しても、私なんか愛してくれない。だからあなたと結婚したくても、できないわ。本当は、俊のことは好きよ。あなたと結婚したいわよ。でも、その思いは全て、私の一方通行なの。知っているわ、俊が私から離れていきつつあるのを。もう……、誰も私なんか好きになってくれない。愛してなんかくれない! 」
「女々しいね、オキヨさん」
「だって私、女ですもの」
オキヨはポロッと涙を零した。レトロポップな雰囲気の店内と、オキヨの涙。涙は止まらなかった。それは俊を引き止めるためではなく、悲しみのためでもなく、異性がありのままの自分を認めてくれないことに対しての、怒りの涙だ。
男の人に、女の子として扱ってほしい。男の人に愛されたい。やっぱり俊に……、愛されたい。
俊は言った。
「この店でまだ、注文したいものはある? 」
「うっ、ううう、あとオレンジジュースは飲みたいわ」
「なら、それを飲んだら店を出よう」
「でも、次に行く店がまだ決まっていな、」
「俺について来てほしいんだ」
「ひっく、分かったわ」
―嘘? 本当?
「今日はあんまり食べないんだね」
俊が目の前で、フレッシュなバナナジュースを飲みながら言った。オキヨは冷静さを心掛けながら、答える。
「ダイエットをしているから。食べたいだけ食べるわけにはいかないわ」
二人はフルーツパーラーの店舗で、フレッシュなフルーツを頂いていた。いつも通りの食べ歩きデートではあるのだが、オキヨの選ぶ店が、依然とがらりと変わっていた。フルーツパーラーなんて店に、二人で来るのは初めてのことだ。俊は、どこか南国感溢れる店内を物珍しそうに眺めつつ、オキヨに話し掛けた。
「で、痩せたの? 」
「ええ、十キロほど」
「ふーん、凄いじゃない。でも、よく分からないや、正直な所」
「自分でも分からないくらいだから、俊が分からなくても当然よね。ああ、このアップルジュース、フレッシュで本当に美味しい」
「どうして今更、ダイエットなの? 」
「私は、自分に自信を無くしていて」
「それは太っている、という理由から? オキヨはずっと太っているじゃない。だけど以前はそんなことなさそうだったよね」
「百二十キロもある女を、俊は本当に好きになれる? 」
「……。何か俺に疑惑でもありそうな発言。俺、メロンジュースおかわりしちゃおっと」
「俊のことも、結婚のことについても、近頃真剣に考えてみたの。でも、何もかも。私ができるという自信がない。自信をつけるためには。痩せるしかないと思ったの」
「どういう理論よ。痩せても太っても、オキヨはオキヨでしょ」
「男の人は、ほっそりとした女の子を、可愛い、可愛い、って言うじゃない。私は笑われることはあっても、ナンパされたことなんて、一度もないわ。私のことを好きになってくれる異性なんて、この世界に誰も―」
「俺はどうなの? 」
「俊は惰性で私に付き合ってくれているだけ。きっとそうだわ。結婚しても、私なんか愛してくれない。だからあなたと結婚したくても、できないわ。本当は、俊のことは好きよ。あなたと結婚したいわよ。でも、その思いは全て、私の一方通行なの。知っているわ、俊が私から離れていきつつあるのを。もう……、誰も私なんか好きになってくれない。愛してなんかくれない! 」
「女々しいね、オキヨさん」
「だって私、女ですもの」
オキヨはポロッと涙を零した。レトロポップな雰囲気の店内と、オキヨの涙。涙は止まらなかった。それは俊を引き止めるためではなく、悲しみのためでもなく、異性がありのままの自分を認めてくれないことに対しての、怒りの涙だ。
男の人に、女の子として扱ってほしい。男の人に愛されたい。やっぱり俊に……、愛されたい。
俊は言った。
「この店でまだ、注文したいものはある? 」
「うっ、ううう、あとオレンジジュースは飲みたいわ」
「なら、それを飲んだら店を出よう」
「でも、次に行く店がまだ決まっていな、」
「俺について来てほしいんだ」
「ひっく、分かったわ」
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