27 / 51
25.ダイエット2
しおりを挟む
次の日。午前四時。オキヨは爽やかなブルーのジャージ姿で、家を出た。目標は三十分のウォーキングをすることだ。外に人は殆どいず、これなら心置きなく歩くことができるだろう。時計で時刻を確認してから、まだ暗い外界を歩き始める。オキヨは歩きながら思った。
(三十分のウォーキングなんて楽勝よ。私は朝十時から、夜八時まで、日々ショップで立ち、かつ動いているのよ? だから筋肉には多少自信があるわ。ああ、朝って爽やか。虫の声も聞こえるし、こういう運動もいいものだわ)
だが三十分後。マンションに戻ってきたオキヨは、身も心もボロボロになっていた。ストレス発散ではなく、逆にストレスを溜め込んだかの如く、当たり散らしながらオキヨは思う。
(何が運動よ。何がウォーキング。ああ、体が重いわ。私、これから仕事に行くのよ? それなのにこんなに私を疲れさせるなんて。ヘトヘトで大丈夫かしら、私は? これを、こんなものを、毎日やったら膝を痛めるわ。ああ、甘いカフェオレが飲みたい。朝食が恋しい! )
自分の家に着いて、早足で中に入った彼女は、真っ直ぐに台所へ行き、バタンと冷蔵庫を開けて、すぐバタンと扉を閉め、思った。
(この冷蔵庫に依存する癖を、まずやめなくてはならないのでは……。とりあえず、コーヒーを淹れることにするわ)
ドリップの準備を整えてから、やかんでお湯を沸かし、工程を踏んで、丁寧にドリップしていく。オキヨはポン、と手を叩いて言う。
「コーヒーには、カラメルビスケットを添えないとね」
棚から箱を取り出し、蓋を開けると、中にはぎっしりと、おしゃれなお菓子が詰まっていた。その中からカラメルビスケットを三つ取り出し、バリバリと頂く。入ったコーヒーには、ミルクときび砂糖。冷蔵庫から昨日作って置いたゆで卵を三個取り出し、殻をむきつつ思う。
(食べる物を減らすと言っても、栄養もきちんと取らないといけないでしょう? 炭水化物も、野菜も、脂質だって必要よ。とりあえず、全体的に食べる量を減らさないとならない。となると、ゆで卵三つは多かったのかしら)
そう考えたオキヨは、殻のむけた卵をじっと眺め、二つを取っておいて、一つだけ食べることにした。それからビールのごとく、甘いカフェオレを飲み干し、仕事に行く準備を始めた。
それから時間が経ち、一日の仕事を終えたオキヨは本屋にいた。お店の店員さんに、ダイエットの本はどこですか? と訊ね、案内された所で、本を物色し始める。分かりやすくて、簡単で、楽しくて、私に合ったダイエットがいいわ。何冊か気になる本を選び取り、レジに向かう。今夜はこの本を読んで過ごしましょう。新しいことを始める前の少し楽しい気持ちで、オキヨはワクワクして、家路を急ぐ。
途中で夕食のために、遅くまで開いているスーパーに寄ったが、オキヨの人生でこんなに、スーパーで買うものを悩んだことはない。いつもは直感を頼りに、総菜をぼんぼん籠に放り込むのだが、今日誕生した新たな指針、ダイエットを考慮して、さらに自分の食べたいものをとなると、パズルでも解いているかのような苦しみが発生した。
(ご飯と春巻き、ギョーザ、いえ、駄目よ。野菜がないから、春巻きを生春巻きにして、ギョーザを十五個入り、いえ、十五個は多いかしら、五個にして、デザートはケーキ……、まあ、ケーキってこんなにカロリーが高いの? なら、フルーツヨーグルトにする……、頭が疲れたから、甘いものを……、この思考がダメなのね。でもとりあえず、サツマイモ饅頭は買うわ。野菜ですもの)
興奮で息を荒くして、スーパーから出てきたオキヨは、今度こそ家へと向かう。
(三十分のウォーキングなんて楽勝よ。私は朝十時から、夜八時まで、日々ショップで立ち、かつ動いているのよ? だから筋肉には多少自信があるわ。ああ、朝って爽やか。虫の声も聞こえるし、こういう運動もいいものだわ)
だが三十分後。マンションに戻ってきたオキヨは、身も心もボロボロになっていた。ストレス発散ではなく、逆にストレスを溜め込んだかの如く、当たり散らしながらオキヨは思う。
(何が運動よ。何がウォーキング。ああ、体が重いわ。私、これから仕事に行くのよ? それなのにこんなに私を疲れさせるなんて。ヘトヘトで大丈夫かしら、私は? これを、こんなものを、毎日やったら膝を痛めるわ。ああ、甘いカフェオレが飲みたい。朝食が恋しい! )
自分の家に着いて、早足で中に入った彼女は、真っ直ぐに台所へ行き、バタンと冷蔵庫を開けて、すぐバタンと扉を閉め、思った。
(この冷蔵庫に依存する癖を、まずやめなくてはならないのでは……。とりあえず、コーヒーを淹れることにするわ)
ドリップの準備を整えてから、やかんでお湯を沸かし、工程を踏んで、丁寧にドリップしていく。オキヨはポン、と手を叩いて言う。
「コーヒーには、カラメルビスケットを添えないとね」
棚から箱を取り出し、蓋を開けると、中にはぎっしりと、おしゃれなお菓子が詰まっていた。その中からカラメルビスケットを三つ取り出し、バリバリと頂く。入ったコーヒーには、ミルクときび砂糖。冷蔵庫から昨日作って置いたゆで卵を三個取り出し、殻をむきつつ思う。
(食べる物を減らすと言っても、栄養もきちんと取らないといけないでしょう? 炭水化物も、野菜も、脂質だって必要よ。とりあえず、全体的に食べる量を減らさないとならない。となると、ゆで卵三つは多かったのかしら)
そう考えたオキヨは、殻のむけた卵をじっと眺め、二つを取っておいて、一つだけ食べることにした。それからビールのごとく、甘いカフェオレを飲み干し、仕事に行く準備を始めた。
それから時間が経ち、一日の仕事を終えたオキヨは本屋にいた。お店の店員さんに、ダイエットの本はどこですか? と訊ね、案内された所で、本を物色し始める。分かりやすくて、簡単で、楽しくて、私に合ったダイエットがいいわ。何冊か気になる本を選び取り、レジに向かう。今夜はこの本を読んで過ごしましょう。新しいことを始める前の少し楽しい気持ちで、オキヨはワクワクして、家路を急ぐ。
途中で夕食のために、遅くまで開いているスーパーに寄ったが、オキヨの人生でこんなに、スーパーで買うものを悩んだことはない。いつもは直感を頼りに、総菜をぼんぼん籠に放り込むのだが、今日誕生した新たな指針、ダイエットを考慮して、さらに自分の食べたいものをとなると、パズルでも解いているかのような苦しみが発生した。
(ご飯と春巻き、ギョーザ、いえ、駄目よ。野菜がないから、春巻きを生春巻きにして、ギョーザを十五個入り、いえ、十五個は多いかしら、五個にして、デザートはケーキ……、まあ、ケーキってこんなにカロリーが高いの? なら、フルーツヨーグルトにする……、頭が疲れたから、甘いものを……、この思考がダメなのね。でもとりあえず、サツマイモ饅頭は買うわ。野菜ですもの)
興奮で息を荒くして、スーパーから出てきたオキヨは、今度こそ家へと向かう。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる