19 / 51
17.おんなのこ3
しおりを挟む
ナツは言った。
「オキヨさんって、凄いんですねえ」
「あら、何が? 」
マリアは意外そうに訊ねると、ナツは力を込めて言った。
「こんな、こんな大きなショッピングモールの、あんな大きな店の店長を任されているなんて。私なんかスケールが違いすぎます。スーパーの花屋で働いているんですよ」
「まあ、お給料も随分違うでしょうね」
「そうそう。だから尊敬しちゃう」
二人はチェーン店のコーヒーショップへ向かって、モールの中をドタドタと歩いていた。ナツがその店のパンケーキを食べてみたいと言い出したのだ。マリアはふと足を止めて言った。
「ここの出口ね。この先にコーヒーショップがあるはず」
「行きましょ、行きましょう」
足並み揃えて出口から外へ出ると、すぐ目の前に目的の店が立っていた。ナツが感動的に言う。
「ずっとこのお店に来たかったんだあ。でも値段も安くないし、なかなか勇気が出なかったんですよね」
「今日、お金はあるの? 」
「あります、マリアさん。思いのほかオキヨさんの店で、お金を使わなかったので」
「なら、入るわよ。ナツの夢を叶えるために」
「夢って案外容易く叶うものなんですね」
二人はぞろぞろと店内に入っていって、テーブルの座席に座ってから、メニューを見始めた。マリアは目でメニューを追いつつも、こんな言葉を漏らした。
「オキヨ、元気がなかったのよね」
「えっ。全然そんな風に見えませんでした」
「違う違う。今日の話じゃなくて、この間電話を掛けた時のことよ」
「そうだったのか。どうしてだろう」
「仕事か、それとも恋愛の悩みか」
「私、オキヨさんに恋愛について、アドバイスを頂きました、前に電話を掛けた時に。そんなオキヨさんが、恋愛の悩みを抱えているなんて―」
「悩んでいるから分かることもあるでしょ。注文、決まった? 」
「はい」
マリアが主導して注文を済ますと、ナツはお財布を取り出し、所持金を確認しながら言う。
「私って恋愛の経験値も少ないし、太っているから、男ウケについて全く自信がないんですよね。仮に好きですって言われたとしても、どこを好きになったんですかって、相手に聞きたくなっちゃう」
「ま、女は年と体重に関して、男の言い分でがんじがらめにされているわよね。ババアは御免だ、デブは怪物、って具合に」
「怪物って言われたら……、さすがにテンション下がりますよね」
「私、すれ違った女子高校生に、笑いながら『痛い』って言われたことあるわよ」
「それって、年と体重とは別の話では。私は男性に、『首が太いな』と言われて、カチンときた記憶があります」
「どっちにしても、余計なお世話」
「ほんとそうです。外見のことをグチグチ言う男の人って、大概『じゃあ、自分はどうなのよ』って突っ込みたくなる人、ほんと、多いですよ」
「できるホストは、そこら辺を濁すのがうまいのよね。やっぱり上っ面だけでなく、人間性が深くないと、務まらない商売なんでしょうね」
そこでコーヒーとパンケーキが運ばれてきたので、二人は料理に手をつけながら、さらに話し続けた。
「マリアさん、ホストとリアルな恋愛をするって、有り得ることなのでしょうか」
「んー。うーん。客としては、難しいテーマよ、それ。両想いになったとしても、うまくいくかはそのホストの対応、もしくは決断次第というか」
「自分のために、ホストを辞めてくれるとか、あとは同棲するようになったとか? 」
「ま、正直私はそこまで話が進んだことがないのでね。男がそもそも私に、興味なんてないのよ……」
「オキヨさんって、凄いんですねえ」
「あら、何が? 」
マリアは意外そうに訊ねると、ナツは力を込めて言った。
「こんな、こんな大きなショッピングモールの、あんな大きな店の店長を任されているなんて。私なんかスケールが違いすぎます。スーパーの花屋で働いているんですよ」
「まあ、お給料も随分違うでしょうね」
「そうそう。だから尊敬しちゃう」
二人はチェーン店のコーヒーショップへ向かって、モールの中をドタドタと歩いていた。ナツがその店のパンケーキを食べてみたいと言い出したのだ。マリアはふと足を止めて言った。
「ここの出口ね。この先にコーヒーショップがあるはず」
「行きましょ、行きましょう」
足並み揃えて出口から外へ出ると、すぐ目の前に目的の店が立っていた。ナツが感動的に言う。
「ずっとこのお店に来たかったんだあ。でも値段も安くないし、なかなか勇気が出なかったんですよね」
「今日、お金はあるの? 」
「あります、マリアさん。思いのほかオキヨさんの店で、お金を使わなかったので」
「なら、入るわよ。ナツの夢を叶えるために」
「夢って案外容易く叶うものなんですね」
二人はぞろぞろと店内に入っていって、テーブルの座席に座ってから、メニューを見始めた。マリアは目でメニューを追いつつも、こんな言葉を漏らした。
「オキヨ、元気がなかったのよね」
「えっ。全然そんな風に見えませんでした」
「違う違う。今日の話じゃなくて、この間電話を掛けた時のことよ」
「そうだったのか。どうしてだろう」
「仕事か、それとも恋愛の悩みか」
「私、オキヨさんに恋愛について、アドバイスを頂きました、前に電話を掛けた時に。そんなオキヨさんが、恋愛の悩みを抱えているなんて―」
「悩んでいるから分かることもあるでしょ。注文、決まった? 」
「はい」
マリアが主導して注文を済ますと、ナツはお財布を取り出し、所持金を確認しながら言う。
「私って恋愛の経験値も少ないし、太っているから、男ウケについて全く自信がないんですよね。仮に好きですって言われたとしても、どこを好きになったんですかって、相手に聞きたくなっちゃう」
「ま、女は年と体重に関して、男の言い分でがんじがらめにされているわよね。ババアは御免だ、デブは怪物、って具合に」
「怪物って言われたら……、さすがにテンション下がりますよね」
「私、すれ違った女子高校生に、笑いながら『痛い』って言われたことあるわよ」
「それって、年と体重とは別の話では。私は男性に、『首が太いな』と言われて、カチンときた記憶があります」
「どっちにしても、余計なお世話」
「ほんとそうです。外見のことをグチグチ言う男の人って、大概『じゃあ、自分はどうなのよ』って突っ込みたくなる人、ほんと、多いですよ」
「できるホストは、そこら辺を濁すのがうまいのよね。やっぱり上っ面だけでなく、人間性が深くないと、務まらない商売なんでしょうね」
そこでコーヒーとパンケーキが運ばれてきたので、二人は料理に手をつけながら、さらに話し続けた。
「マリアさん、ホストとリアルな恋愛をするって、有り得ることなのでしょうか」
「んー。うーん。客としては、難しいテーマよ、それ。両想いになったとしても、うまくいくかはそのホストの対応、もしくは決断次第というか」
「自分のために、ホストを辞めてくれるとか、あとは同棲するようになったとか? 」
「ま、正直私はそこまで話が進んだことがないのでね。男がそもそも私に、興味なんてないのよ……」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
恋もバイトも24時間営業?
鏡野ゆう
ライト文芸
とある事情で、今までとは違うコンビニでバイトを始めることになった、あや。
そのお店があるのは、ちょっと変わった人達がいる場所でした。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中です※
※第3回ほっこり・じんわり大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※
※第6回ライト文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※
【完】三桁越えからの本気ダイエット。おばさんの記録帳。
桜 鴬
エッセイ・ノンフィクション
現在体重三桁越え。約十年ぶりのダイエット開始です。はい。題名通りです。約十年前には体重の約半分までのダイエットに成功!そして十年後の今……見事にリバウンド致しております。これはヤバい……
本気でいかなきゃ!
約十年ぶりの大型ダイエット(予定)を始めました。無理なく報告ダイアリーみたいな感じで進めたいです。最初は前回のウンチクを、一気に語ります。と言うか吐き出します。
短期集中の無理はリバウンドを招く……
なぜリバウンドしたのか?それは一重に私の意思が弱いだけです。反省中……
読んでくれる皆さまの……ぬるい眼差しに力を分けて戴きたいです。
経験者は語ります……
が!
もちろんダイエットの専門家では有りませんので、おばさんの勝手なウンチクだと思ってくださいませ。
日記の様な感じですが、更新当日の話ではありません。数日はずれております。
再ダイエット……2020/11/16開始。
2021/2/1より【二桁突入からの本気ダイエット。おばさんの記録帳。】を、こちらの2/6完結にさきがけ、更新をはじめました。こちらは基本夜更新となります。よろしくお願いいたします。
【完結】大量焼死体遺棄事件まとめサイト/裏サイド
まみ夜
ホラー
ここは、2008年2月09日朝に報道された、全国十ケ所総数六十体以上の「大量焼死体遺棄事件」のまとめサイトです。
事件の上澄みでしかない、ニュース報道とネット情報が序章であり終章。
一年以上も前に、偶然「写本」のネット検索から、オカルトな事件に巻き込まれた女性のブログ。
その家族が、彼女を探すことで、日常を踏み越える恐怖を、誰かに相談したかったブログまでが第一章。
そして、事件の、悪意の裏側が第二章です。
ホラーもミステリーと同じで、ラストがないと評価しづらいため、短編集でない長編はweb掲載には向かないジャンルです。
そのため、第一章にて、表向きのラストを用意しました。
第二章では、その裏側が明らかになり、予想を裏切れれば、とも思いますので、お付き合いください。
表紙イラストは、lllust ACより、乾大和様の「お嬢さん」を使用させていただいております。

立花家へようこそ!
由奈(YUNA)
ライト文芸
私が出会ったのは立花家の7人家族でした・・・――――
これは、内気な私が成長していく物語。
親の仕事の都合でお世話になる事になった立花家は、楽しくて、暖かくて、とっても優しい人達が暮らす家でした。
良心的AI搭載 人生ナビゲーションシステム
まんまるムーン
ライト文芸
人生の岐路に立たされた時、どん詰まり時、正しい方向へナビゲーションしてもらいたいと思ったことはありませんか? このナビゲーションは最新式AIシステムで、間違った選択をし続けているあなたを本来の道へと軌道修正してくれる夢のような商品となっております。多少手荒な指示もあろうかと思いますが、全てはあなたの未来の為、ご理解とご協力をお願い申し上げます。では、あなたの人生が素晴らしいドライブになりますように!
※本作はオムニバスとなっており、一章ごとに話が独立していて完結しています。どの章から読んでも大丈夫です!
※この作品は、小説家になろうでも連載しています。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
ライト文芸
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
致死量の愛と泡沫に+
藤香いつき
キャラ文芸
近未来の終末世界。
世間から隔離された森の城館で、ひっそりと暮らす8人の青年たち。
記憶のない“あなた”は彼らに拾われ、共に暮らしていたが——外の世界に攫われたり、囚われたりしながらも、再び城で平穏な日々を取り戻したところ。
泡沫(うたかた)の物語を終えたあとの、日常のお話を中心に。
※致死量シリーズ
【致死量の愛と泡沫に】その後のエピソード。
表紙はJohn William Waterhous【The Siren】より。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる