42 / 51
40.井戸端会議
しおりを挟む
「ナツの彼氏は、オンナノコを認めてくれる寛容さのある、男の人なのかしら? 」
「えっと……。彼にはちょっと複雑な事情があって。私、まだ彼に気を使っています。だからそこまでの我がままは言えない感じ」
「まあ、結婚でもしたら、お互いにプライバシーとか言ってられないし、大暴露大会になるもの。化けの皮は剥がれるわ。ときめいて、気を使うなんて可愛い気持ちは、恋愛の最初だけだから、楽しみなさい」
「マリアさん、彼氏はいないのに、まるで分ったようなことを……。理屈だけは立派というか」
「それが私の性格ですから」
マリアとナツがそうやりあっていると、オキヨは突然、笑いだした。
「ははは、あはは、アッハッハッハ」
「……?」「どうかした、オキヨ? 」
「アハハハ、二人の会話を聞いていたらね、何だか私の、最近の悩みが馬鹿馬鹿しく思えてきてね」
「え、オキヨさんが悩みですか? どんな? 」
目を丸くしてナツが問いかけると、オキヨは笑いを収めて答えた。
「何で私が、ダイエットを始めたと思う? 」
「痩せたいからじゃないの? 」
マリアの当たり前すぎる言葉に、オキヨはかぶりを振った。
「もちろん、それもあるけれど、自分に自信を無くしてしまったの」
「自信。そんなもの、私なんて無くしっぱなしよ。仕事の面接に三十も落ちたのよ。それに、モテる気配も全くないし」
「マリアのそれとは、多分少し意味が違うの。彼と結婚について話をしてね」
「結婚。ついにするんですか」
ナツの驚きの声に、オキヨはぶんぶんと首を横に振った。
「いえ、できないわ。私は結婚できる自信がないの。それはつまり、自分に自信がないってことなのよ。彼からもしプロポーズされたとしても、素直にイエスって言えないのよ、私」
ナツはちょっと考えに耽ってから言う。
「えー。私だったら、好きな人からそんなこと言われたら、はいって、すぐ言っちゃいそうだけどな」
「それですぐ別れたりするのよね」
マリアはナツにコーヒーのおかわりを頼みながら、目を閉じて言った。オキヨは俯き加減のまま言う。
「彼のことは好きよ。でも男の人って、百三十キロの女を、好きになれるものかしら? 」
「百二十二キロね」
マリアは訂正した。
「私、以前はそんなこと、あまりなかったのに、最近は不安で一杯なの。私らしくないわ。私ってこんなに弱かったかしら、とか、このままでいいの、私、とか」
「オキヨ」
「何? マリア」
「えっと……。彼にはちょっと複雑な事情があって。私、まだ彼に気を使っています。だからそこまでの我がままは言えない感じ」
「まあ、結婚でもしたら、お互いにプライバシーとか言ってられないし、大暴露大会になるもの。化けの皮は剥がれるわ。ときめいて、気を使うなんて可愛い気持ちは、恋愛の最初だけだから、楽しみなさい」
「マリアさん、彼氏はいないのに、まるで分ったようなことを……。理屈だけは立派というか」
「それが私の性格ですから」
マリアとナツがそうやりあっていると、オキヨは突然、笑いだした。
「ははは、あはは、アッハッハッハ」
「……?」「どうかした、オキヨ? 」
「アハハハ、二人の会話を聞いていたらね、何だか私の、最近の悩みが馬鹿馬鹿しく思えてきてね」
「え、オキヨさんが悩みですか? どんな? 」
目を丸くしてナツが問いかけると、オキヨは笑いを収めて答えた。
「何で私が、ダイエットを始めたと思う? 」
「痩せたいからじゃないの? 」
マリアの当たり前すぎる言葉に、オキヨはかぶりを振った。
「もちろん、それもあるけれど、自分に自信を無くしてしまったの」
「自信。そんなもの、私なんて無くしっぱなしよ。仕事の面接に三十も落ちたのよ。それに、モテる気配も全くないし」
「マリアのそれとは、多分少し意味が違うの。彼と結婚について話をしてね」
「結婚。ついにするんですか」
ナツの驚きの声に、オキヨはぶんぶんと首を横に振った。
「いえ、できないわ。私は結婚できる自信がないの。それはつまり、自分に自信がないってことなのよ。彼からもしプロポーズされたとしても、素直にイエスって言えないのよ、私」
ナツはちょっと考えに耽ってから言う。
「えー。私だったら、好きな人からそんなこと言われたら、はいって、すぐ言っちゃいそうだけどな」
「それですぐ別れたりするのよね」
マリアはナツにコーヒーのおかわりを頼みながら、目を閉じて言った。オキヨは俯き加減のまま言う。
「彼のことは好きよ。でも男の人って、百三十キロの女を、好きになれるものかしら? 」
「百二十二キロね」
マリアは訂正した。
「私、以前はそんなこと、あまりなかったのに、最近は不安で一杯なの。私らしくないわ。私ってこんなに弱かったかしら、とか、このままでいいの、私、とか」
「オキヨ」
「何? マリア」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~
のらしろ
ライト文芸
都内のメーカーに勤務する蒼草秀長が、台風が接近する悪天候の中、お客様のいる北海道に出張することになった。
移動中の飛行機において、日頃の疲れから睡魔に襲われ爆睡し、次に気がついたときには、前線に向かう輸送機の中だった。
そこは、半世紀に渡り2つの大国が戦争を続けている異世界に直前に亡くなったボイラー修理工のグラスに魂だけが転移した。
グラスは周りから『ノラシロ』少尉と揶揄される、不出来な士官として前線に送られる途中だった。
蒼草秀長自身も魂の転移した先のグラスも共に争いごとが大嫌いな、しかも、血を見るのが嫌いというか、血を見て冷静でいられないおおよそ軍人の適正を全く欠いた人間であり、一人の士官として一人の軍人として、この厳しい世界で生きていけるのか甚だ疑問だ。
彼を乗せた輸送機が敵側兵士も多数いるジャングルで墜落する。
平和な日本から戦国さながらの厳しいこの異世界で、ノラシロ少尉ことヘタレ代表の蒼草秀長改めグラスが、はみ出しものの仲間とともに仕出かす騒動数々。
果たして彼は、過酷なこの異世界で生きていけるのだろか
主人公が、敵味方を問わず、殺さずに戦争をしていく残酷シーンの少ない戦記物です。
百々五十六の小問集合
百々 五十六
ライト文芸
不定期に短編を上げるよ
ランキング頑張りたい!!!
作品内で、章分けが必要ないような作品は全て、ここに入れていきます。
毎日投稿頑張るのでぜひぜひ、いいね、しおり、お気に入り登録、よろしくお願いします。
駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜
あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』
という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。
それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。
そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。
まず、夫が会いに来ない。
次に、使用人が仕事をしてくれない。
なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。
でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……?
そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。
すると、まさかの大激怒!?
あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。
────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。
と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……?
善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。
────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください!
◆小説家になろう様でも、公開中◆
契りの桜~君が目覚めた約束の春
臣桜
ライト文芸
「泥に咲く花」を書き直した、「輪廻の果てに咲く桜」など一連のお話がとても思い入れのあるものなので、さらに書き直したものです(笑)。
現代を生きる吸血鬼・時人と、彼と恋に落ち普通の人ならざる運命に落ちていった人間の女性・葵の恋愛物語です。今回は葵が死なないパターンのお話です。けれど二人の間には山あり谷あり……。一筋縄ではいかない運命ですが、必ずハッピーエンドになるのでご興味がありましたら最後までお付き合い頂けたらと思います。
※小説家になろう様でも連載しております
デブよ、さらば!
daisysacky
ライト文芸
30代、子持ち。パートタイマー空美。毎朝、体重計にのっては、タメ息。このところ、増加傾向のこの体!
どうにかせねば!
と、悪戦苦闘するも、そうは問屋が下ろさない。はてさて、彼女の運命やいかに!
フレンドコード▼陰キャなゲーマーだけど、リア充したい
さくら/黒桜
ライト文芸
高校デビューしたら趣味のあう友人を作りたい。ところが新型ウイルス騒ぎで新生活をぶち壊しにされた、拗らせ陰キャのゲームオタク・圭太。
念願かなってゲーム友だちはできたものの、通学電車でしか会わず、名前もクラスも知らない。
なぜかクラスで一番の人気者・滝沢が絡んできたり、取り巻きにねたまれたり、ネッ友の女子に気に入られたり。この世界は理不尽だらけ。
乗り切るために必要なのは――本物の「フレンド」。
令和のマスク社会で生きる高校生たちの、フィルターがかった友情と恋。
※別サイトにある同タイトル作とは展開が異なる改稿版です。
※恋愛話は異性愛・同性愛ごちゃまぜ。青春ラブコメ風味。
※表紙をまんが同人誌版に変更しました。ついでにタイトルも同人誌とあわせました!
悪意か、善意か、破滅か
野村にれ
恋愛
婚約者が別の令嬢に恋をして、婚約を破棄されたエルム・フォンターナ伯爵令嬢。
婚約者とその想い人が自殺を図ったことで、美談とされて、
悪意に晒されたエルムと、家族も一緒に爵位を返上してアジェル王国を去った。
その後、アジェル王国では、徐々に異変が起こり始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる